タイの中小企業(SME)の約80%が、資金繰りの悪化により半年以内に事業継続が困難となる深刻な危機に直面しています。中東情勢に起因するエネルギーコストと輸送費の高騰が主因で、SME信頼感指数は5ヶ月ぶりに悪化しました。Khaosodが報じたところによると、タイ政府の中小企業振興事務所(SSME)は、緊急支援策として追加のプロジェクトを準備しています。
バンコクを含むタイ全土でSME信頼感指数が急落
タイの中小企業振興事務所(SSME)のパニタ・チナワット副所長代理兼所長代理は、2026年3月のSME企業家信頼感指数(SMESI)が前月比で低下し、基準値50.0を下回る48.2を記録したと発表しました。これは過去5ヶ月で初めての低下であり、タイ経済の現状に対する中小企業の懸念が浮き彫りになっています。
中東情勢が引き起こす「二重の圧力」
信頼感指数低下の主な原因は、中東情勢の緊迫化による「二重の圧力」です。エネルギーコストと輸送費の急騰が中小企業の経営を直撃しており、特に利益面では指数が47.7に、コスト面では37.3(5.2ポイント減)にそれぞれ低下しました。これは、費用負担の増大が著しいことを示しており、結果として受注量の減少(6.4ポイント減)や生産量の縮小(1.8ポイント減)にも繋がっています。
SSMEの調査によると、SMEの実に96.7%が中東情勢の影響を受けていると回答しています。主な影響は、エネルギー、輸送、原材料費のコスト増加(47.1%)、次いで購買力の低下(26.2%)、流動性不足(19.1%)となっています。労働力に関する信頼感指数は49.2とわずかな低下に留まっており、多くの企業が既存の従業員を維持しようと努力していることが伺えます。
8割以上のSMEが半年以内に事業継続困難
最も懸念されるのは、現在の状況が長期化した場合の見通しです。タイ国内に約322万社あるSMEのうち、80%以上が「運転資金の余裕がなく、6ヶ月以内に事業継続が困難になる」と回答しています。このうち、さらに20%の企業は3ヶ月以内に資金が底をつくと予測しており、バンコクを含むタイ全土のSMEにとって極めて厳しい状況が迫っています。
SMEが緊急に求めている支援は、コスト削減(44%)が最も多く、次いでSMEの適応能力強化(42%)、流動性の供給(14%)が挙げられています。これは、政府による財政支出拡大やサプライチェーン強靱化といった政策が喫緊の課題であることを示唆しています。
SSMEによる緊急対策と今後の展望
今後3ヶ月間の信頼感指数予測も49.3に低下しており、中小企業は先行きに対して依然として強い懸念を抱いています。特にコストの不確実性が、タイ経済全体に大きな圧力を与える可能性があります。
こうした状況を受け、SSMEは2026年のSME振興アクションプランに、39以上の追加プロジェクトを盛り込み、中小企業振興委員会(ボード)に提案する準備を進めています。これらのプロジェクトは、現在のビジネス課題を解決し、全国のSMEの強靭性を高めることを目的としています。
今回のSME信頼感指数の低下は、タイ経済が抱える構造的な脆弱性を露呈しています。中東情勢という外部要因が、エネルギー輸入依存度の高いタイ経済に直接的な打撃を与え、燃料費高騰が輸送・原材料コスト増として中小企業の経営を圧迫しています。サプライチェーンの強靭化やエネルギー多様化といった長期的な視点での政策が不可欠であり、政府の通商戦略2025(案)で示される海外展開支援なども、国内基盤強化と並行して進める必要があるでしょう。
SMEの苦境は、タイの雇用環境悪化や物価上昇に繋がり、バンコクをはじめとする都市部の在住日本人や日系企業の事業活動にも影響を及ぼす可能性があります。特に、消費者購買力の低下は内需に依存するビジネスにとって大きな打撃となり、経済全体への波及効果が懸念されます。SME支援策の具体化と迅速な実行が、タイ経済の安定に不可欠な要素となるでしょう。


