ハノイ市で進行中の大規模多目的都市開発プロジェクトにおいて、計画されている住宅の約40〜50%が再定住用として確保される方針が発表されました。これは、住民の生活安定と都市の持続可能な成長を両立させるための重要な施策であり、VnExpressの報道によると、ハノイ市人民委員会のブー・ダイ・タン委員長が現地視察でこの方針を改めて強調しました。
ハノイの「多目的都市」構想
6月1日、ハノイ市人民委員会のブー・ダイ・タン委員長は、トゥー・ラム、ドン・アイン、ティエン・ロック、フック・ティン、メー・リンといった地域で進められている多目的都市開発プロジェクトの現場を視察し、進捗状況の報告を受けました。ハノイ市は長年の都市管理と開発の経験から、住民の居住、生計、社会発展のニーズに応えるべく、包括的で現代的な新しい都市モデルの形成が不可欠であると認識しています。
このため、ハノイは都市開発と社会住宅、再定住、そして包括的な技術・社会インフラを組み合わせた「多目的都市モデル」を提案し、中央政府からも高い支持を得ています。これは、ベトナムがドイモイ(刷新)政策以降、社会主義的な土地公有制を維持しつつも、市場経済の導入により急速な都市化と経済成長を遂げる中で、住民の居住権と開発のバランスを取るための重要な戦略です。
再定住住宅の確保と住民支援
タン委員長によると、これらの多目的都市開発プロジェクトで供給される住宅の約40〜50%が、主要プロジェクトの再定住用として充当される予定です。特に、ハノイの都市再開発やインフラ整備に関連する大規模プロジェクトの住民が対象となります。高品質な再定住区画を早期に整備することは、将来の大規模プロジェクト実施において、住民の信頼と合意形成を促進する上で不可欠だと強調されました。
また、農地を収用された住民に対しては、各地方自治体が職業転換政策や長期的な雇用創出に引き続き注力するよう指示されています。ハノイ市は、工業団地や商業・サービスセンターを開発することで、プロジェクト地域内の住民に新たな雇用機会を提供し、持続可能な生計を支援する方針です。
順調な進捗と大規模プロジェクト
プロジェクトの進捗は非常に良好で、着工からわずか4ヶ月余りで、投資準備、計画策定、用地確保の面で多くの前向きな成果が見られます。これまでに160ヘクタール以上の用地が確保されており、関連部署や地方自治体の強い決意が示されています。タン委員長は、プロジェクトの期限内完了に向け、手続きの迅速化、特に技術・社会インフラ、再定住区画、社会住宅、教育施設、付帯サービスの一体的な整備を優先するよう求めました。
ハノイ市は2月2日に、以下の2つの大規模多目的都市開発プロジェクトを着工しています。
- 北タンロン・アーバンシティ(バク・タンロン・アーバンシティ):規模は約700ヘクタールで、環状3号線と3.5号線の間に位置し、タンロン橋と直接接続されます。プロジェクトは2032年までの完了を目指します。
- トゥー・ラムおよびドン・アイン多目的都市区:規模は約696ヘクタールで、ハノイ-タイグエン高速道路近くに位置します。2026年第1四半期から2029年第3四半期までの約4年間で実施される予定です。
都市の持続的成長と不動産市場
ハノイ市は、これらの都市開発をスマートシティおよび生態系都市モデルとして推進する一方で、土地価格と投資家の利益を適切な水準に管理し、住民が住宅にアクセスできるようにすることで、健全で持続可能な不動産市場の発展を確保するとしています。これは、急成長するベトナム経済における都市化の課題に対し、市民の生活の質を向上させながら、バランスの取れた発展を目指すものです。
今回のハノイ市の大規模都市開発は、ベトナムがドイモイ政策以降に直面する、急速な都市化と社会主義的土地制度の矛盾を解消しようとする動きと読み解けます。土地は国家の所有と定められているため、開発には住民の立ち退きと再定住が不可避ですが、その際に住民の生活を保障し、合意を形成するための「質の高い再定住住宅」の確保は、社会の安定と開発の円滑化に極めて重要です。
この大規模なインフラ投資と住宅供給は、ハノイ在住の日本人や日系企業にとっても注目すべき動向です。特に、北タンロン・アーバンシティのような広大な開発区は、将来的な通勤経路や住環境に大きな影響を与え、新たなビジネス機会や投資先を創出する可能性があります。ハノイの都市交通網の改善や、郊外エリアの生活利便性向上は、在住者の生活の質を大きく変えることにも繋がるでしょう。


