世界の債務が記録的な353兆ドル近くに達し、国際経済の安定性に懸念が広がっています。国際金融協会(IIF)の最新報告によると、これは世界GDPの305%に相当し、米国政府の借り入れと中国国有企業の活動が主な要因とされています。VnExpressが報じたこのデータは、グローバルな財政健全性への課題を浮き彫りにしています。
グローバル債務の現状と加速する増加
ワシントンD.C.に拠点を置く国際金融協会(IIF)の最新報告書によると、世界の総債務は現在、世界GDPの305%に相当する約353兆ドルに達しており、2023年以降ほぼ横ばいで推移しています。IIFは、この債務を政府、企業、家計、金融セクターの負債として計算しており、債券や融資など様々な形態が含まれます。
2023年以降、ノルウェー、クウェート、中国、バーレーン、サウジアラビアといった国々で債務がGDP比で30ポイント以上急増しました。全体的な傾向としては、先進国経済では債務規模が減少している一方で、新興市場では着実に増加しています。
米中が牽引する債務拡大と新興市場の動向
2026年第1四半期は、世界の債務が5四半期連続で増加した期間となり、その増加額は4.4兆ドルと、2025年半ば以降で最も速いペースでした。この主な要因は、米国政府の借り入れ活動の活発化にあります。また、同時期には中国の国有企業による借り入れも、同国政府のペースをはるかに上回る速度で拡大しました。
この二大経済圏を除くと、先進市場の債務はわずかに減少しましたが、中国を除く新興市場の債務は政府の借り入れを主因として、過去最高の36.8兆ドルへと穏やかに増加しました。
国際投資家の米国債離れと将来の財政リスク
今年初頭、米国債の需要は安定していましたが、日本国債と欧州国債の需要は増加しました。IIFのグローバル市場・政策担当ディレクターであるエムレ・ティフティック氏は、「これは国際投資家が米国債から多様化を図っている動きを示唆している」と指摘しています。
ティフティック氏によると、現在、30兆ドル規模の米国債市場に「差し迫ったリスクはない」ものの、長期的な予測では同国の公的債務が「持続不可能な軌道」をたどると見ています。一方で、ユーロ圏と日本の債務比率は徐々に減少する傾向にあります。
米国経済の活況と構造的圧力
IIFは、現在の政策の下では、米国のGDPに対する債務比率が上昇し続けると予測しています。また、AI関連の債券発行と強力な海外からの資金流入により、同国の社債市場も活況を呈しています。
グローバル全体の見通しとして、IIFは、高齢化する人口、国防費の増加、エネルギー安全保障やサイバーセキュリティの確保、AI関連の設備投資といった構造的な圧力が、中長期的に各国政府や企業の債務を押し上げると見ています。ティフティック氏は、「最近の中東紛争は、これらの圧力の一部をさらに増大させるだろう」と述べています。
今回のIIFの報告書は、世界経済が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。特に、高齢化社会の進展による社会保障費の増加や、地政学的リスクの高まりに伴う国防費の拡大は、各国政府の財政に長期的な重圧をかけ続けています。米国や中国といった主要経済大国の債務増加は、世界全体の金融市場の安定性に影響を及ぼしかねず、国際的な協力と財政規律の重要性が改めて問われる状況と言えるでしょう。
これらのマクロ経済の動向は、ベトナムを含む新興国市場にも影響を与え、日系企業の海外事業展開や在住者の資産形成といったミクロな視点にも間接的に波及します。国際的な投資家が米国債から多様化を図る動きは、グローバルな資金の流れの変化を示唆しており、各国の中央銀行や政府がどのような政策対応を取るのか、その動向は今後も注視されるべき重要なポイントとなります。


