中国・甘粛省の羊飼い求人に700名超が殺到しました。大学新卒者から上海や重慶のような大都市のオフィスワーカーまで幅広い層が応募し、中国の厳しい労働市場の現状を浮き彫りにしています。この異例の応募殺到はVnExpressが報じ、SNSで大きな反響を呼んでいます。
過酷な労働環境と「996」文化
求人への応募はわずか数時間で5,900万回の閲覧と21,000件の議論を巻き起こし、中国の労働市場が抱える深刻な圧力の証となりました。牧場主のズオ氏は、「これほど拡散するとは思わなかった。一般の人々が仕事を見つけるのが非常に困難になっているようだ」と語っています。応募者の10%が大学卒業したばかりの学生だったことも明らかになりました。
中国政府の最新データでは失業率は5%強とされていますが、実際には仕事不足が深刻化しており、民間部門の所得増加は過去10年間、経済成長を下回っています。肉体労働者もオフィスワーカーも、「996」と呼ばれる過酷な労働文化に不満を抱いています。これは、午前9時から午後9時まで週6日働くという常軌を逸した勤務体系を指します。
高まる失業率と都市部の魅力低下
アナリストたちは、今後数ヶ月で労働市場がさらに悪化すると予測しています。中東紛争による製造業のコスト増、AIの普及、そしてこの夏に卒業する過去最多の1,270万人の大卒者が職探しを始めるためです。INGの中国地域チーフエコノミストであるリン・ソン氏は、今回の羊飼い求人への反応は、「労働市場が依然として競争が激しく、報酬が低いことを示している。都市部の仕事は魅力を失い、ますます希少になっている」と指摘しています。
中国経済の5%成長は現在、輸出に大きく依存しており、製造業各社は世界市場でのシェア獲得のため利益を犠牲にしています。これは国内の労働者により大きな圧力をかけています。応募者の一人、21歳のジェームス・グオさんは、コンテナ製造工場での仕事に疲弊しきっていました。「毎日13時間以上働き、手が腫れて水ぶくれができ、トイレに行く時間さえないような感覚は想像できないでしょう。仕事量が多すぎる」と彼は語りました。
羊飼いの仕事の過酷さと魅力
ズオ氏の求人は夫婦での応募を優先しており、夏は2,000ヘクタールの牧草地で3,000頭の羊を放牧し、冬は屋内で餌を与え、清掃を行うというものです。冬の気温は氷点下30度を下回ることもあります。それでも、給与は月8,000人民元(約1,178米ドル)と提示されており、これは都市部の民間企業の平均約6,000人民元を大きく上回る高水準の給与です。さらに、住居と食事が提供される点も魅力です。
チャイナ・マーケット・リサーチ・グループのショーン・ライン代表は、一流大学の修士号を持つ人々でさえ、上海で同程度の給与を求めていると述べています。しかし、彼らの収入の大部分は、狭いアパートの家賃やその他の基本的な生活費に消えてしまうのが現状です。
ズオ氏は、この給与は仕事の過酷さに釣り合うものだと強調しています。「収入は高いが、最も重要なのは、長期的に働き続け、冬を乗り越えられるかどうかだ。これは旅行ではない」と彼は語りました。
「35歳の呪い」と若者の選択
応募者の半数は1990年代生まれで、これは中国の労働者が「35歳の呪い」と呼ぶ年齢層に当たります。研究によると、公的部門を含む大半の企業は、この年齢以上の候補者を選考から外す傾向があります。電子商取引分野のオフィスワーカーである28歳のウーさんは、現在月10,000人民元を稼いでいますが、それでも羊飼いの仕事に惹かれました。「都市生活から抜け出し、嫌な人々に接触することなく、平和で世界から隔絶された生活を楽しみたい」と彼女は語っています。
採用の現実:経験と適応力
しかし、最終的にズオ氏が採用したのは4名、つまり2組の夫婦でした。彼らは皆1980年代生まれで、以前にも牧場で働いた経験がある人々でした。ズオ氏は40組の待機リストを保持しているものの、独身者や都市部の若者をこの職位で検討することはないと述べています。
「私たちの場所では、一年中誰にも会わないかもしれない。彼らがそのような孤独に耐えられるかどうか、私には分からない」とズオ氏は付け加えました。今回の出来事は、中国の格差社会が抱える問題と、都市部の疲弊が地方への新たな労働移動を促している現状を浮き彫りにしています。
今回の中国・甘粛省での羊飼い求人への応募殺到は、中国経済の構造的な課題を浮き彫りにしています。高成長時代の終焉とそれに伴う若年層の失業率の高さ、そして都市部での過酷な「996」労働文化が、多くの人々を「格差社会」と化した都市生活から地方へと向かわせる動機となっていることが見て取れます。特に、都市と地方の所得格差や生活コストの違いが、一見地味な羊飼いの仕事にすら大きな魅力を与えていると言えるでしょう。
しかし、このニュースは都市生活の疲弊を強調する一方で、羊飼いという仕事自体の厳しさも見落とせません。マイナス30度を下回る冬の気候や、年間を通じてほぼ人との接触がない孤独な環境は、都市生活からの単なる逃避では乗り越えられない現実です。牧場主が最終的に経験豊富な夫婦を採用したことは、この仕事がロマンチックな理想とはかけ離れた、高い適応力と覚悟を要する生業であることを示唆しています。


