ホームタイタイでEC販売を始める手続き|商業登記・OCPB・VAT・ETDA規制

タイでEC販売を始める手続き|商業登記・OCPB・VAT・ETDA規制

タイでネット販売を始めるとき、法人登記だけで必要手続きが終わるとは限りません。自社サイト、SNS、マーケットプレイスへの出店、他の販売者を集めるプラットフォーム運営では、商業登記、消費者保護、VAT、ETDAのDigital Platform Service規制の当てはまり方が変わります。

本記事では、2026年7月19日時点のタイ商務省事業開発局(DBD)、消費者保護委員会(OCPB)、歳入局、ETDAの公表情報を基に、タイでEC販売を始める事業者が確認すべき登録・税務・運用を実務順に整理します。

この記事の結論

  • 最初に「自社商品を売る販売者」か「他者をつなぐプラットフォーム運営者」かを分けます。
  • 法人・商業登記、EC事業情報、OCPBの市場型直販、VATを別々に判定します。
  • 年商180万バーツという数字は複数制度で出ますが、対象者と測る収益が同じとは限りません。
  • 利益管理は売上ではなく、プラットフォーム料、広告、物流、返品、値引き、税を引いた注文別粗利で行います。

販売者とプラットフォーム運営者を分ける

マーケットプレイスへ出店する販売者と、複数の販売者・購入者をつなぐマーケットプレイス運営者は同じではありません。前者は商品販売が中心で、後者はデジタルプラットフォームサービスを提供します。

タイEC販売のDBD・OCPB・VAT・ETDAの4レイヤー
必要手続きはチャネル名ではなく、事業者の役割、売上、利用者数、取引構造で判定します。

自社が仕入れた商品を自社サイトで売る場合、サイトに決済機能があっても、それだけで他者をつなぐプラットフォーム運営者になるわけではありません。一方、第三者の商品を掲載し、注文、決済、レビュー、配送、マッチング等を仲介する場合は、ETDAのDPS規制を確認します。

タイでEC販売を始める前の7段階

タイでEC販売を始める前に事業主体から利益管理まで確認する7段階
登録だけで終わらせず、注文・出荷・入金・返品・税務を再現できる状態まで作ります。
  1. 事業主体と外国人規制を確認する
  2. 会社・商業登記とEC事業情報を整える
  3. OCPBの市場型直販登録の対象・免除を確認する
  4. VAT、法人税・個人所得税、輸入税を設計する
  5. ETDAのDPS規制をプラットフォーム運営者として判定する
  6. 商品表示、注文、キャンセル、返品、個人情報の運用を作る
  7. チャネル別・注文別の利益と証憑を照合する

登録を順番に取るだけでなく、利用規約、商品ページ、請求書、返品フロー、会計データが同じ事業モデルを表しているかを確認します。

1. 事業主体と外国人事業規制

日本企業や日本人がタイ法人を使ってEC事業を行う場合、会社設立だけでなく、外国人事業法上の外国人該当性と事業内容を確認します。小売、卸売、サービス、プラットフォーム手数料、広告、物流など、収益項目ごとに必要な許可・資本条件が異なる可能性があります。

タイ人株主を形式的に置く名義貸しは使いません。外資比率、FBL、FBC、BOIの判断は、タイの外国人事業規制と外資参入ルールで詳しく解説しています。

2. DBDの会社・商業登記とEC情報

タイ商務省DBDは、法人のオンライン登記、商業登記、電子商取引事業者向けの案内を提供しています。法人の場合は、会社の目的、取締役権限、本店・支店、税務情報が実際のEC事業と一致しているかを確認します。

EC事業では、ウェブサイトやオンライン店舗のURL、取扱商品、事業所情報などを整理し、必要な商業登記を行います。DBD Registeredはオンライン店舗の事業者情報を確認しやすくする認証制度ですが、取得すればOCPB、VAT、ETDAの義務が免除される制度ではありません。

開店前に揃える基本情報

  • 販売主体の正式名称、法人番号、住所、連絡先
  • サイト、SNS、各マーケットプレイス店舗のURL
  • 取扱商品・サービスと必要な個別許可
  • 価格、VAT表示、送料、支払方法
  • 注文成立時点、在庫切れ、キャンセル、返品、返金条件
  • 領収書・税務インボイスの発行方法
  • 個人情報、Cookie、広告配信、委託先の取扱い

3. OCPBの「市場型直販」を確認する

タイ消費者保護委員会は2026年4月、ウェブサイト、SNS、アプリ等を通じて消費者へ直接販売する事業について、Direct Sales and Direct Marketing Actに基づく「市場型直販」の登録が必要となる場合があると改めて案内しました。無登録で対象事業を行う場合の罰則も示されています。

ただし、全ての投稿・オンライン販売が同じ扱いになるわけではありません。事業主体、年間収入、販売構造、法令上の免除を確認します。OCPBは、一定の個人販売者について年収180万バーツ以下を免除例として説明しています。法人、複数サイト、代理店・会員組織を使う場合は、自己判断せずOCPBへ確認します。

確認質問 確認する理由
販売主体は個人か法人か 免除と提出書類の判定が変わる
自社商品を消費者へ直接販売するか 市場型直販への該当性を確認する
サイト、SNS、アプリを複数運営するか 登録単位と表示主体を揃える
代理店、会員、紹介報酬があるか 販売組織の実態を確認する
年間収入はいくらか 免除条件とVATを別々に判定する

4. VATと税務:年商180万バーツを基準に判定

タイ歳入局は、タイで継続的に商品を販売またはサービスを提供し、年間売上が180万バーツを超える事業者は、原則としてVAT登録の対象になると説明しています。一般税率は2026年7月時点で7%です。VAT登録後は、売上VAT、仕入VAT、税務インボイス、月次申告を一体で運用します。

売上がしきい値に近づいてから準備すると、商品価格へVATを転嫁できない、マーケットプレイスの税込表示と会計が合わない、過去注文の証憑を再構築できない問題が起きます。月次で累計売上を監視し、登録前後の価格、請求書、会計マッピングを事前に切り替えます。

タイEC事業で年商180万バーツをVAT・OCPB・ETDAに分けて確認する図
同じ180万バーツでも、誰のどの収益を測るかを制度ごとに確認します。

VAT以外に確認する税務

  • 法人税または個人所得税の売上・費用認識
  • マーケットプレイスが控除する手数料・源泉税の証憑
  • 広告、物流、決済代行、海外サービス利用の税務
  • 輸入時の関税、輸入VAT、商品規制
  • 値引き、クーポン、返品、返金、ポイントの会計処理
  • 税務インボイスと注文・入金・出荷の照合

マーケットプレイスからの入金額をそのまま売上にすると、手数料控除前の総売上と一致しないことがあります。注文総額、値引き負担者、プラットフォーム料、広告費、物流費、源泉税、純入金を分解し、契約と証憑に基づいて会計処理します。

5. ETDAのDigital Platform Service規制

ETDAのDPS規制は、オンライン上で利用者同士をつなぎ、取引・交流を支援するデジタルプラットフォームサービスを対象とします。オンラインマーケットプレイス、マッチング、予約、配車、コンテンツ集約などが代表例です。

ETDAの案内では、タイ国内サービスによる年間収益が個人で180万バーツ超、法人で5,000万バーツ超、またはタイ国内の月間利用者が5,000人超などの基準を使って、事前通知の範囲を判定します。基準以下でも簡易情報の通知対象となる場合があるため、「小さいから無関係」とは決めつけません。

海外法人がタイの利用者へサービスを提供する場合も対象になり得ます。利用規約、苦情対応、変更通知、年次報告、タイ国内窓口などの義務は、サービス規模と類型で確認します。

DPS判定で整理する事実

  • 自社商品販売か、第三者間の取引仲介か
  • タイ国内のプラットフォーム収益
  • 自然人・法人の区分
  • タイ国内の月間アクティブ利用者
  • 決済、ランキング、レビュー、広告、物流への関与
  • タイ国外運営者の国内窓口・代表者

6. 商品表示、注文、返品、個人情報

登録が済んでも、商品ページと実際の履行が一致しなければ消費者トラブルになります。商品名、仕様、数量、価格、VAT、送料、配送時期、在庫、保証、返品・返金、販売者情報を、購入前に確認できる形で表示します。

規制商品は、食品、化粧品、医療機器、酒類、通信機器、計量器など商品ごとの許可・表示を確認します。過去には、オンラインで販売された違法計量器が摘発された事例もあります。「他店も売っている」は適法性の根拠になりません。

注文時に取得する氏名、住所、電話番号、決済情報、閲覧履歴は、利用目的、保存期間、委託先、越境移転、削除・開示対応を設計します。物流会社や広告ツールへ渡すデータを洗い出し、権限を必要最小限にします。

7. 注文別の利益と証憑を照合する

ECは売上が伸びても利益が残らないことがあります。チャネル別に、商品原価だけでなく、プラットフォーム料、決済料、広告、送料無料負担、倉庫、梱包、返品、破損、値引き、税を引きます。

レポート 照合先 ずれやすい項目
注文データ サイト・マーケットプレイス キャンセル、部分返金、クーポン
出荷データ 倉庫・配送会社 未出荷、再配送、COD拒否
決済データ 銀行・決済代行 決済料、留保金、返金時差
税務データ 会計・税務インボイス 総額・純額、VAT、源泉税
広告データ 広告媒体 アトリビューション、代理店手数料

日次では異常注文と在庫、週次ではチャネル別粗利、月次では注文・出荷・入金・税務を締めます。販売数だけをKPIにすると、広告で赤字注文を増やしていても発見が遅れます。

マーケットプレイス出店と自社ECの比較

タイのマーケットプレイス・自社EC・SNS販売を費用とリスクで比較する図
集客力だけでなく、手数料、顧客データ、証憑、アカウント停止リスクで販売チャネルを比較します。
比較 マーケットプレイス 自社EC
集客 既存流入を利用できる 広告・SEO・SNSを自社で作る
手数料 販売・決済・広告費が重なる 決済・システム・集客費を負担
顧客データ 利用範囲が規約で制限される 自社責任で取得・保護する
価格・表示 プラットフォーム規約にも従う 自社で設計し法令順守する
運営リスク アカウント停止・規約変更 システム障害・不正・集客不足

初期はマーケットプレイスで需要を確認し、利益が出る商品・顧客層が分かってから自社ECを育てる方法もあります。ただし、顧客データを無断で持ち出したり、プラットフォーム外取引へ誘導したりすれば、規約違反になる可能性があります。

関連ニュースから実務へつなぐ

開店前チェックリスト

  • 販売主体、株主、事業目的、必要許可を確認した
  • DBDの法人・商業登記とURL情報を整えた
  • OCPBの市場型直販登録・免除を確認した
  • 年商180万バーツ到達前のVAT切替計画がある
  • プラットフォーム運営ならETDA DPSを判定した
  • 商品規制、価格、送料、保証、返品条件を表示した
  • 注文・出荷・入金・税務インボイスを照合できる
  • 広告・物流・決済・返品を含む注文別粗利を計算した
  • 個人情報の取得目的、権限、保存、委託先を管理した

まとめ:チャネルではなく役割と取引構造で判断する

タイのEC規制を整理する最初の問いは、「どこで売るか」ではなく、「誰が、誰の商品を、誰に売り、誰を仲介するか」です。自社販売者とプラットフォーム運営者を分け、DBD、OCPB、VAT、ETDAを別々に判定します。

年商180万バーツという数字だけで全制度を一括判断せず、制度ごとの対象者と収益範囲を確認してください。登録後は、商品表示と注文履行、税務証憑、注文別利益をつなげることで、売上が増えるほど管理不能になる状態を避けられます。

参考・出典

本記事は一般情報であり、個別の法律・税務助言ではありません。事業モデル、商品、売上、利用者数、外資比率により必要な登録・許可が変わるため、DBD、OCPB、歳入局、ETDAおよび資格を持つ専門家へ確認してください。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
RELATED ARTICLES
- Advertisment -
Google search engine

Most Popular

Recent Comments