ベトナムで外国人が働くための確認は、「入国できるか」「滞在できるか」「その会社・場所・職務で働けるか」の3つに分けます。ビザや一時滞在許可証があっても、就労許可または免除確認がなければ働けるとは限りません。逆に労働許可証だけでも、入国・滞在資格が自動的に整うわけではありません。
2025年8月7日施行の政令219/2025/ND-CPは、外国人労働者の労働許可、再発行、延長、取消、免除確認の制度を更新し、旧政令152/2020とその改正部分を置き換えました。本稿では、日系企業の駐在員、専門家、管理者、技術者を想定し、採用決定から入国、就労、更新、帰任までの実務を整理します。
先に結論
- 業務開始前に、労働許可が必要か、免除確認が必要か、届出のみかを職務と派遣形態から判定します。
- 政令219では、外国人雇用需要の説明と労働許可申請を統合した様式03が使われます。
- 申請主体・所管は原則として就労地を管轄する省級人民委員会または権限委譲先です。
- 旅券、職務、雇用主、就労地が変わる場合、既存許可をそのまま使えると判断しません。
- 申請処理日数だけで赴任日を決めず、認証、翻訳、健康診断、犯罪経歴、ビザ・滞在手続きを含めて逆算します。
2025年政令219で制度を再確認する
政令219/2025/ND-CPは2025年8月7日に公布・即日施行され、外国人労働者の許可と免除確認に関する手続きを再編しました。旧政令152/2020/ND-CPと70/2023/ND-CPの該当部分は失効しています。
実務上の重要点は、雇用主による外国人雇用需要の説明と許可申請を一体化したこと、所管を省級人民委員会とし、地方政府が内務局、工業団地・輸出加工区・ハイテク区の管理委員会などへ権限を委譲できることです。
そのため、全国共通の政令だけで窓口・手数料・提出方法を決めず、実際の就労地の行政手続きポータルで確認します。複数省で働く場合は、本店所在地や就労場所の扱いを事前に照会します。
ビザ・滞在・労働許可を分ける
| 制度 | 確認すること | 主な担当 |
|---|---|---|
| 入国 | 入国目的、ビザ、招聘、旅券有効期間 | 入管・招聘主体 |
| 滞在 | 滞在期限、一時滞在許可、住所登録 | 入管・居住地管理 |
| 就労 | 雇用主、職務、形態、就労地、許可・免除 | 省級人民委員会・委譲先 |
| 雇用・税務 | 契約、給与、個人所得税、保険 | 会社・税務・社会保険 |
商談、会議、調査で入国した人が、現場指揮、機械据付、従業員教育、顧客対応を始めると「働く」行為に該当する可能性があります。入国目的ではなく、実際に何をするかで就労手続きを判定します。
最初に就労形態を確定する
許可申請の前に、本人がどの法的形態でベトナムで働くかを決めます。典型例は次のとおりです。
- ベトナム法人との労働契約
- 企業内転勤
- 日本企業からベトナム企業への出向・派遣
- サービス契約の履行
- 外国企業の駐在員事務所・支店での勤務
- 経営者・出資者としての活動
日本側の人事辞令だけで決めず、ベトナム法人が誰へ業務指示を出し、給与・費用を誰が負担し、どの契約に基づいて働くかを一致させます。企業内転勤では、海外雇用主での継続勤務期間を証明する資料が必要になる場合があります。

労働許可が必要な主な職位
外国人労働者は、管理者、業務執行者、専門家、技術労働者などの区分で要件を示します。肩書だけでなく、学歴、訓練、経験、予定職務との関連を証明する必要があります。
「General Manager」「Advisor」「Engineer」と名刺に書くだけでは足りません。申請職位、雇用契約、組織図、職務記述書、学位・資格、在職証明の内容をそろえます。
職位証明で確認する点
- 職務記述と学位・専門分野が関連しているか
- 経験年数を日付入りで証明できるか
- 証明書の発行主体と署名者に権限があるか
- 会社名変更・合併・転籍の履歴を説明できるか
- ベトナム語翻訳後も職務名が一貫しているか
現地採用と駐在では、同じ本人でも証明すべき就労形態が異なります。職位要件を満たすように事実を作るのではなく、実際の職務を正確に示します。
免除は「何もしなくてよい」ではない
労働許可の対象外・免除に該当する外国人でも、免除確認書の取得や事前・事後の届出が必要になる場合があります。政令219の対象には、一定の出資者・会社役員、企業内転勤、国際協定、学生・研修、ボランティア、特定分野の専門家など複数類型があります。
「短期だから免除」「株主だから免除」と一括判断せず、出資額、役職、滞在日数、入国回数、契約、業種、職務を条文と照合します。免除確認の有効期間中でも、旅券、国籍、就労地、雇用主名などが変われば、再発行・変更手続きの要否を確認します。
国家公共サービスポータルの現行手続きでは、免除確認の申請に、申請書、旅券、写真、健康診断、該当類型を証明する書類などが求められるケースがあります。類型によって必要書類が異なるため、共通チェックリストだけで提出しません。
労働許可申請の基本書類
政令219に基づく一般的な申請では、雇用主の様式03、旅券、写真、健康診断、犯罪経歴証明、職位・就労形態を証明する書類などを準備します。既存許可がある特殊ケースでは、旧雇用主の確認や既存許可の写しが関係します。
書類管理表に入れる項目
- 原本・写しの別
- 発行国・発行機関
- 発行日と有効期限
- 領事認証・合法化の要否
- ベトナム語翻訳・公証の要否
- 氏名・旅券番号・会社名の表記
- 提出先と返却の有無
外国発行書類は、条約・相互承認・免除の有無で認証方法が変わります。日本で取得してからベトナムで使える形にするまでの時間を、赴任スケジュールへ入れます。
申請から許可までの処理期間
国家公共サービスポータルの政令219対応手続きでは、外国人雇用需要を承認して労働許可を発行する場合、適法な書類の受理から10営業日と案内される例があります。不承認・不発行の回答は3営業日、更新は10営業日、再発行は3営業日とする手続きもあります。
これは行政の処理時間であり、全体の準備期間ではありません。実際には、職務設計、採用判断、犯罪経歴、健康診断、認証、翻訳、追加説明、ビザ・滞在手続きが先後します。
地方により窓口・手数料・オンライン対応・権限委譲が異なるため、予定就労地の最新ページを確認します。工業団地の場合は、管理委員会が窓口になるかも確認してください。
赴任スケジュールは逆算する
- 予定職務、就労地、雇用主、開始日を確定する
- 許可・免除・届出の類型を判定する
- 日本・第三国で取得する書類を洗い出す
- 認証、翻訳、健康診断、写真を完了する
- 労働許可または免除確認を申請する
- 入国・滞在資格、住所登録を整える
- 雇用契約、給与、税務、保険を開始する
設備据付や量産立上げでは、技術者の入国日がプロジェクト全体へ影響します。設備搬入と同時に申請を始めるのでは遅いため、工場・工業団地の選定段階で必要人数と職務を決めます。

許可期間と雇用契約
労働許可・免除確認の期間は、旅券、労働契約、派遣・サービス契約、プロジェクト、駐在員事務所など根拠となる期間を超えて設定できません。最長期間だけを前提にせず、最も短い根拠書類を確認します。
労働契約で働く場合、許可後に契約を締結・整備し、申請職務、給与、勤務地、期間を一致させます。日本語・英語の出向契約とベトナム語の労働契約で、雇用主や指揮命令が矛盾しないようにします。
更新は有効期限直前に始めず、社内では6か月前に対象者を抽出し、3か月前までに職務・旅券・契約変更を確定する運用が現実的です。実際の法定申請期間は最新手続きで確認します。
変更・再発行・新規申請の判断
氏名、国籍、旅券番号、雇用主名、就労地の変更や、許可証の紛失・破損では再発行の対象になり得ます。一方、雇用主、職位、職務形態が実質的に変わる場合、新規許可が必要になる可能性があります。
組織再編、会社名変更、本店移転、工場追加、昇進、兼務の前に、人事・法務が労働許可への影響を確認します。登記変更を先に済ませ、許可証上の情報が古いまま働かせないようにします。
会社設立・組織変更との関係はベトナム進出・会社設立の実務で確認できます。
複数拠点・出張・兼務の扱い
ハノイ本社で雇用し、ハイフォン工場やホーチミン支店へ定期的に出張する場合、申請上の就労地と実態を合わせる必要があります。顧客工場で据付・保守をする技術者も、サービス契約の場所と期間を確認します。
複数省で勤務するケースでは、政令219と地方の権限委譲に基づく提出先を照会し、出張記録、作業指示、顧客契約を保存します。「短い訪問だから勤務場所ではない」と自社判断しません。
給与・税務・社会保険を接続する
労働許可申請に記載した雇用主・職務と、給与支払、個人所得税、社会保険、会社間請求を一致させます。日本給与とベトナム給与がある場合も、ベトナムでの勤務に対応する所得を一つの台帳で管理します。
出向者費用を日本本社が請求する場合、サービス料、給与立替、出向費用のどれかを契約・会計・税務で明確にします。法人税・外国契約者税・個人所得税との接続はベトナムの法人税・VAT・会計実務を参照してください。
現地従業員を含む給与・社会保険・労務制度はベトナムの最低賃金・採用・労務管理で整理しています。
帰任・退職・許可取消
外国人が退職・帰任した場合、労働許可・免除確認の取消、滞在資格、住所登録、個人所得税確定、社会保険、銀行口座、会社資産返却を一つの退職チェックリストで処理します。
- 最終勤務日と契約終了日
- 労働許可・免除確認の返却・取消
- ビザ・一時滞在許可の変更・取消
- 個人所得税の最終申告と納税
- 給与、賞与、未払費用、立替の精算
- 住居、携帯、車両、会社印・署名権限の終了
法定代表者や銀行署名者が帰任する場合は、企業登録、投資登録、銀行、電子署名、税務ポータルの権限変更も必要です。
外国人就労台帳の作り方
人事台帳には、氏名・旅券だけでなく、雇用主、職務、就労形態、就労地、許可類型、許可番号、有効期限、ビザ・滞在期限、住所登録、契約、税務番号、保険を入れます。
期限通知は人事担当者のカレンダーだけに置かず、90日・60日・30日前に人事責任者、本人、法務、直属上司へ通知します。申請中、追加書類待ち、許可済み、入国済み、就労開始済みを別ステータスで管理します。
よくある失敗
ビザがあれば働けると考える
入国・滞在資格と就労資格は別です。実際の職務に労働許可・免除確認が必要かを確認します。
短期出張ならすべて免除と考える
期間だけでなく、職務、回数、契約、役割で判断します。免除確認や届出が必要な場合があります。
肩書を専門家にすれば申請できると考える
学歴・経験と予定職務の関連を証明します。社内肩書と実務が異なる申請は更新・検査で問題になります。
許可取得後の変更を放置する
旅券、職位、勤務地、雇用主、会社名の変更時に再発行・新規申請の要否を確認します。
帰任時に許可・税務を閉じない
許可取消、滞在、個人所得税、署名権限を退職工程へ入れます。
赴任前チェックリスト
- 実際の職務、就労形態、雇用主、就労地を確定したか
- 労働許可、免除確認、届出のどれが必要か確認したか
- 職位と学歴・経験の関連を証明できるか
- 旅券、犯罪経歴、健康診断、写真を準備したか
- 外国書類の認証、翻訳、公証を確認したか
- 地方の提出先、オンライン方法、手数料を確認したか
- 入国・滞在手続きと許可工程を接続したか
- 雇用・出向契約、給与、税務、保険が一致するか
- 複数拠点・顧客現場での作業を申請へ反映したか
- 更新・帰任の期限管理責任者を決めたか
よくある質問
出資者なら労働許可は不要ですか?
出資額、会社形態、役職などの条件で扱いが異なります。免除に該当しても、確認書や届出が必要な場合があるため、政令219の該当類型を確認してください。
労働許可の取得には何日かかりますか?
現行の公共サービス案内では、適法な書類受理後10営業日とする許可手続きがあります。ただし、書類取得・認証・翻訳・追加説明・入国滞在手続きを含む全体期間はさらに長くなります。
日本本社の社員が機械据付だけ行う場合も必要ですか?
期間、契約、職務、免除類型を確認します。短期であることだけでは判断できず、免除確認や届出が必要な可能性があります。
勤務地が変わったら同じ許可を使えますか?
再発行・変更・新規申請のどれが必要か、変更内容と就労地の所管で判断します。異動前に地方当局へ確認してください。
まとめ
ベトナムの外国人就労では、ビザ、滞在、労働許可を一つの書類と考えないことが出発点です。実際の職務、雇用主、派遣形態、就労地を確定し、許可・免除確認・届出のルートを選びます。
政令219によって手続きと所管が更新され、地方で権限委譲も行われています。赴任日から逆算し、日本での書類取得、認証、翻訳、許可、入国、滞在、税務・保険まで一つの工程表で管理してください。個別案件では、提出時点の法令と就労地の行政手続きを必ず確認する必要があります。
関連ニュース・解説
参考・出典
- ベトナム政府:政令219/2025/ND-CP
- ベトナム政府:外国人労働者に関する政令219全文案内
- 国家公共サービスポータル:労働許可の発給手続き
- 国家公共サービスポータル:労働許可免除確認
- 国家公共サービスポータル:労働許可の更新
- ベトナム政府法令ポータル:労働法45/2019/QH14
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の法務・入管・労務助言ではありません。職務、就労地、申請時点の最新法令と所管当局の運用を確認してください。


