ホームタイタイの外国人事業規制と外資参入ルール|外資比率・FBL・FBC・BOIを解説

タイの外国人事業規制と外資参入ルール|外資比率・FBL・FBC・BOIを解説

タイへ進出するとき、会社を登記できることと、その会社が予定する事業を合法的に営業できることは別問題です。外国人事業法(Foreign Business Act:FBA)は、出資者が「外国人」に当たるか、予定事業がリスト1・2・3に含まれるか、外国人事業許可証(FBL)または外国人事業証明書(FBC)が必要かを事業単位で判定します。

特にサービス業、小売、ホテル、広告、仲介などはリスト3に含まれる、または包括的なサービス業規制に当たる可能性があります。「外資49%なら必ず安全」「BOI認可があれば会社の全事業を外資100%で行える」といった理解では判断できません。本記事では、外資比率、FBL、FBC、BOIの違いを、設立前に使える順序で整理します。

2026年7月時点の結論:最初に会社形態を決めるのではなく、タイで売上を立てる全事業を列挙し、各事業が外国人事業法のどのリストに当たるかを確認します。その後に、実質的なタイ資本を含むタイ法人、FBL、BOI認可+FBC、条約・個別法のどの経路を使うか決めるのが安全です。会社登記やBOI申請を先に進めると、認可範囲と実際の収益事業がずれることがあります。

タイ外資参入を判断する4段階

外国人比率、事業リスト、参入ルート、他法令を確認するタイ外資参入の4段階フロー

外資規制の確認は、次の4段階で進めます。順序を逆にしないことが重要です。

  1. 出資者を確認する:個人・法人の国籍、各株主の持分、外国法人が間接的に出資する構造を整理します。
  2. 事業を分解する:定款の目的だけでなく、実際の契約、請求、役務、顧客、売上項目を列挙し、リスト1・2・3への該当を確認します。
  3. 参入経路を選ぶ:タイ資本との共同事業、FBL、BOI認可+FBC、条約・個別法のうち、事業と投資計画に合う経路を選びます。
  4. 他法令を重ねる:外国人事業法以外の業法、土地、労働許可、税務、最低資本金、業種別ライセンスを確認します。

同じ会社が製造、卸売、保守、コンサルティング、ソフトウェア利用許諾を行う場合、これらを一つの「製造業」として扱えるとは限りません。製造そのものが外国人事業法のリストに入らなくても、保守やコンサルティングなどのサービス収入は別に検討が必要です。

外国人事業法上の「外国人」と外資比率

外国人事業法4条は、外国籍の自然人、外国法で設立された法人に加え、タイで設立された法人でも資本株式の半数以上を外国人が保有・出資する法人などを「外国人」と定義しています。したがって、外国人持分がちょうど50%の会社も外国人に当たります。

出資構造 FBA上の基本的な位置付け 注意点
外国人持分50%以上 原則として「外国人」 予定事業が制限対象ならFBL、FBCなどの根拠が必要
タイ人持分51%以上 資本比率だけでは外国人に当たらない構造 タイ株主が名義だけではなく、実際に出資し権利を行使する必要がある
外国法人が階層的に出資 各法人の出資関係を確認 表面上の直接株主だけで判断せず、資金源や実質関係も整理する

「49%までなら何をしてもよい」という意味ではありません。旅行、金融、通信、教育、医療、運輸、土地などには個別法の条件があり、外国人の就労には会社の出資規制とは別にビザ・労働許可が関係します。株主比率だけで営業可否を確定しないでください。

外国人事業法リスト1・2・3の違い

タイ外国人事業法のリスト1・2・3における禁止・許可区分と事業例

外国人事業法8条は、制限事業を3つのリストに分けています。以下は全項目ではなく、最初の判定に使う要約です。正式な対象範囲は、事業内容を原文と照合して確認します。

区分 基本ルール 主な例
リスト1 外国人による営業を原則禁止 新聞・ラジオ・テレビ、稲作などの農業、タイ領海内の漁業、土地取引など
リスト2 商務大臣の許可と閣議承認が必要 安全保障に関係する事業、伝統文化・工芸、鉱業や一部天然資源関連など
リスト3 商務省事業開発局長の許可と外国人事業委員会の承認が必要 会計・法律・建築・技術サービス、建設、仲介、小売・卸売、広告、ホテル、飲食、その他サービスなど

リスト2の事業を外国法人が行う場合、外国人事業法15条は、原則としてタイ人または外国人ではない法人が資本の40%以上を保有し、取締役の5分の2以上をタイ人とする条件を定めています。合理的な理由がある場合は大臣と閣議の承認によりタイ側資本を引き下げられますが、25%未満にはできません。

リストは毎年少なくとも一度見直す仕組みです。ただし、DBDが除外案を公表した段階と、法令上の除外が発効した段階は異なります。「規制緩和が提案された」というニュースだけで営業を始めず、官報、現行リスト、DBDの確認結果まで追う必要があります。

タイ外資参入の4つの経路

1.実質的なタイ資本を含むタイ法人

外国人持分を50%未満とし、タイ側株主が実際に自己資金を出資し、配当・議決権・経営上の権利を持つ共同事業です。FBA上の「外国人」に当たらない形を取り得ますが、タイ側株主が名義だけで、資金も権利も外国人側に戻る構造は名義貸しの問題になります。

2.外国人事業許可証(FBL)

外国人に該当する会社がリスト2またはリスト3の制限事業を行うため、外国人事業法17条に基づいて取得する許可です。審査では、事業の必要性、技術移転、雇用、経済への利点、国内企業への影響などが検討され、申請すれば自動的に認められる制度ではありません。

3.BOI認可+外国人事業証明書(FBC)

BOIの投資奨励対象として認可された事業が、認可された範囲でリスト2またはリスト3に該当する場合、外国人事業法12条に基づきDBDへ通知してFBCを取得する経路です。FBLの裁量審査を同じ形で受けるのではなく、BOI認可という別の権利根拠をDBDが証明します。

4.条約・協定・個別法に基づくFBC

米国・タイ友好経済関係条約などの条約、または個別法に基づく営業権がある場合、FBCを取得する経路があります。条約には対象国、会社・株主の国籍、対象外事業などの条件があるため、単に外国法人であれば使える制度ではありません。

FBLとFBCの違い

比較項目 FBL FBC
日本語 外国人事業許可証 外国人事業証明書
主な根拠 外国人事業法17条の許可 BOI認可、条約・協定、個別法など
判断の性格 対象事業を行う許可を審査 別制度で得た営業権をDBDが証明
対象範囲 許可された事業と条件の範囲 BOIなどで認められた事業と条件の範囲
注意点 申請しても承認されるとは限らない 会社の全事業へ自動的に広がるものではない

FBCはFBLの「簡易版」ではありません。FBCには、先にBOI、条約、個別法などの根拠が必要です。また、BOI認可事業とは別にコンサルティングや賃貸、保守などの収益事業を行う場合、その事業がFBCの範囲に含まれるかを別途確認します。

BOI認可でできること・できないこと

BOIの2026年投資奨励ガイドでは、外国人事業法リスト1の事業には原則としてタイ人が51%以上出資すること、リスト2・3の奨励事業では他法令に別段の定めがない限り外国人持分の制限を置かないこと、必要に応じてBOIが個別の持分条件を設定できることが示されています。

そのため、BOI認可を得た対象事業では外資100%の会社が可能になる場合があります。ただし、次の点は自動的には解決しません。

  • BOI認可の対象外となる売上・役務
  • 土地、金融、通信、運輸など個別法の規制
  • 外国人従業員ごとのビザ・労働許可手続き
  • 税務、VAT、移転価格、源泉税などの義務
  • 認可条件に定めた投資額、設備、雇用、操業期限、報告

BOIを検討する場合は、会社名や広い事業目的ではなく、製品・サービス、工程、使用技術、顧客、収益モデル、設備投資を具体化します。BOI認可の文言、FBCの記載、実際の契約書・請求書が一致する状態を目指します。

最低資本金・審査期間・オンライン申請

外国人事業法14条では、外国人がタイで事業を始める際の最低資本を原則200万バーツ以上、同法上の許可が必要な事業については事業ごとに300万バーツ以上としています。実際の送金時期や算定、他制度の資本要件は省令、許可条件、会社形態によって確認が必要です。

FBLの法定手続きでは、リスト2・3の申請は受理後60日以内に決定し、リスト2はやむを得ない場合に最大60日の延長が可能です。承認後は15日以内に許可証を発行する規定があります。これは法令上の枠組みであり、申請前の資料準備、補足説明、他省庁の許可、会社登記に要する期間を含む一律の開業日数ではありません。

2025年のタイ外国人事業許可1078件をFBL、BOI等のFBC、条約等のFBCに分けた図

DBDの2025年年次報告によると、同年の外国人事業の許可・証明は合計1,078件でした。内訳は、外国人事業法17条のFBLが291件、BOI・個別法に基づくFBCが663件、条約・協定に基づくFBCが124件です。公表比率は四捨五入のため合計が101%になります。

DBDは2024年8月にe-Foreign Businessを本格稼働し、2025年は申請の100%がオンラインで提出されたと報告しています。申請、支払い、電子領収書、電子署名、許可証・証明書の取得までオンライン化されています。窓口の有無ではなく、提出資料の整合性と事業分類の正確さが準備の中心です。

事業別に確認すべきポイント

事業例 最初に確認する論点 よくある見落とし
コンサルティング・受託サービス リスト3の「その他サービス」を含む該当性 海外顧客だけなら無条件で対象外と考える
ソフトウェア・デジタル事業 開発、SaaS、保守、再販を分け、BOI対象範囲を確認 BOI認可外の保守・コンサル収入を同じ権利で扱う
製造業 製造品目、工程、工場許可、販売・保守の区分 製造が可能なら卸売・小売・保守も自動的に可能と考える
小売・卸売 リスト3の資本要件付き例外と販売形態 オンライン販売なら小売規制と無関係と考える
飲食店 リスト3、食品・酒類・店舗の各許可、賃貸契約 タイ法人を登記すれば営業許可まで完了したと考える
ホテル・宿泊 ホテル業とホテル管理、建物・用途・許可を分ける 物件保有、運営、管理受託を一つの事業として扱う
不動産 土地保有、コンドミニアム、仲介、賃貸、管理を分ける 会社スキームで土地規制を回避できると考える

特に契約書の業務記述と請求項目が重要です。会社登記簿に広い目的を記載できても、その全項目を外国人会社が営業できるとは限りません。予定売上を一行ずつ並べ、「誰に、何を、どこで提供し、何の対価を受け取るか」を説明できる資料を作ると、FBA・BOI・税務のずれを見つけやすくなります。

名義貸しが参入方法にならない理由

外国人のためにタイ人が名義だけを提供し、外国人事業法を回避する行為は、同法36条・37条の対象です。違反した外国人と名義を提供した者には、3年以下の禁錮または10万~100万バーツの罰金、もしくはその両方が科される可能性があります。裁判所の営業停止命令などに従わない場合は、1日1万~5万バーツの追加罰金も規定されています。

DBDは2025年、旅行、土地取引・不動産、電子商取引、物流、倉庫、ホテルなどを含む高リスク分野で名義貸し調査を行っています。株主名簿だけでなく、タイ株主の資金源、支払い、権利、経営参加、外国人側との契約を説明できる状態が必要です。

名義貸しの定義、摘発例、刑事リスクは、タイの外国人名義貸しとは?規制とリスクで詳しく整理しています。投資環境や投資家保護の全体像は、タイの投資規制と投資家保護のポイントも参照してください。不動産取得・運用では、タイ不動産市場と外国人投資の注意点も関連します。

会社設立前のチェックリスト

  1. 売上項目を分解する:商品販売、役務、保守、仲介、賃貸、ライセンス料などに分ける。
  2. 外国人該当性を確認する:直接・間接の出資者、資金源、議決権、取締役構成を表にする。
  3. リストと個別法を照合する:外国人事業法だけでなく、業種別許認可を確認する。
  4. 参入経路を比較する:タイ資本との共同事業、FBL、BOI+FBC、条約・個別法を、時間・条件・対象範囲で比べる。
  5. 認可範囲と契約を合わせる:BOI申請、FBL・FBC、定款、顧客契約、請求書の事業記述を一致させる。
  6. 資本と運転資金を分ける:法定最低資本だけでなく、認可条件、送金、設備、採用、税金を含む資金計画を作る。
  7. 証拠を保存する:株主の出資証拠、取締役会、契約、送金、許可証、認可条件を更新可能な形で保管する。

タイの会社登記は、商号予約、基本定款、創立総会、会社登記などの手順で進みます。BOIの2026年会社設立ガイドでは、非公開会社は2人以上の発起人を必要とし、各株式の25%以上を払い込み、創立総会から3カ月以内に登記申請する流れが示されています。ただし、登記の完了は制限事業の営業許可を意味しません。

よくある質問

外資49%ならFBLは不要ですか?

資本比率だけを見ればFBA上の「外国人」に当たらない形を取り得ますが、タイ株主が実質的な株主であることが前提です。また、業種別法令や外国人の就労規制は別に確認が必要です。

BOI認可があれば外資100%にできますか?

対象となる奨励事業では可能な場合があります。ただし、BOIが認可した事業と条件の範囲に限られます。認可外の売上や個別法の規制まで自動的に解消するものではありません。

FBLとFBCはどちらを選べばよいですか?

自由に選ぶ二つの申請コースではありません。BOI、条約、個別法の営業権がある場合はFBC、それがなく制限事業の許可を求める場合はFBLが基本です。

申請はオンラインだけで完結しますか?

DBDのe-Foreign Businessは申請、支払い、電子署名、許可証・証明書の取得をオンライン化しています。一方、事業内容の整理、タイ語資料、他省庁の許可、会社・税務手続きは別に準備が必要です。

この確認はいつ行うべきですか?

物件契約、採用、設備発注、顧客契約より前が基本です。少なくとも、会社名や株主比率を確定する前に、予定する全売上項目の規制判定を行います。

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一次情報

本記事は2026年7月18日時点の公表資料に基づく一般的な解説です。事業の分類、出資構造、認可範囲によって結論が変わるため、実際の投資・設立・営業開始前にDBD、BOI、業種所管官庁、タイ法の有資格専門家へ個別に確認してください。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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