タイの飲食店市場は、コロナ後の観光回復、物価高、人手不足、デリバリーの定着など、複数の変化が同時進行しています。バンコクの中心部では新規出店が続く一方で、地方や中小店舗では閉店も目立ち、「勝ち組」と「苦戦組」の差が広がっていると指摘されます。
日本企業や在タイ日本人にとっても、飲食ビジネスは身近で参入しやすい分野ですが、最近は「出せば売れる」市場ではなくなっています。本稿では、2026年前後のタイ飲食店市場の規模感やトレンド、成功事例の共通点、消費者嗜好の変化、経営上のリスクと今後の見通しを整理し、どこにビジネスチャンスがあるのかを考えていきます。
2026年のタイ飲食店市場の成長率と規模

まず、タイの飲食店市場が「どれくらいの大きさ」で「どの程度のスピード」で伸びているのかを押さえておく必要があります。
外食・フードサービス市場の規模感
タイの外食・フードサービス市場は、観光立国であること、外食頻度の高さ、ショッピングモール文化の発達などを背景に、ASEANの中でも比較的大きな市場です。USDAが引用するEuromonitorや民間調査によれば、タイのフードサービス市場全体は2024年前後で数百億ドル規模と推計されており、2020年代半ばも概ね同水準規模とみるレポートもあります。ただし、具体的な金額は各レポート原文での確認が必要です。
日本語の公的情報としては、ジェトロが紹介している現地調査によると、2024年時点でタイの外食産業の市場規模は5,450億バーツ、前年から8.9%増とされています。この数字からも、コロナ禍からの回復とともに、外食市場が再び拡大軌道に乗っていることがうかがえます。
2026年の成長率「約3.2%」という予測の位置づけ
外部の業界分析では、アジア太平洋地域全体のフードサービス市場成長率について、中程度のプラス成長が見込まれるとする業界レポートもありますが、成長率の水準はレポートにより異なります。タイ単体の2026年成長率についてもレポートごとに数値が異なるため、具体的な数値は各レポート原文で確認する必要があります。
いずれにせよ、コロナ後の急回復期(高い伸び率)から、より落ち着いた成長フェーズに移行しているという大まかな方向性を示すものと理解しつつ、
- 「高成長からプラス成長の継続」への移行という参考情報にとどまること
- インフレやコスト増を考えると、売上の名目成長と実質的な利益成長は必ずしも一致しない
といった点を押さえたうえで、慎重に読み解く必要があります。
小売・フードサービス全体の中での位置づけ
タイの小売市場全体を見ると、食品・飲料関連は依然として最大級のカテゴリーです。食品小売(スーパー、コンビニなど)と外食・フードサービスは、消費者の「食」に対する支出を二分しており、
- 都市部ではモール内レストランやカフェ、デリバリーの利用が増加
- 地方では伝統的な市場や屋台と、モール・チェーン店が併存
という構造になっています。飲食店市場だけを切り出した統一的な公式統計は限られるため、タイ統計局の家計調査や商業省の小売・サービス統計、業界団体のレポートを組み合わせて把握する必要があります。
日本食レストラン市場の拡大
タイの飲食店市場の中で、日本食レストランは存在感を増しています。業界レポートでは、日本食レストラン市場について、Databridge Market ResearchでCAGR約3.35%、Pheonix Researchで約6.0%と推計されており、2020年代後半にかけて年平均数%台の成長が続くとの見方が示されています。
ジェトロが紹介する現地調査でも、日本食レストランの店舗数は増加傾向にあり、タイ人の訪日経験の増加や日本文化への親近感を背景に、「より本格的な日本食」「最新の日本のトレンドを反映したメニュー」へのニーズが高まっているとされています。これは、日本企業や日本人オーナーにとって、依然としてチャンスがある一方で、競争も激しい分野であることを意味します。
タイ飲食業界の最新トレンドとは?

市場全体が安定成長フェーズに入る中で、どのようなトレンドが飲食店の成否を分けているのでしょうか。ここでは、健康志向・サステナビリティ、デジタル化、観光との連動といった軸で整理します。
健康志向と「罪悪感の少ない」外食
タイでも、都市部を中心に健康志向が強まっています。業界レポートや展示会の動向から、
- 低糖質・低カロリー、植物由来(プラントベース)メニュー
- オーガニック食材や産地表示への関心
- 砂糖控えめドリンク、無糖・微糖の選択肢拡大
といった傾向が指摘されています。もっとも、タイでは依然として甘味の強いドリンクや揚げ物も人気であり、「健康一辺倒」ではなく、
- 平日はヘルシー志向、週末はご褒美系
- メインはしっかり、サイドやドリンクでカロリーを抑える
といった「バランス志向」が広がっているとみられます。
サステナビリティとフードロス削減
サステナビリティ(持続可能性)も、飲食業界のキーワードになりつつあります。バンコクで開催される食品・ホスピタリティ関連の展示会では、
- 環境配慮型の包装資材
- フードロス削減につながる調理・保存技術
- 地元食材の活用やトレーサビリティ(生産履歴の追跡)
などがテーマとして取り上げられています。タイ政府も観光分野で「持続可能な観光」を掲げており、飲食業界でも、
- プラスチックストローの削減
- リフィル(詰め替え)ボトルの導入
- 地産地消メニューの訴求
といった取り組みが徐々に広がっていると報じられています。現時点では「一部の先進的な店舗」の動きにとどまる面もありますが、観光客や富裕層をターゲットにする店ほど、サステナビリティをブランド要素として打ち出す傾向が強いとみられます。
SNS・インフルエンサーが生む「バイラルメニュー」
タイの消費者はSNSの利用率が高く、飲食トレンドもSNS発のものが多くなっています。業界コラムなどでは、
- インフルエンサーが紹介したドリンクやスイーツが短期間で全国的に広がる
- デリバリーアプリ上で話題化したメニューが、実店舗の行列につながる
といった事例が紹介されています。特に、チーズティーや抹茶ドリンク、日本発のパン・スイーツなどは、SNSとデリバリーの相乗効果で急速に普及したとされます。
最近では、「Eat-fluencer(イート×インフルエンサー)」と呼ばれる、飲食特化型インフルエンサーが台頭しており、
- 新メニューのローンチ時にインフルエンサーと連携
- デリバリーアプリ限定メニューをSNSで拡散
といったマーケティングが、特に若年層向けブランドでは定番化しつつあります。
デリバリーとテイクアウトの「前提化」
コロナ禍を経て、タイではフードデリバリーが日常インフラの一部になりました。複数のプラットフォームが競合し、プロモーション合戦を繰り広げた結果、
- 都市部では「外食=店内飲食+デリバリー+テイクアウト」の三位一体
- 郊外・地方都市でも、モール周辺を中心にデリバリー利用が拡大
という状況になっています。飲食店側から見ると、
- 多くの店舗で売上の一部をデリバリーが占めるようになっていると報じられている
- プラットフォーム手数料が利益を圧迫する一方、集客チャネルとしては不可欠
というジレンマを抱えています。もっとも、売上に占めるデリバリー比率は業態や立地によって大きく異なり、統一的な公式統計は限られます。2026年時点では、
- 自社デリバリーやLINE公式アカウントを使ったリピート獲得
- デリバリー専用メニュー・価格設計
など、「プラットフォーム依存をどうマネージするか」が経営課題になっているとみられます。
観光回復とホスピタリティ需要
タイ政府や観光当局は観光産業の回復・高度化を重視しており、バンコク–パタヤ間の高速鉄道計画や、サステナブルツーリズムのロードマップ策定などの取り組みが進められていると報じられています。観光客の回復は、
- バンコクやプーケット、チェンマイなど主要観光地のレストラン・カフェ
- ホテル内レストラン、ビュッフェ、バー
の売上を押し上げる一方で、
- 観光客向け価格とローカル価格の二重構造
- シーズナリティ(季節変動)への依存
といったリスクも伴います。観光と飲食を組み合わせた「フードツーリズム」や、サステナブルツーリズムと連動した地元食材の活用など、新しいビジネスモデルも模索されています。
成功する飲食店の共通点と事例

競争が激しいタイの飲食店市場で、どのような店が生き残り、成長しているのでしょうか。競合記事やコンサルティング会社のレポートなどを横断すると、成功店舗にはいくつかの共通点が見えてきます。
1. 明確なコンセプトとターゲット設定
まず重要なのは、「誰に」「どんな価値を」提供する店なのかが明確であることです。成功事例として紹介される店舗の多くは、
- オフィスワーカー向けの「早い・安い・そこそこ美味しい」ランチ特化
- 富裕層・観光客向けのプレミアムダイニング
- 若年層向けの映えるカフェ・スイーツ
- 日本食・韓国料理など、特定国の本格料理
など、ターゲットがはっきりしています。逆に、「誰でも来てほしい」コンセプトの薄い店は、価格競争に巻き込まれやすく、リピートも取りにくい傾向があると指摘されます。
2. 料理のクオリティとオペレーションの両立
タイの消費者は味に敏感で、SNSでの口コミも広がりやすいため、料理のクオリティは依然として最重要要素です。一方で、人件費や原材料費が上昇する中、
- メニュー数を絞り、看板商品に集中する
- セントラルキッチンや半加工品を活用し、店舗オペレーションを簡素化
- ピークタイムの回転率を上げるレイアウト・導線設計
といった工夫で、クオリティと効率を両立している事例が目立ちます。日本食レストランでも、
- 寿司・ラーメン・丼など、得意カテゴリーに特化
- 現地スタッフへの徹底したレシピ教育とマニュアル化
により、味のブレを抑えつつ多店舗展開しているケースが見られます。
3. デジタルマーケティングとリピート設計
成功している店舗は、デジタルを「単なる広告」ではなく、「顧客との関係構築ツール」として活用しています。具体的には、
- Googleマップやレビューサイトでの評価管理
- Instagram・TikTokでのビジュアル訴求
- LINE公式アカウントでのクーポン配信・スタンプカード
などが一般的です。特にタイでは、LINEが日常的なコミュニケーションツールとして浸透しているため、
- 来店時にLINE登録を促し、次回来店のインセンティブを付与
- 誕生日クーポンや限定メニュー情報を配信
といった「リピート設計」が売上の安定に寄与しているとされます。
4. 立地戦略とローカルパートナー
タイでの飲食店成功事例をみると、立地とパートナー選びの重要性も浮かび上がります。特にショッピングモール内や大型商業施設への出店では、
- モール運営会社との関係構築
- 家賃・共益費・売上歩合などの条件交渉
が成否を分けます。日本の大手チェーンがタイ進出する際、現地大手デベロッパーや流通グループと組むケースが多いのも、
- 好立地へのアクセス
- ローカルの商習慣・法規制への対応
をスムーズにする狙いがあると考えられます。中小規模の日本人オーナーにとっても、信頼できるローカルパートナーやコンサルタントの存在は、物件選定や行政手続き、スタッフ採用などで大きな差を生みます。
5. 日本企業・日本人オーナーの成功パターン
競合記事やコンサル会社の解説を総合すると、日本企業・日本人オーナーの成功パターンとして、
- 「日本らしさ」を前面に出しつつ、味付けや価格帯はタイ市場にローカライズ
- 日本式の衛生管理・サービス品質を差別化要素として訴求
- 現地マネージャーに権限を委譲し、オペレーションをタイ人中心で回す
といった共通点が見られます。一方で、
- 日本と同じメニュー・価格・サービスをそのまま持ち込む
- オーナーが現地に常駐せず、マネジメントが形骸化する
といったケースでは、数年で撤退する例も少なくないと指摘されています。
消費者の嗜好の変化が飲食店に与える影響

タイの飲食店市場を理解するには、「タイ人消費者が何を求めているのか」を押さえることが欠かせません。統計や業界レポート、各種コラムを総合すると、いくつかの特徴が見えてきます。
好奇心とトレンド感度の高さ
タイ人消費者は、一般に「新しいもの好き」でトレンドへの感度が高いとされます。SNSの普及もあり、
- 話題の店・メニューが短期間で全国に広がる
- 「流行に乗り遅れたくない」という心理が購買行動を後押し
する傾向があります。このため、
- 期間限定メニューやコラボ企画
- 季節ごとの新フレーバー・新商品
を継続的に打ち出すブランドは、リピートを取りやすいと考えられます。
健康志向と「二極化」する消費
一方で、経済環境の変化や物価高を背景に、消費は「二極化」しているとの指摘もあります。
- 一部の中間層・富裕層は、健康志向やプレミアム志向を強め、「高くても良いもの」を選ぶ
- 多くの一般層は、家計防衛を優先し、「コスパの良さ」「ボリューム感」を重視
この二極化は飲食店にも影響しており、
- プレミアム路線の店は、ストーリー性や体験価値を強化
- マス向けの店は、セットメニューやプロモーションで「お得感」を訴求
する必要があります。日本食レストランでも、
- 本格派・高価格帯の「おまかせ」や懐石
- 手頃な価格の丼・ラーメン・回転寿司
といった棲み分けが進んでいるとみられます。
日本食・海外食への親近感
タイでは、日本食を含む海外料理が広く受け入れられています。訪日経験のあるタイ人も増え、日本のコンビニフードやチェーン店メニューを現地で再現した商品が人気を集めるケースもあります。
ジェトロが紹介する現地調査では、
- 日本食は既に「特別なごちそう」から「日常的な選択肢」の一つへ
- その分、味やクオリティに対する目が厳しくなっている
といった指摘があります。単に「日本食だから売れる」という段階は過ぎ、
- 本格派を求める層には、素材や調理法、シェフの経歴などを丁寧に伝える
- ライトユーザーには、タイ人の味覚に合わせたアレンジやセットメニューを用意
といった細かなセグメント対応が求められています。
デジタルネイティブ世代の台頭
若年層を中心に、デジタルネイティブ世代が消費の主役になりつつあります。この世代は、
- 店舗選びの起点が「Googleマップ」「SNS検索」
- キャッシュレス決済やデリバリーアプリを当たり前に利用
- 写真映え・動画映えを重視
する傾向があります。飲食店側は、
- オンライン上の情報(写真・メニュー・営業時間)を常に最新に保つ
- レビューへの返信やクレーム対応を丁寧に行う
- 店内の内装や盛り付けに「撮りたくなる要素」を組み込む
ことで、この層の支持を得やすくなります。
飲食店経営における課題とリスク

成長余地がある一方で、タイの飲食店経営には多くの課題とリスクも存在します。業界団体や各種レポートで指摘される主なポイントを整理します。
人手不足と人件費の上昇
タイでは、サービス業全般で人手不足が課題となっており、飲食業も例外ではありません。最低賃金の引き上げや、都市部への人材集中などを背景に、
- キッチン・ホールスタッフの採用難
- 人件費比率の上昇
が経営を圧迫しています。特に日本食レストランでは、
- 日本人シェフや熟練タイ人シェフの確保
- 日本語・英語対応ができるスタッフの採用
が課題となりやすく、給与水準も相対的に高くなりがちです。
対策としては、
- メニューの標準化・マニュアル化による属人性の低減
- オーダー端末やセルフオーダーシステムの導入
- スタッフ教育プログラムの整備と定着率向上
などが挙げられます。
原材料費・家賃などコストの増加
世界的なインフレや物流コストの上昇、為替変動などにより、食材・光熱費・家賃などのコストは上昇傾向にあります。特に輸入食材に依存する日本食レストランやカフェでは、
- 円安・バーツ高など為替の影響
- 輸入手続き・関税・物流費の増加
が利益を圧迫します。家賃についても、多くの不動産・小売レポートで、バンコク中心部や人気モールのリテール賃料は相対的に高水準にあると指摘されており、物件によっては契約更新時の賃料増額がリスクとなる場合もあります。
このため、
- 地元食材への切り替えやメニュー構成の見直し
- 郊外モールやコミュニティモールなど、家賃水準が比較的抑えられた立地の検討
といったコストコントロールが重要になります。
競争激化と差別化の難しさ
タイの飲食業界は参入障壁が比較的低く、新規出店が相次いだ結果、競争が激化しています。特に、
- ラーメン、焼肉、カフェ、タピオカドリンクなどの人気業態
- モール内のフードコートやチェーン店
では、類似コンセプトの店が乱立し、価格競争に陥りやすい状況です。差別化のポイントとしては、
- 味・品質(素材、調理法)
- 体験価値(内装、サービス、ストーリー)
- 利便性(立地、営業時間、デリバリー対応)
などがありますが、どれか一つだけでは模倣されやすく、複数の要素を組み合わせた「総合力」が求められます。
規制・ライセンス・コンプライアンス
タイで飲食店を運営するには、会社設立、飲食営業許可、アルコール販売許可、消防・衛生基準など、さまざまな法規制への対応が必要です。具体的な要件や手続きは店舗の規模や業態、立地によって異なるため、最新の法令や専門家の助言を確認することが重要です。日本人オーナーの場合、
- 一般に外国人出資比率には上限が設けられており(例:原則49%まで等)、業種やBOI認可の有無により扱いが異なるため、日本人オーナーも含め個別案件では専門家への確認が必要です。
- 就労ビザ・労働許可証の取得
なども絡むため、ローカルの法律事務所や会計事務所との連携が不可欠です。規制は時期によって変更されることもあるため、最新情報の確認が重要です。
為替・マクロ経済の変動リスク
タイ経済全体の動向や為替レートの変動も、飲食店経営に影響を与えます。例えば、
- 景気減速や家計負債の増加による外食支出の抑制
- 金価格や燃料価格の変動を通じた消費マインドへの影響
- バーツ高・円安による日本からの仕入れコスト増
などが挙げられます。短期的な為替変動に一喜一憂するよりも、
- コスト構造の見直し
- ローカル顧客と観光客のバランス
といった中長期的な視点でのリスク管理が求められます。
今後のタイ飲食店市場の見通し

最後に、2026年前後から中期的に見たタイ飲食店市場の方向性と、日本企業・日本人オーナーにとってのビジネスチャンスを整理します。
安定成長+構造変化のフェーズへ
外部の業界予測では、タイのフードサービス市場は今後もプラス成長を続けるとみられています。ただし、コロナ後のリバウンド期のような急成長ではなく、
- プラス成長の継続
- その裏で、業態転換や淘汰が進む「構造変化」
というフェーズに入っていると考えられます。観光の回復や都市化の進展は追い風ですが、物価高や家計負債、人手不足などの逆風も同時に存在します。
伸びる可能性が高い領域
こうした環境の中で、今後伸びる可能性が高いとみられる領域として、
- 健康・ウェルネス系飲食:低糖質、プラントベース、オーガニック、機能性ドリンクなど
- プレミアム・体験型ダイニング:ストーリー性のあるコース料理、シェフズテーブル、ペアリング体験など
- デリバリー・テイクアウト特化型:ゴーストキッチン、クラウドキッチン、ブランド多重展開
- 日本食・アジア多国籍フュージョン:日本食をベースにした創作料理、韓国・台湾などとのミックス
- 地方都市・郊外モール内の中価格帯レストラン:中間層の拡大とモール開発に伴う需要
が挙げられます。これらはいずれも、健康志向・体験志向・利便性志向といった消費者トレンドと合致しており、適切な価格設定とオペレーションが伴えば、持続的な成長が期待できる分野です。
日本企業・日本人オーナーへの示唆
日本企業や日本人オーナーがタイの飲食店市場で成功するためには、次のようなポイントが鍵になると考えられます。
- 「日本らしさ」の再定義:単なる和食ではなく、「安全・安心」「丁寧さ」「健康配慮」といった価値をどうタイ市場向けに翻訳するか。
- ローカライズと一貫性のバランス:味付けやメニュー構成は現地化しつつ、ブランドの核となる部分(品質基準、サービス哲学)は守る。
- デジタル前提の店舗設計:オフライン店舗でありながら、デリバリー、SNS、LINE、レビューサイトを前提にした設計・運営を行う。
- 信頼できるローカルパートナー:物件、法務・会計、人材、マーケティングなど、各分野で現地の専門家と組む。
- 段階的な展開:いきなり多店舗展開を目指すのではなく、1〜2店舗でモデルを磨き、収益構造とオペレーションを固めてから拡大するという手法が、多くの外食チェーンで採用される一般的なアプローチとなっています。
まとめ:変化の大きい市場で「選ばれる店」になるには
タイの飲食店市場は、2026年前後も拡大を続けるとみられる一方で、競争は激しく、消費者の嗜好も早いスピードで変化しています。健康志向、サステナビリティ、デジタル化、観光回復といった要素が複雑に絡み合う中で、「なんとなく日本食を出す」「とりあえずカフェを開く」といった発想では、数年で埋没してしまうリスクが高いと言えます。
逆に、
- 明確なコンセプトとターゲット
- 料理のクオリティと効率的なオペレーション
- デジタルを活用したリピート設計
- ローカルパートナーとの協業
- 消費者嗜好の変化を捉えた継続的なメニュー開発
を丁寧に積み上げていけば、まだ十分にチャンスがある市場でもあります。出店を検討する際は、タイ商業省やタイ統計局、業界団体、ジェトロなどの公式情報を確認しつつ、現地でのフィールドリサーチやテストマーケティングを組み合わせ、「数字」と「現場感」の両方から戦略を組み立てていくことが求められます。
タイの飲食店市場は、変化が大きいからこそ、柔軟に学び続けるプレーヤーにとっては魅力的なフィールドです。日本の強みを活かしつつ、タイの生活者の目線に立ったビジネスモデルを構築できるかどうかが、今後の成否を分けるといえるでしょう。


