ベトナムの農業大手ホアン・アイン・ザー・ライ(HAGL)は、2万ヘクタール規模のコーヒー栽培プロジェクトについて、株主総会で資金調達に自信を示しました。株主からの懸念に対し、ドアン・グエン・ドゥック会長は、資金よりも適切な土地の確保が重要であると説明しており、VnExpressが報じています。
大規模コーヒープロジェクトの資金調達戦略
HAGLの株主総会では、大規模な2万ヘクタールのコーヒー栽培プロジェクトに対する資金調達能力について、多くの株主から懸念が表明されました。これに対し、ドアン・グエン・ドゥック会長は、資金調達そのものよりも、適切な土地の確保がプロジェクト成功の鍵であると強調しました。特にアラビカ種のコーヒーは標高700メートル以上の地域が栽培に適しており、「資金があっても土地がなければプロジェクトは進められない」と説明しています。
HAGLは、この条件を満たすラオスのボラベン高原(平均標高約1,200メートル)を選定し、すでに計画総面積の約85%にあたる土地を確保しました。資金調達については、社内留保利益、子会社の新規株式公開(IPO)、親会社からの資金調達の3本柱で自主的に対応できると評価しています。2026年には約5兆ドン(約300億円)を投資に充て、総プロジェクト資金として3年間で14兆ドン(約840億円)以上を投じる計画です。また、再投資を優先するため、配当は1株あたり500ドンに抑える方針です。
財務状況の改善と利益目標
2025年のHAGLの税引後利益は約2兆2,430億ドン(約134億5,800万円)に達する見込みで、主にバナナとドリアンの事業が貢献しています。養豚事業はほぼ停止し、他のいくつかの投資はまだ効果が出ていません。2026年には4兆2,000億ドン(約252億円)の利益目標を掲げていますが、ドゥック会長は、その内訳を正確に分析する必要があると述べています。
具体的には、この利益の大部分は、債務買い取り会社との義務処理後の1兆ドン(約60億円)を超える金融利益、および資産売却による1兆〜2兆ドン(約60億〜120億円)の利益が占める見込みです。そのため、利益計画全体を生産・事業活動によるものと見なすのは正確ではないとされています。コア事業からの貢献は約半分を占め、バナナ、ドリアン、コーヒー、養豚の4つの主要分野が牽引役となります。コーヒーとドリアンはまだ本格的な収穫期に入っていないため、今後数年間で大きな成長の余地があると見られています。
子会社IPOによる資金確保と戦略
HAGLは、子会社のIPOを通じて資金調達計画を積極的に推進しています。特に、ラオスでのプロジェクトを管理するホアン・アイン・ザー・ライ国際投資株式会社は、コーヒープロジェクトの主要な資金源と位置付けられており、過去3〜4年間で安定した利益を維持し、今年は最低4,000億ドン(約24億円)の目標を設定しています。
ホアン・アイン・ザー・ライの子会社のIPO申請書類はほぼ完成しており、市場状況が好調であれば第2四半期にも実施される可能性があります。IPO後、HAGLは20〜25%の株式を売却する予定ですが、支配権は維持します。ドゥック会長は、これは財務の3本柱の中で「極めて重要な資金源」であると強調しました。さらに、2029年には、2万ヘクタールのコーヒー農園が稼働を開始し、投資段階が完了した後、コーヒー総公社(旧ロ・パン社)のIPOも計画しており、市場投入前に価値を最大化することを目指しています。
財務基盤の強化と市場の信頼回復
HAGLの財務指標は、再編プロセスを経て大幅に改善しました。自己資本に対する負債比率は約0.86倍、総資産に対する負債比率は0.46倍、借入金対自己資本比率は0.56倍に低下しています。総負債額も約36兆ドンから2025年末には約7兆9,000億ドン(約474億円)に大幅に削減され、累積損失は解消され、2026年初頭にはすべての社債義務が完済されました。
この強固な財務基盤を背景に、HAGLは今年、売上高8兆6,240億ドン(約5,174億円)、税引後利益4兆2,020億ドン(約252億円)を目標としており、達成すれば過去最高の業績となります。しかし、ドゥック会長は、企業の活動は大幅に改善されたものの、市場の信頼を取り戻すにはまだ時間が必要であると考えています。10年以上にわたる再編で得た教訓に基づき、現在は財務規律の維持と慎重な投資を優先する方針です。
ベトナム企業による大規模農業投資は、KPMG Insightや国際貿易投資研究所の指摘する「新興投資国」としてのベトナムの存在感を象徴しています。HAGLのケースは、自国だけでなくラオスのような周辺国にも目を向け、広大な土地と有利な気候条件を活かした大規模農業を推進することで、経済成長の新たな柱を築こうとするベトナム企業の戦略的な動きを明確に示しています。
このHAGLの動きは、ベトナム経済、特に農業セクターにおける日本の投資家や企業にとって、新たなビジネスチャンスを示唆しています。大規模なコーヒー栽培プロジェクトは、サプライチェーンの多様化や高品質な農産物の安定供給に貢献する可能性があり、また、ベトナム企業が周辺国に投資を拡大するトレンドは、日本の企業が東南アジア地域全体での事業展開を検討する上での参考となるでしょう。


