タイ財務省は、2025会計年度の最初の7ヶ月間(2025年10月~2026年4月)において、政府の純歳入が目標を313億バーツ(約1565億円)上回ったと発表しました。しかし、財政赤字を補填するための借入額は7191億バーツ(約3兆5955億円)に達し、前年同期比で4%増加していることがプラチャーチャート・トゥラキットの報道で明らかになりました。
タイ政府、7ヶ月間の歳入が目標を上回る
タイ財務省が発表した報告書によると、2025会計年度の最初の7ヶ月間(2025年10月~2026年4月)における政府の純歳入は、合計1兆5063億6000万バーツ(約7兆5318億円)に達しました。これは当初の目標を313億1400万バーツ(約1565億円)、2.1%上回る結果です。さらに、前年同期と比較しても5.4%増加しており、タイ経済の堅調な回復を示唆しています。
歳入増加の背景と要因
歳入が目標を上回った主な要因として、財務省は以下の3点を挙げています。第一に、国内からの付加価値税(VAT)の徴収が好調であったこと。これは、個人消費や企業活動の活発化が背景にあると考えられます。第二に、政府系投資ファンドであるワユパック・ファンド1(Vayupak Fund 1)からの配当金が増加したことです。これは、一部の国営企業の業績が改善したことによるものであり、政府の財源に大きく貢献しました。第三に、財政赤字を補填するための借入に伴う債券売却益の超過分が歳入として計上されたことが挙げられます。
一方で、国税局による税還付額が予想を131億9300万バーツ(約660億円)、5.6%上回る結果となりました。これは、法人所得税還付プロセスの迅速化・効率化が図られたためであり、企業への流動性供給を促す目的があったとされています。
財政赤字補填のための借入が増加
歳入が目標を上回った一方で、政府の財政支出も拡大しています。現金ベースでの財政状況を見ると、7ヶ月間の政府の歳入総額は1兆5006億2600万バーツ(約7兆5031億円)であったのに対し、予算支出総額は2兆5472億7900万バーツ(約12兆7364億円)に達しました。これにより、財政赤字を補填するために、政府は7191億2900万バーツ(約3兆5956億円)を借り入れています。この借入額は、前年同期比で273億7600万バーツ(約1369億円)増加しており、増加率は4%に上ります。
この傾向は、IMFが指摘する「経済成長、債務の持続可能性、社会保護のバランス」を維持する上で、タイ政府が直面する課題を示しています。政府は、失業・年金と国債費支出をカバーするために構造的に支出を拡大する傾向にあり、財政赤字の拡大は中長期的な財政の持続可能性に影響を与える可能性があります。
国庫残高の現状と財政の持続可能性
2026年4月末時点の国庫残高は、2868億4600万バーツ(約1兆4342億円)でした。これは前年同期と比較して347億2100万バーツ(約1736億円)、13.8%増加しています。国庫残高の増加は一見ポジティブな兆候に見えますが、借入による赤字補填が同時に増加していることを考慮すると、その健全性には継続的な監視が必要です。タイ政府は、今後も経済成長を維持しつつ、財政の健全化を図るための政策運営が求められます。
今回のタイ政府の歳入報告は、経済活動の回復に伴う税収増という明るい側面と、財政赤字補填のための借入増加という構造的な課題を同時に浮き彫りにしています。IMFの報告書が指摘するように、優れた財政政策は経済成長、債務の持続可能性、社会保護の間のバランスを達成するものです。タイにおいては、付加価値税の好調や国営企業の業績改善が歳入を押し上げた一方で、政府の支出拡大傾向が財政赤字を構造的に拡大させている可能性があり、中長期的な財政の持続可能性が注目されます。特に、大規模なインフラ投資や社会保障費の増加が続く中で、財政規律の維持は重要な課題となるでしょう。
在住日本人や日系企業にとって、タイの財政状況は事業環境に直結する重要な要素です。政府の借入増加は、将来的な増税や公共サービスの費用負担増につながる可能性も孕んでいます。また、政府支出の増大がインフレを加速させる可能性も考慮に入れる必要があります。企業としては、タイ政府の財政政策や経済動向を注視し、事業計画や投資戦略においてリスクヘッジを講じることが賢明です。タイの経済はASEAN地域の中でも重要な位置を占めており、その財政の安定性は、地域全体の経済にも影響を与えることになります。


