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ベトナムの法人税・VAT・会計実務|2026年の電子インボイスと申告

ベトナムの税務管理で重要なのは、税率を知ることより「取引、請求書、契約、会計、申告、送金」を同じ事実でつなぐことです。2025年10月に新しい法人税法が施行され、2026年7月1日には税務管理法108/2025/QH15と電子インボイス政令254/2026/ND-CPが施行されました。税率だけでなく、データ連携と証憑管理を前提に運用を組み直す必要があります。

日系企業では、日本本社とベトナム法人の契約、出向者費用、技術支援、ロイヤルティ、輸入価格、立替金が複数部門に分かれやすく、月次決算では合っていても税務証憑が不足することがあります。本稿では、法人税、VAT、電子インボイス、申告期限、移転価格、外国契約者税、会計決算を一つの年間運用として整理します。

先に結論

  • 法人税の標準税率は20%。一定の小規模企業には15%・17%の区分がありますが、適用除外と前期売上基準を確認します。
  • VATは0%・5%・10%が基本で、0%と非課税は仕入VATの扱いが異なります。
  • 2026年7月からの新税務管理法と電子インボイス規則に合わせ、販売・請求・申告データの接続が必要です。
  • 税務申告は月次・四半期・年次・都度発生で期限が異なり、申告カレンダーを会社別に作ります。
  • 損金算入は「事業関連性、適法な証憑、支払条件、価格妥当性」を一式で証明します。

2026年の税務制度で変わったこと

法人税法67/2025/QH15は2025年10月1日に施行され、税率区分、課税対象、優遇、損金、外国企業のベトナム源泉所得などを更新しました。さらに税務管理法108/2025/QH15は2026年7月1日に全面施行され、電子的な登録・申告・データ接続、納税者と税務当局の権利義務を再整理しました。

同日施行の政令252/2026/ND-CPは申告期限など税務管理法の実施を定め、政令254/2026/ND-CPは電子インボイス・電子証憑を定めています。2026年は年度途中で管理ルールが変わっているため、古い税務カレンダーや請求書マニュアルをそのまま使わず、7月以降の取引を再確認します。

法人税率は20%を起点に判断する

法人税の標準税率は20%です。2025年法では、前事業年度の総売上高が30億ドン以下の企業に15%、30億ドン超500億ドン以下の企業に17%の税率が設けられました。ただし、対象外所得、関係会社との関係、優遇との重複、会社・所得の要件を確認する必要があります。

区分 税率 実務確認
一般企業 20% 課税所得、損金、繰越欠損、優遇を確認
前期売上30億ドン以下 15% 適用対象・除外、前期売上の定義を確認
前期売上30億ドン超500億ドン以下 17% 適用対象・除外、関係会社条件を確認
資源開発など 別税率 事業・プロジェクト別の特則を確認

売上規模だけを見て15%・17%を予算へ入れず、現地税務専門家と適用条件を確認してください。外国投資企業、関連企業、優遇所得と通常所得が混在する場合は、事業別・所得別の計算が必要です。

課税所得と損金算入の基本

法人税は会計利益へ単純に20%を掛ける税金ではありません。会計上の収益・費用から、税法上の調整を行って課税所得を計算します。

費用を損金にするには、事業に関連し、適法な請求書・証憑があり、一定額以上の支払では非現金決済などの条件を満たす必要があります。具体的な基準は取引時点の法令で確認します。

調整が起きやすい費用

  • 減価償却、固定資産除却、建設仮勘定
  • 給与、賞与、手当、福利厚生、出向者費用
  • 引当金、貸倒れ、在庫評価、廃棄損
  • 親会社の管理費、技術支援、ロイヤルティ
  • 支払利息、為替差損益、関連者借入
  • 罰金、寄付、事業との関係が弱い支出

月次で「会計上の費用」と「税務上の損金見込み」を分け、年度末にまとめて証憑を探さない運用が必要です。

ベトナム税務の月次四半期年次カレンダー
取引発生から電子インボイス、会計、申告、年次決算までを同じカレンダーで管理します。

法人税優遇は投資許可と事業実態を合わせる

法人税優遇は、所在地、業種、技術、プロジェクト規模などの条件により、優遇税率と免税・減税期間が定められます。2025年法では、一定の製造プロジェクトが10%を15年間適用するための最低投資額が1兆2,000億ドンとされ、5年以内の投資実行などの条件が示されています。

優遇対象所得と通常所得を区分できなければ、優遇を正しく計算できません。投資登録証明、企業登録、土地・工場契約、会計部門別、固定資産、売上・原価の区分を一致させます。

優遇期間は、対象プロジェクトの最初の課税所得発生年から数える仕組みが基本で、最初の売上年から一定期間課税所得がない場合の起算特則があります。投資判断時の説明と実際の起算年を別管理せず、年度ごとに根拠を保存します。進出制度はベトナム進出・会社設立の実務も参照してください。

VATの0%・5%・10%と非課税

VATは、ベトナム国内で生産・販売・消費される多くの商品・サービスと輸入品に適用されます。基本税率は0%、5%、10%で、一般的な商品・サービスは10%、一定の政策対象は5%、輸出や国際運送など要件を満たす取引は0%です。

VAT 0%と非課税は同じではありません。0%取引は課税取引であり、要件を満たせば対応する仕入VATの控除・還付につながり得ます。非課税取引では、関連する仕入VATを控除できない場合があります。

輸出0%で確認する資料

  • 外国顧客との契約
  • 税関申告と輸出実績
  • 銀行送金など決済証憑
  • 電子インボイス
  • サービス輸出では提供場所・消費場所・顧客属性

契約上の「海外顧客」だけで0%にはなりません。役務がどこで提供・消費されるか、ベトナム国内の関係者へ便益があるかを取引別に判断します。

仕入VAT控除と還付を止めない

仕入VATの控除では、適法な電子インボイス、事業関連性、支払条件、申告内容の一致が重要です。サプライヤーの登録・請求書に問題がある場合、買手側の控除が否認されるリスクがあります。

仕入先マスターには、会社名、税コード、住所、銀行口座、請求権限、契約、検収を登録し、電子インボイス受領時に発注・納品・検収・支払と照合します。異常な請求書番号、取消・差替え、税率誤り、売手の活動状況を早期に確認します。

還付はキャッシュフローへ直結します。輸出企業や投資段階の企業は、還付申請時に初めて資料を集めず、月次で「控除可能」「要確認」「控除不可」を区分します。

2026年7月の電子インボイス対応

税務管理法108/2025/QH15と政令254/2026/ND-CPは、電子インボイス・電子証憑と税務データのデジタル管理を強化しました。販売システム、会計、電子署名、インボイスサービス、税務申告のマスターと時点を合わせる必要があります。

最低限確認する項目

  • どの取引時点でインボイスを発行するか
  • 税務当局コード付き・コードなしの対象
  • 取消、訂正、差替え、返品、値引きの処理
  • 外貨取引の為替レートとVND換算
  • 店舗・EC・複数チャネルの売上データ接続
  • 障害時の発行、データ送信、復旧記録

請求書発行担当だけに対応を任せると、売上認識、在庫払出し、VAT、入金がずれます。取引類型ごとに「契約・納品・検収・請求・売上・VAT」の基準日を決めます。

2026年7月以降の主な申告期限

政令252/2026/ND-CPに関する政府案内では、都度申告は原則として義務発生日の翌日から10日目、月次申告は翌月20日、四半期申告は翌四半期の最初の月の末日、年次申告は翌年または翌事業年度の最初の月の末日が期限です。税務確定申告は、原則として決算期間終了後3か月目の末日です。

ただし、税目、納税者区分、取引、休日、組織再編、解散、外国契約者、個人所得税などで期限が異なります。「毎月20日」だけのカレンダーにせず、税目ごとに法定期限、社内締切、承認者、支払日を管理します。

申告区分 法令上の基本期限 社内運用
都度発生 原則、義務発生日の翌日から10日目 契約・支払起票時に税務通知
月次 翌月20日 月初に請求書・銀行・在庫を締める
四半期 翌四半期最初の月の末日 対象判定と累計差異を確認
年次 翌年・翌事業年度最初の月の末日 固定情報と見込税額を先行確認
税務確定 決算終了後3か月目の末日 監査・法人税調整と同時進行
ベトナム税務の6点証憑照合
契約、納品、請求、会計、支払、申告が同じ取引事実を示す状態を作ります。

会計帳簿と法定財務諸表

ベトナム法人は、ベトナムの会計制度と適用する会計基準に従い、VNDを基本とする帳簿・証憑・財務諸表を整備します。日本本社向けの連結パッケージだけでは法定帳簿の代わりになりません。

勘定科目、会計年度、通貨、言語、電子帳簿、署名権限、証憑保存を会社設立時に決めます。ERPを日本本社と共用する場合も、ベトナムの勘定科目・税コード・電子インボイス番号・法定帳票を出力できるか確認します。

月次で売掛・買掛・銀行・固定資産・在庫・給与・税金を照合し、監査前に一括修正しない運用が必要です。工場では工業団地・製造拠点の契約、建設、設備の資産計上時点も税務へ影響します。

移転価格と関連者取引

日本本社・グループ会社との商品売買、技術支援、経営管理、ロイヤルティ、出向、貸付、保証は関連者取引として、独立企業間価格と事業上の便益を説明できる必要があります。

取引ごとに保存するもの

  • 契約と実際の役務内容
  • 価格決定方法と比較対象
  • 成果物、会議記録、工数、メール
  • 費用配賦キーと受益会社
  • 請求書、源泉税、送金許可資料
  • ローカルファイルなど法定文書

「本社ポリシーで一律3%」は説明になりません。ベトナム法人が何を受け取り、第三者ならいくら払うか、重複サービスや株主活動ではないかを示します。

外国契約者税と海外送金

外国法人・外国個人がベトナムから所得を得る取引では、外国契約者税としてVAT・法人税相当の源泉・申告が関係することがあります。役務、ライセンス、利息、機械据付、オンラインサービス、運送などで扱いが異なります。

契約書には、価格が税抜か税込か、税負担者、グロスアップ、納税証明の提供、恒久的施設、条約適用資料を入れます。支払直前に税務判断を始めると、相手への支払額や銀行書類が確定しません。

輸入価格と関連するロイヤルティ・技術料は税関価格にも影響し得ます。輸出入との接続はベトナムの輸出入・関税・通関実務を参照してください。

給与・出向者費用と個人所得税

駐在員の給与を日本とベトナムで分けて支払っても、ベトナムでの勤務に対応する所得、居住者判定、会社負担の住宅・学費・税金などを含めて判断します。法人税、個人所得税、社会保険、就労許可、親会社請求を別々に処理しないことが重要です。

出向契約、雇用契約、給与明細、会社間請求、銀行送金、個人所得税申告の金額と期間を一致させます。外国人の在留・就労手続きはベトナムの外国人就労許可・ビザ実務、現地従業員の給与・保険は最低賃金・採用・労務管理で確認できます。

月次税務クローズの作り方

  1. 売上・購買・在庫・銀行の期間を締める
  2. 電子インボイスと会計仕訳を照合する
  3. 未発行・未受領・取消・訂正を一覧化する
  4. 輸入申告と輸入VATを照合する
  5. 給与・個人所得税・保険を照合する
  6. 関連者取引と外国契約者支払を確認する
  7. 控除不可VAT・損金不算入候補を更新する
  8. 申告書を総勘定元帳と照合し、承認する

差異は翌月へ持ち越さず、「原因、金額、税目、修正方法、担当、期限」を記録します。税務調査時に、調整の履歴が会社の内部統制を示します。

よくある失敗

会計事務所へ渡せば税務責任も移ると考える

外部委託先は申告を支援しますが、契約・取引事実・承認・支払の情報は会社が管理します。申告前に経営者が主要差異を確認します。

電子インボイスだけあれば損金・VAT控除できると考える

事業関連性、契約、納品・検収、支払、売手の適法性なども必要です。請求書だけで証憑ファイルを完結させません。

日本本社の請求を自動的に費用化する

便益、価格、成果物、源泉税、送金資料を確認します。株主活動や重複サービスは否認リスクがあります。

税優遇を会社全体へ適用する

優遇対象プロジェクト・所得と通常所得を分けます。拡張投資や新事業の扱いも年度ごとに確認します。

年度末だけ税務調整する

請求書訂正や証憑回収が間に合わなくなります。月次で調整候補と見込税額を更新します。

年次税務チェックリスト

  • 適用法人税率と税優遇の根拠を更新したか
  • 売上・費用の期間帰属と電子インボイスが一致するか
  • 控除不可VATと損金不算入を区分したか
  • 固定資産、建設仮勘定、在庫、廃棄を実査したか
  • 関連者取引の契約・価格・成果物があるか
  • 外国契約者税と海外送金を照合したか
  • 輸入申告、税関価格、会計仕入が一致するか
  • 給与、個人所得税、社会保険、出向請求が一致するか
  • 欠損金、税額控除、還付、税務調査事項を繰り越したか
  • 法定財務諸表、監査、税務確定の工程を合わせたか

よくある質問

ベトナム法人税は一律20%ですか?

標準は20%ですが、一定の小規模企業には15%・17%、優遇対象プロジェクトには優遇税率・免減税、資源開発などには別税率があります。所得と会社の条件ごとに確認します。

輸出売上はすべてVAT 0%ですか?

いいえ。商品・サービスの種類、契約、税関、決済、提供・消費場所などの要件を満たす必要があります。0%と非課税も区別します。

月次申告と四半期申告は選べますか?

納税者・税目の要件で決まります。2026年7月施行の現行ルールで対象を判定し、会社別カレンダーへ反映してください。

日本本社への管理費は損金になりますか?

契約だけでなく、ベトナム法人が受けた具体的便益、価格の妥当性、成果物、源泉税・送金手続きを説明できる必要があります。

まとめ

ベトナムの税務は、法人税20%やVAT 10%を知るだけでは管理できません。電子インボイス、契約、会計、支払、輸入申告、給与、関連者取引を同じデータでつなぐことが、控除否認、追加課税、送金遅延を防ぐ基本です。

2026年7月に税務管理と電子インボイスの枠組みが更新されたため、申告カレンダー、請求書手順、マスター、権限、証憑保存を再点検してください。個別案件では、取引時点の法令と税務当局の運用を現地の資格ある専門家へ確認する必要があります。

関連ニュース・解説

参考・出典

本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の税務・会計・法務助言ではありません。取引時点の法令、税務当局の運用、会社固有の事実を資格ある専門家へ確認してください。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
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