タイの電気料金は、2026年5月から12月まで燃料費調整額(Ft)が16.23サタン/kWhです。ERC(エネルギー規制委員会)が示す全国平均は3.95バーツ/kWh、VAT前ですが、これは全契約へ一律に適用する単価ではありません。家庭、店舗、工場では、契約区分、電圧、使用量、最大需要電力、TOU、力率によって実際の請求額が変わります。
本記事では、2026年7月31日時点の公式料金表を使い、家庭300kWh・500kWhと法人100,000kWhの計算例、MEA・PEAの違い、通常料金とTOU、太陽光発電の判断までを順に解説します。
最初に確認する5点
- 2026年5月から8月、9月から12月のFtはいずれも16.23サタン/kWh。
- 平均3.95バーツ/kWhはVAT前の全国平均で、自分の固定単価ではない。
- 請求額は「電力量・需要・サービス料・力率・Ft・VAT」に分けて計算する。
- TOUは夜間・休日へ負荷を移せる場合に有利で、変更すれば必ず安くなるわけではない。
- 法人は太陽光の見積もりより先に、12カ月の請求書、契約、ピークを確認する。
データ基準日: 2026年7月31日。計算例はPEAの現行料金表を基にした概算です。契約変更や設備投資の前には、請求書の顧客区分と管轄電力会社の最新条件を確認してください。
タイの電気料金2026年最新値:Ftは年末まで16.23サタン

ERCは、2026年5月から8月の小売Ftを16.23サタン/kWhと決定しました。1月から4月の9.72サタン/kWhからは6.51サタンの上昇です。続く9月から12月についても、2026年7月23日の公表で16.23サタン/kWhを維持することが確定しています。
| 対象期間 | Ft | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年1月から4月 | 9.72サタン/kWh | 前期 |
| 2026年5月から8月 | 16.23サタン/kWh | 適用中 |
| 2026年9月から12月 | 16.23サタン/kWh | 決定済み |
9月から12月は、平均ベース料金3.78バーツ/kWhへFtを加え、全国平均を3.95バーツ/kWh、VAT前に保つ決定です。ただし、3.95バーツは「家庭も工場も1kWh当たり3.95バーツ」という意味ではありません。段階料金、需要料金、TOU、サービス料を含む全国平均なので、自社の予算単価には過去12カ月の請求実績を使います。
月100,000kWhを使う事業所では、Ftが前期から6.51サタン上がると、使用量が同じでもFt部分は月6,510バーツ、VAT前で増えます。Ftの次の未決定期間は2027年1月から4月です。ERCは原則4カ月ごとに見直します。
タイの電気料金は何で構成されるか

タイの請求書は、総使用量へ一つの単価を掛けるだけでは再現できません。まず次の項目へ分解します。
| 項目 | 主な決定要因 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 電力量料金 | 顧客区分、電圧、使用kWh、通常料金・TOU | 料金区分と月間使用量 |
| 需要料金 | 最大15分需要、電圧、TOU | Maximum Demand、発生時刻 |
| サービス料 | 顧客区分、メーター | 固定の月額項目 |
| 力率関連 | 無効電力、モーター・変圧器の状態 | kVAR、Power Factor |
| Ft | ERCが決定する4カ月ごとの調整額 | 総使用kWh × 当期Ft |
| VAT | 課税対象となる小計 | 2026年7月時点は7% |
概算式は次の通りです。
請求額 =(電力量料金 + 需要料金 + サービス料 + 力率等の追加料金 + Ft)× 1.07
FtはTOUのPeakとOff-Peakで単価が変わりません。Peak使用量とOff-Peak使用量を合計した総kWhへ16.23サタンを掛けます。また、ニュースで見る「200kWhまで3バーツ以下」などの政策案は、現行請求書へ適用されている料金表とは限りません。正式決定と適用開始を確認する必要があります。
MEA・PEAと家庭・法人の契約区分
バンコク、ノンタブリ、サムットプラカーンは主にMEA(首都圏配電公社)、それ以外の地域は主にPEA(地方配電公社)が担当します。料金制度の基本構造は共通ですが、中圧の表記、申請窓口、メーター工事、太陽光の系統連系は管轄へ確認します。MEAでは中圧が主に12から24kV、PEAでは22から33kVです。
「法人だから法人単価」という一つの料金はありません。目安として、最大15分需要が30kW未満なら小規模、30から999kWで直近3カ月平均が月250,000kWh以下なら中規模、1,000kW以上または月250,000kWh超なら大規模に分かれます。実際の区分は請求書に記載された顧客種別で確認します。
家庭1.1と1.2の違い
家庭1.1は小型メーター向けの細かい段階料金、1.2は150kWhまで、151から400kWh、401kWh以上の3段階です。1.1の契約で150kWh超が3カ月続くと、翌月から1.2へ移る条件があります。1カ月だけ150kWhを超えた時点で、すぐにすべての契約が切り替わるわけではありません。
物件オーナーからの再請求は別に確認する
賃貸住宅、オフィス、商業施設では、電力会社と直接契約せず、物件オーナーや管理会社から電気代を再請求される場合があります。その場合は公式料金表だけでなく、賃貸契約の単価、共用部負担、メーター、基本料を確認します。物件取得時の費用全体は、外国人がタイでコンドミニアムを買う方法やタイ不動産市場の解説も参考にしてください。
家庭・小規模事業者の電気代を計算する

以下は家庭1.2の現行単価です。FtとVATは含まれていません。
| 使用量 | 単価 |
|---|---|
| 1から150kWh | 3.2484バーツ/kWh |
| 151から400kWh | 4.2218バーツ/kWh |
| 401kWh以上 | 4.4217バーツ/kWh |
| 月額サービス料 | 24.62バーツ |
家庭1.2で月300kWhを使う例
- 電力量料金: 150 × 3.2484 + 150 × 4.2218 = 1,120.53バーツ
- サービス料: 24.62バーツ
- Ft: 300 × 0.1623 = 48.69バーツ
- VAT前: 1,193.84バーツ
- VAT 7%: 83.57バーツ
- 請求額: 約1,277.41バーツ
家庭1.2で月500kWhを使う例
- 電力量料金: 150 × 3.2484 + 250 × 4.2218 + 100 × 4.4217 = 1,984.88バーツ
- サービス料: 24.62バーツ
- Ft: 500 × 0.1623 = 81.15バーツ
- VAT前: 2,090.65バーツ
- VAT 7%: 146.35バーツ
- 請求額: 約2,237.00バーツ
小規模法人の低圧通常料金は同じ段階単価ですが、サービス料は33.29バーツです。中圧では一律3.9086バーツ/kWh、サービス料312.24バーツなど、電圧と契約で変わります。店舗の採算を計算するときは、営業時間、空調、冷蔵・冷凍、厨房、看板、給湯を分けます。開業手続きと設備確認はタイの飲食店営業許可と開業ガイドで整理しています。
通常料金とTOUはどちらが安いか

TOU(Time of Use)は使用時間帯で電力量単価を分ける方式です。Peakは原則として月曜から金曜の09:00から22:00、Off-Peakは平日の22:00から翌09:00と、対象となる土日・祝日の終日です。振替休日は自動的にOff-Peakになるとは限らないため、電力会社のカレンダーを確認します。
家庭TOUで300kWhを使う例
低圧の家庭TOUはPeak 5.7982、Off-Peak 2.6369バーツ/kWhです。月300kWhのうちPeak 100kWh、Off-Peak 200kWhなら、FtとVATを含む概算は約1,263.15バーツです。先ほどの通常料金約1,277.41バーツとの差は約14.26バーツしかありません。
この条件ではTOUメーターの費用や契約条件を加えると、変更メリットが消える可能性があります。逆に夜間操業、休日操業、夜間のEV充電などでOff-Peak比率を高められる場合は差が広がります。
TOU変更前に必要なデータ
- 直近12カ月の使用kWh、請求額、最大需要電力
- 平日・休日、Peak・Off-Peakの使用量
- 空調、生産設備、冷凍機、コンプレッサー、EV充電の稼働時刻
- 季節、繁忙期、休日操業を含む将来の負荷
- メーター・工事費、変更後に通常料金へ戻せる時期
家庭・小規模事業者の選択制TOUは、選択後に通常料金へ戻す際、原則12カ月以上の利用が条件になる場合があります。1カ月の試算だけで変更しないことが重要です。
法人は需要料金・最低料金・力率まで見る
中規模以上の事業所では、使用kWhだけでなく最大15分需要に対する需要料金が大きくなります。月の総使用量が同じでも、大型空調、生産ライン、コンプレッサー、冷凍機、EV充電器を同時に起動すると、短時間のピークが請求へ残ります。
PEAの22から33kVの中規模TOUでは、需要料金132.93バーツ/kW、Peak 4.1839バーツ/kWh、Off-Peak 2.6037バーツ/kWh、サービス料312.24バーツです。また、最低料金は原則として過去12カ月の最大需要料金の70%を下回りません。設備を減らしても、過去の高いピークが一定期間コストへ残る場合があります。
100,000kWh、最大需要500kWの概算
Peak 60,000kWh、Off-Peak 40,000kWhなら、需要料金、サービス料、Ft、VATを含む概算は約468,862.49バーツです。同じ総使用量と最大需要でPeak 30%、Off-Peak 70%なら約418,138.07バーツとなり、単純差は月約50,724.42バーツです。
ただし、実際に生産を夜間へ移すと最大需要、残業、品質、保守、物流も変わります。「50,000バーツ安くなる」と断定せず、負荷データを新しい操業条件へ置き換えて再計算します。
モーターや変圧器の無効電力が条件を超える場合は、56.07バーツ/kVARの力率関連料金も確認します。コンデンサの故障、増設設備との不整合、軽負荷運転が原因なら、設備更新より小さな修繕で改善することがあります。
請求書監査で料金・数量・ピークを分ける

前年同月より請求額が上がったとき、すぐに「設備効率が悪化した」とは判断できません。原因を次の三つへ分けます。
料金要因
Ft、料金表、VAT、契約区分、賃貸人の再請求条件が変わった影響です。前年の使用量を固定して単価差だけを掛ければ、料金改定の影響を分離できます。
数量要因
暑さ、営業時間、生産量、客室稼働、在席人数が変わり、使用kWhが増えた影響です。工場なら生産数量当たりkWh、ホテルなら稼働客室当たりkWh、店舗なら営業時間や売上当たりkWhで比較します。総使用量が増えても原単位が改善していれば、効率悪化とは限りません。
ピーク要因
月間kWhが同じでも、設備の同時起動により最大需要が上がった影響です。ピークの発生日と時刻を、空調立ち上げ、ライン起動、除霜、コンプレッサー、充電器のログと照合します。月に一度のピークでも、需要料金と最低料金へ長く影響することがあります。
| 施設 | 原単位 | 最初に疑う設備・運用 |
|---|---|---|
| 工場 | 生産数量当たりkWh | コンプレッサー、モーター、同時起動、力率 |
| 飲食・小売 | 営業時間・売上当たりkWh | 空調、冷蔵・冷凍、扉、除霜、閉店後運転 |
| オフィス | 面積・在席人数当たりkWh | 空調時間、照明、サーバー室、休日運転 |
| ホテル・住宅 | 客室稼働・戸数当たりkWh | 給湯、共用部、サブメーター、再請求条件 |
法人が電気代を削減する4段階

1. 12カ月の請求書を一つの表にする
使用kWh、最大需要、力率、Ft、VAT、請求額を月別に並べます。生産量、売上、客室稼働、営業時間も重ね、料金改定と事業量の変化を分けます。
2. 契約区分・電圧・TOUを照合する
請求書の顧客区分と実際の需要を確認し、通常料金とTOUを12カ月で再計算します。新規拠点では、法人登記だけでなく電力契約者、保証金、物件オーナーとの責任分担も決めます。設立全体はタイで会社を設立する手順を参照してください。
3. 最大需要を運用で抑える
大型設備の起動をずらし、EV充電を夜間へ移し、不要設備を停止します。デマンド監視を導入する場合は、警報を出すだけでなく、誰がどの設備を止めるかまで決めます。社用車の導入では、タイのEV購入前チェックと充電器の需要電力を同時に確認します。
4. 高効率設備・太陽光・蓄電池を比較する
空調、冷凍機、コンプレッサー、モーター、変圧器の効率改善と、太陽光・蓄電池を同じ基準で比較します。投資額だけでなく、停止工事、保守、劣化、交換、保険、資金調達、撤去まで含めます。海外から設備を輸入する場合は、タイの通関に必要な書類も事前に確認します。
タイの太陽光発電:自家消費・売電・許認可

ERCは、設備容量1,000kVA未満の発電事業について免許免除の仕組みを設けています。しかし、免許免除は「申請も技術確認も不要」という意味ではありません。設備規模、建物用途、工場法上の扱い、売電の有無に応じて、ERCへの届出、MEA・PEAの系統連系、保護装置、建物・屋根の確認が残ります。
系統接続では、200kVA未満と200から1,000kVA未満で手順や書類が異なる場合があります。契約前に、パネルのkWpだけでなくインバーター等を含むkVA、電力契約者、屋根所有者、発電設備所有者を確認します。
自家消費と余剰売電は価値が違う
2026年の家庭向け余剰売電制度は、2.20バーツ/kWh、10年間、最大5kW ACです。購入電力を同額で相殺するネットメータリングではありません。日中に自家消費できれば、購入しなかった電力量料金、Ft、VAT相当を回避できるため、余剰売電より1kWhの価値が高くなる場合があります。
法人では、日中負荷と発電曲線を15分または30分単位で重ねます。休日に余剰が多い工場、昼間負荷が小さい倉庫、賃貸物件では、提案書の年間発電量だけを見ても回収期間を判断できません。
PPA契約で確認する項目
- 電力単価、最低購入量、単価の上昇条件
- 設備停止、出力抑制、屋根修繕時の費用負担
- 保険、火災、雨漏り、構造荷重、保守責任
- 物件売却、移転、契約譲渡、途中解約
- 契約終了時の設備帰属と撤去費用
- 環境価値を誰が保有し、誰がGHG削減を主張するか
太陽光設備では施工品質も重要です。太陽光パネルの火災リスクと全国調査の事例も踏まえ、ケーブル、コネクター、遮断器、接地、点検記録を確認してください。
太陽光だけでは停電対策にならない
一般的な系統連系型太陽光は、停電時に作業員と設備を守るため自動停止します。太陽が出ていても、通常の系統連系構成では工場や店舗へ給電できません。
BCPを目的にするなら、重要負荷を分け、必要な継続時間を決めたうえで、UPS、蓄電池、非常用発電機、自動切替盤を組み合わせます。サーバー、POS、冷凍設備、生産ラインでは、許容できる停電時間が異なります。「設備全体を何時間動かすか」ではなく、「どの回路を何分・何時間守るか」で設計します。
EV充電器や蓄電池を追加すると、通常時の最大需要、充電時間、消防・保険条件も変わります。省エネと停電対策を一つの回収率だけで評価せず、電気料金削減と事業継続の価値を分けます。
タイの電力・エネルギー関連ニュースと解説
個別ニュースは料金制度や設備リスクの一部です。次の記事を本解説の計算・契約構造と合わせて読むと、事業への影響を判断しやすくなります。
電気料金と燃料費は、為替や物流費を通じて同時に事業コストへ影響します。設備投資の輸入価格を見る場合は、2026年のバーツ高の理由と影響も併せて確認してください。
タイの電気料金でよくある質問
3.95バーツ/kWhを自社の予算単価に使えますか
そのままは使えません。3.95バーツは全国平均かつVAT前です。自社の直近12カ月について「VAT前請求額 ÷ 使用kWh」を計算し、需要料金、Ft、操業計画を分けて予算化してください。
Ftとは何ですか
燃料費、電力購入費などの変動を料金へ反映する調整項目です。基本料金そのものではなく、当期の総使用kWhへERCが決めたFtを掛けて加算します。2026年5月から12月は16.23サタン/kWhです。
タイで月300kWh使うと電気代はいくらですか
家庭1.2の現行単価、Ft 16.23サタン、VAT 7%なら約1,277.41バーツです。実際の請求は家庭1.1・1.2、TOU、再請求契約などで変わります。
TOUへ変更すれば必ず安くなりますか
いいえ。Peakの使用比率、最大需要、メーター費用、契約条件によります。少なくとも12カ月の時間帯別負荷で通常料金と比較してください。
法人の料金区分は会社の規模で決まりますか
資本金や従業員数ではなく、電圧、最大15分需要、使用量などで決まります。請求書の顧客区分と料金表を照合してください。
1,000kVA未満なら太陽光の申請は不要ですか
不要とは限りません。発電事業免許の免除対象でも、ERCへの届出、MEA・PEAの系統連系、建物・工場側の確認が残ります。
太陽光があれば停電時も電気を使えますか
一般的な系統連系型は停電時に停止します。停電中に給電するには、対応インバーター、蓄電池、切替装置、重要負荷分離などを設計します。
家庭の余剰電力はいくらで売れますか
2026年の対象制度は2.20バーツ/kWh、10年間、最大5kW ACです。対象条件と募集枠を管轄電力会社で確認してください。
公式情報・出典・更新履歴
- ERC: Ft小売価格の推移
- ERC: 2026年9月から12月のFt決定
- ERC: 現行の電気料金一覧
- PEA: 現行電気料金表
- PEA: 2026年5月から8月のFt
- ERC: 家庭向け太陽光の余剰電力買取
- ERC: 1,000kVA未満の発電事業免許免除
- ERC: Solar Rooftopの申請・接続資料
- PEA: 系統連系に関する規則
- MEA: 太陽光の系統容量確認
- Revenue Department: VAT関連法令
更新履歴: 2026年7月31日、9月から12月のFt決定、現行料金表、家庭・法人の計算例、TOU、太陽光の余剰売電条件を反映し、本文と画像を全面更新。
本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別契約の技術・法務・税務助言ではありません。料金区分、系統連系、許認可、VAT処理は、ERC、MEA・PEA、資格を持つ技術者および専門家へ確認してください。


