ベトナム税務総局は、未納税者に対する渡航禁止措置について、納税が完了次第、リアルタイムで解除する新システムを導入すると発表しました。これにより、空港や国境での納税が可能となり、国民やビジネスへの影響が大幅に軽減される見込みです。VnExpressが報じたところによると、この制度は2025年の税務管理法に基づき具体化される予定です。
ベトナム、納税完了で即時渡航禁止解除へ
ベトナム税務総局のマイ・ソン副局長は5月22日の記者会見で、納税義務を完了していない人に対する一時的な渡航禁止命令について、画期的な変更を発表しました。これまでの規定では、渡航禁止解除には別途決定が必要でしたが、新システムでは納税後、システムがリアルタイムで確認し、即座に出国を許可するようになります。
空港や国境での納税も可能に
この新制度の導入に向けて、税務当局は出入国管理機関、国庫、銀行と連携を強化します。これにより、納税者は空港や国境で直接税金を納めることが可能になります。これにより、出国直前に未納税が判明した場合でも、その場で対応できるようになり、特にホーチミンやハノイといった主要都市の国際空港を利用するビジネスパーソンや観光客にとって、大きな利便性向上となるでしょう。
渡航禁止の対象者とその背景
現在の税務管理法では、以下の場合に渡航禁止措置が適用されます。
- 個人事業主、世帯主で5,000万ドン(約30万円)以上の税金滞納がある場合。
- 企業代表、企業主、協同組合で5億ドン(約300万円)以上の税金滞納があり、かつ120日以上延滞している場合。
- 海外に移住するが税金が未納の人。
- 登録住所で活動していない企業や事業主で税金滞納がある場合(現在のところ具体的な閾値なし)。
税務当局は、渡航禁止措置を適用する前に「警告プロセス」を実施しており、滞納発生から30日後には、電話、メール、ザロ(Zalo)などの多様な手段で納税者に通知しています。しかし、登録住所で活動していない企業や個人の場合、これらの通知が届かず、本人が知らない間に渡航禁止の対象となっているケースが多発しており、行政の公平性という観点から課題となっていました。
所在不明企業への対応強化
税務総局のデータによると、これまでに10万5,000人以上が渡航禁止の対象となり、その総額は61兆ドン(約3,660億円)以上に上ります。中でも約6万件は登録住所で活動していない納税者であり、総額約6兆9,000億ドン(約414億円)の滞納があります。この問題に対処するため、2025年の税務管理法指導政令草案では、登録住所で活動しておらず税金滞納がある場合の渡航禁止閾値を100万ドン(約6,000円)と明確に設定することが提案されています。これは、不正な事業活動を抑制し、健全な競争環境を確保するための措置であり、中小企業庁が推進するデジタル化による事業の「見える化」とも連動する動きと言えるでしょう。
ベトナム在住者・日系企業への影響
今回の制度変更は、ベトナムに在住する日本人や日系企業にとって、税務コンプライアンスの重要性を再認識させると同時に、実務上のリスクを軽減する効果が期待されます。特に、出張や帰国を頻繁に行うビジネスパーソンにとって、出国直前の予期せぬトラブルを回避できるメリットは大きいでしょう。しかし、登録住所で活動していない企業に対する取り締まりが強化されることで、コンプライアンス体制が不十分な企業はより一層の注意が必要です。行政機関との良好な関係構築・維持が、ベトナムでのビジネスを円滑に進める上で不可欠となります。
今回のベトナム税務総局の発表は、行政の効率化と透明性向上を目指す構造的な動きの一環と捉えられます。特に、滞納税金のリアルタイム処理や空港・国境での納税受付は、行政サービスにおける「利便性」を重視する方向性を示しており、これはベトナムが国際的なビジネス環境の改善を意識している証拠と言えるでしょう。これまでの行政手続きの煩雑さを解消し、国民や企業がよりスムーズに義務を履行できるような制度設計へと転換を図っている点が注目されます。
在住日本人や日系企業にとって、この新制度は渡航時の予期せぬトラブルを回避できるという実務上の大きなメリットをもたらします。一方で、登録住所で活動していない企業に対する取り締まり強化は、企業が税務上の義務を怠ることなく、常に最新の登録情報を維持することの重要性を示唆しています。ベトナムでの事業展開においては、税務当局からの通知を確実に受け取れる体制を整え、行政との良好な関係を維持することが、今後ますます重要となるでしょう。


