外国人はタイで土地を自由に所有できませんが、一定の条件を満たせばコンドミニアムの専有部分を本人名義で所有できます。ただし、外国人所有枠、海外送金の証憑、売買契約、建物管理、土地局での移転登記が一本の線でつながっていなければ、残金決済の直前に問題が表面化します。
本記事では、2026年7月19日時点のタイ国土地局(Department of Lands)とタイ中央銀行の公表情報を基に、外国人がタイでコンドミニアムを購入する手順を、物件選定から所有権移転、保有・売却まで実務順に解説します。
購入前に押さえる4点
- 外国人所有枠49%は戸数ではなく、建物全体の専有面積の合計で判定します。
- 一般的な購入経路では、購入代金を海外からタイへ送金し、銀行証憑を土地局へ提出します。
- 予約金より前に、外国人枠、権利証、担保、管理費債務、売主権限を確認します。
- 契約・送金・登記の名義、物件情報、金額が一致するように設計します。
外国人はタイでコンドミニアムを所有できる
タイ国土地局の案内では、コンドミニアム法19条に定める外国人または外国法人が条件を満たし、かつ建物の外国人所有枠内であれば、コンドミニアムの専有部分を取得できます。多くの海外居住者が使うのは、外貨をタイへ持ち込む、または非居住者バーツ口座・外貨預金口座から購入代金を支払う経路です。
所有するのは登記されたコンドミニアムのユニットと共用部分の持分です。外国人が土地そのものを直接所有する制度ではありません。ヴィラや戸建ての「建物所有」と土地利用権を、コンドミニアムの区分所有と同じだと考えないようにします。
外国人所有枠49%の正しい見方

外国人名義で所有できるユニットの合計は、原則として建物全体の専有面積の49%までです。戸数の49%ではありません。広いユニットの外国人所有が増えれば、戸数が半数未満でも枠が埋まる場合があります。
新築販売時に「Foreign quota」と表示されていても、所有権移転まで残枠が保証されるとは限りません。中古売買でも、売主の国籍だけで判断せず、コンドミニアム管理法人が発行する外国人所有比率の証明を取得します。予約金を返金不可にする前に、枠がない場合の解除・返金条件を契約へ入れます。
購入の前提条件を3つに分ける
| 判定 | 確認内容 | 問題がある場合 |
|---|---|---|
| 買主の資格 | 外国人・外国法人の取得経路、本人確認、資金源 | 名義と送金経路を再設計 |
| 建物の枠 | 外国人所有面積が49%以内か | タイ人枠ユニットを外国人名義で移転できない |
| ユニットの権利 | 権利証、担保、差押え、売主権限、管理費債務 | 解除、担保抹消、決済条件の変更 |
「外国人が買える」と「このユニットを今日移転できる」は別の問いです。買主資格があっても外国人枠が埋まっていれば移転できず、枠が残っていても権利証や担保に問題があれば安全に取得できません。
購入手続きの全体像

- 権利・外国人枠を調査する:権利証、売主、担保、建物登録、外国人枠、管理費債務を確認します。
- 契約条件を確定する:解除条件、残金支払日、引渡し、欠陥、家具設備、費用分担を明文化します。
- 海外から送金する:銀行と事前に必要証憑を確認し、買主名義・購入目的・金額を一致させます。
- 最終検査を行う:専有部、共用部、メーター、鍵、家具設備、修繕状況を確認します。
- 土地局で所有権を移転する:必要書類、税・手数料、担保抹消、名義更新を同時に処理します。
ステップ1:権利証と売主を確認する
売主から受け取ったコピーだけでなく、土地局で登録内容を確認します。ユニット番号、階、面積、所有者名、担保権、差押えなどを照合し、代理人が売却する場合は委任状の形式と権限も確認します。
新築物件では、開発許可、建物登録、EIAが必要な案件の承認状況、竣工・登記の条件を確認します。建設中の広告資料やモデルルームは権利の証明ではありません。中古物件では、売主がローンを残している場合、残金から銀行へ直接返済し、担保抹消と移転を同日に行う設計が一般的です。
ステップ2:管理法人と建物全体を調べる
コンドミニアム購入では、室内だけでなく管理法人の財務と建物状態が資産価値を左右します。管理費滞納、修繕積立不足、エレベーター・給排水・防水の更新、大規模修繕計画、訴訟、違法増改築、短期賃貸の運用を確認します。
管理法人から取得・確認する情報
- 外国人所有比率の証明
- 売主ユニットの管理費債務不存在証明
- 直近の総会議事録と予算・決算
- 共用部保険と大規模修繕計画
- 管理費、修繕積立金、特別徴収の予定
- 賃貸・ペット・改装・駐車場などの規約
管理費が安いことは必ずしも利点ではありません。必要な修繕を先送りしているだけなら、購入後に特別徴収や資産価値低下として表れます。市場価格や在庫を確認する場合は、タイ不動産市場と外国人投資の注意点も参照してください。
新築・中古・完成在庫の違い
| 物件 | 確認しやすい点 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 建設前・建設中の新築 | 支払工程、図面、予定仕様 | 遅延、仕様変更、竣工・登記、事業者信用 |
| 完成在庫 | 実物、眺望、共用部、即時移転条件 | 長期在庫の理由、外国人枠、管理開始後の実績不足 |
| 中古 | 実際の管理、修繕、賃貸実績、周辺環境 | 担保、管理費債務、設備劣化、違法改装 |
新築の価格表と中古の成約価格は同じ条件ではありません。家具、修繕、移転費用、完成までの資金拘束、賃料発生時期を揃えて比較します。「値引率」が大きくても、基準となる表示価格が市場成約価格より高ければ割安とは限りません。
建設中物件では、予約金から残金までの支払工程と、竣工・登記が遅れた場合の解除権を確認します。完成物件では、最終検査と所有権移転を近い日程にし、検査未了のまま全額支払わない条件を検討します。
ステップ3:売買契約に入れる条件
予約書、売買契約、引渡確認書の役割を分けます。タイ語と英語・日本語の契約が併存する場合、どの言語が優先するかも明記します。口頭説明やチャットだけに依存せず、次の条件を契約へ入れます。
- 外国人所有枠を取得できない場合の解除と全額返金
- 権利調査で担保・差押え・面積不一致が判明した場合の解除
- 海外送金証憑が土地局で受理されない場合の協力義務
- 売買価格、予約金、手付金、残金、支払先口座
- 移転料、源泉税、特定事業税、印紙税などの負担者
- 家具・家電・駐車権・鍵・メーターの設備表
- 最終検査、欠陥補修、引渡遅延、違約金
- 担保抹消と所有権移転を同時に行う条件
契約上の費用分担と、法律上どちらが納税義務者かは同じとは限りません。「50/50」とだけ書かず、何の費用をどう分けるかを項目別にします。
ステップ4:海外送金と銀行証憑
タイ国土地局の案内では、一般的な外国人購入者は、購入代金に相当する外貨を海外からタイへ送る、非居住者バーツ口座から引き出す、または外貨預金口座から引き出すことを示す証拠を提出します。
送金前に受取銀行へ、FET(Foreign Exchange Transaction Form)またはCredit Advice等、土地局で使う証憑の発行条件を確認します。送金人、受取人、購入目的、コンドミニアム名、ユニット番号、通貨、金額の記載を揃えます。家族・会社・代理人の口座を介すと、買主本人の購入資金として説明できない可能性があります。
タイ中央銀行は、外貨取引を認可された金融機関等を通じて行うこと、一定額以上の取引では銀行が裏付け書類を求めることを説明しています。土地局が求める購入証憑は、銀行の一般的な外為確認とは別に準備します。残金送金後に書類を作り直すより、送金指図の時点で銀行・法律専門家と文言を確定する方が安全です。
ステップ5:最終検査と引渡し
内見と最終検査は分けます。最終検査では、水圧、排水、漏水、空調、電気、扉、窓、床、備品を記録し、写真と設備表を引渡書へ添付します。中古物件では、改装が管理規約や建物許可に反していないかも確認します。
室内だけでなく、屋上、防水、配管、受電設備、消防、エレベーター、駐車場、避難経路など共用部の状態も重要です。過去の記事「外国人が見落としがちなコンド購入の注意点」では、建物診断と交渉の考え方を紹介しています。
土地局での所有権移転
移転当日は、買主・売主の本人確認書類、権利証、売買関係書類、管理法人の証明、外国人の購入資格・送金証憑、委任状などを提出します。案件により必要書類が異なるため、管轄土地局へ事前確認します。
税・手数料は、評価額、売買価格、売主の保有期間や属性、取引形態、時限措置で変わります。インターネット上の古い「移転費2%」だけで資金を用意せず、管轄土地局または専門家に決済日の試算を依頼します。売主負担の税を契約で買主が負担する場合もあるため、総取得費で比較します。
購入価格以外に必要な資金

総予算は、売買価格に決済日の費用を足すだけでは足りません。海外送金手数料と為替差、法律・建物調査、家具、修繕、管理費前払い、修繕積立金、保険、空室期間を含めます。投資目的なら、売却時の仲介・税費用も出口価格から控除します。
| 段階 | 予算に入れる項目 |
|---|---|
| 購入前 | 法律調査、建物検査、翻訳、送金・為替 |
| 決済時 | 税・手数料、管理費、積立金、担保抹消関連 |
| 保有中 | 管理費、修繕、保険、税、空室、管理委託 |
| 売却時 | 仲介、税・手数料、補修、為替・送金証憑 |
価格をバーツで契約し、日本円から送金する場合、契約から決済までの為替変動も自己資金へ影響します。送金を分ける場合は、各送金の証憑と合計額が売買契約・土地局の要件に合うかを銀行へ確認します。
バンコクで立地を選ぶときの確認軸
BTS・MRT駅からの距離だけでは、将来価値を説明できません。都市計画上の土地利用、道路拡幅、周辺再開発、浸水、交通騒音、隣地建替え、商業施設、病院、学校、賃貸需要を確認します。
特に長期保有では、現在の眺望より、隣接地に何が建てられるかが重要です。土地利用と道路計画の確認方法は、バンコク新都市計画と土地利用・再開発への影響で整理しています。
法人名義、タイ人名義、ノミニーを安易に使わない
外国人枠がないからという理由で、実態のないタイ人名義や会社を使うことは解決策ではありません。土地局は外国人のための名義保有を防ぐ運用を公表しており、虚偽の出資や名義貸しには民事・刑事・行政上のリスクがあります。
事業会社による取得は、会社の事業目的、外国人事業法、株主構成、税務、資金源まで含めて判断します。タイの外国人名義貸し規制と、外国人事業法・FBL・BOIの参入ルールも確認してください。
購入後の保有・賃貸・売却
購入後は、管理費、修繕積立、保険、固定資産関連の税、空室、修繕、管理委託を含めて手取り収益を計算します。表面利回りは、売買価格に対する年間賃料だけであり、家具更新、仲介手数料、空室、税、為替を反映しません。
短期賃貸は、ホテル法、建物規約、管理法人の運用が関係します。「民泊可能」とする仲介説明だけで判断しません。売却時には、買主の外国人枠、資金決済、送金・再送金に必要な証憑、税費用を確認します。購入時の銀行証憑や登記書類は売却・資金還流でも重要になるため保管します。
購入を止めるべき赤信号

- 外国人枠の証明を出さず、予約金を急がせる
- 買主本人以外の口座へ送金するよう求める
- 権利証原本、担保、管理費債務を確認できない
- 契約に返金・解除条件がない
- 家具設備や引渡状態が口頭説明だけ
- 会社やタイ人の名義を「形式だけ」と説明する
- 賃料保証の支払主体と保証原資が不明
- 土地局、銀行、管理法人への確認を嫌がる
まとめ:送金前に登記条件を確定する
外国人のタイ・コンドミニアム購入は、49%枠を確認し、権利と建物を調査し、解除条件を含む契約を作り、その契約に合う形で海外送金し、土地局で移転する流れです。室内の魅力や利回りより先に、所有権を確実に取得できるかを確認します。
物件ごとに外国人枠、担保、管理、税費用は変わります。予約金や残金を支払う前に、管轄土地局、受取銀行、管理法人、独立した法律・建物専門家へ確認し、売主側だけの説明に依存しないことが重要です。
よくある質問
タイに住んでいない外国人でも購入できますか
居住許可を持つ外国人以外にも、海外から購入資金を持ち込む等、コンドミニアム法19条に定める取得経路があります。実際に使える経路と必要書類は、国籍、資金、物件、管轄土地局で確認してください。
タイの銀行口座がなければ購入できませんか
銀行口座の有無だけで取得可否は決まりませんが、買主本人の資金であることと、海外送金・外貨取引の証拠を土地局へ示す必要があります。第三者口座を介す方法は証明が複雑になるため、送金前に受取銀行と管轄土地局へ確認します。
外国人でもタイで住宅ローンを組めますか
外国人向け融資を扱う金融機関はありますが、居住資格、タイ国内所得、勤務先、頭金、物件、返済通貨などの審査条件が厳しく、全ての購入者が利用できるわけではありません。ローン承認前に返金不可の契約を結ばないよう、融資否決時の条件を確認します。
購入したコンドを賃貸できますか
長期賃貸は可能ですが、管理規約、税務、外国人事業規制、賃貸管理を確認します。日単位・週単位の短期宿泊はホテル法等の問題があり、一般的なコンド所有権だけで自由に営業できるとは限りません。
参考・出典
- タイ国土地局:外国人の土地・コンドミニアム取得に関する資料一覧
- タイ国土地局:外国人のコンドミニアム所有に関する規則
- タイ中央銀行:外国為替規制の概要
- タイ国土地局:外国人のための名義保有を防止する措置
本記事は一般情報であり、個別の法律・税務・不動産助言ではありません。法令、土地局の運用、税・手数料、銀行書類は変更されるため、決済前に管轄機関と資格を持つ専門家へ確認してください。


