タイ国民は政府の4000億バーツ(約2兆円)の新規借款と高まる家計債務に対して強い懸念を抱いていることが、最新の世論調査で明らかになりました。スアン・ドゥシット・ポールが実施した調査では、国民は政府の経済対策に対する期待度が低く、生活費やエネルギー価格の早急な引き下げを求めています。この調査結果は、現地メディアのKhaosodが報じました。
バンコク市民、経済政策への期待は低水準
スアン・ドゥシット・ポールが全国の1,143人を対象に行った調査によると、アナティン政権(※)の経済運営に対する国民の期待度は低いことが判明しました。回答者の33.16%が「あまり期待していない」と答え、「かなり期待している」と答えた31.06%を上回りました。この結果は、コロナ禍以降も続くタイ経済の苦境と、政府の政策に対する国民の不信感の表れと言えるでしょう。
(※)注:原文では「アナティン政権」とありますが、現在のタイ首相はセター・タウィーシン氏です。この調査は仮定の政権運営について尋ねたものか、または未来の政権を想定したものと考えられますが、本記事では原文の記述に則ります。
4000億バーツの借款と深刻化する家計債務
国民が現在最も懸念しているのは、4000億バーツ(約2兆円)の新規借款による公的債務の増大です。回答者の44.44%がこれを最大の懸念事項として挙げました。また、個人の負債問題の解決を求める声も63.78%に上り、家計債務問題の深刻化が浮き彫りになっています。タイでは以前から家計債務が経済の足かせとなっており、今回の調査結果は、この構造的な問題が国民生活に重くのしかかっている現状を示しています。
生活費とエネルギー価格の削減が最優先課題
国民がアナティン政権に最も強く望んでいるのは、高騰する生活費、エネルギー価格、および商品価格の引き下げであり、これは回答者の77.97%という圧倒的多数を占めました。これは、タイの日常生活において、物価上昇が喫緊の課題であることを明確に示しています。在住日本人にとっても、食料品や交通費などの物価上昇は、生活費を圧迫する要因となっており、政府の迅速な対応が求められています。
今後の経済見通しに悲観的な声
今後3ヶ月間のタイ経済の見通しについては、46.89%が「悪化するだろう」と回答し、「変わらない」と答えた32.81%を大きく上回りました。ドゥシット・ポールのポーンパン・ブアトーン所長は、「経済問題はどの政権にとっても大きな課題であり、4000億バーツの借款が準備されているとはいえ、国民は公的債務の負担、その費用対効果、長期的な影響を懸念している」と述べています。この悲観的な見方は、経済状況の改善に対する期待の低さにつながっていると言えるでしょう。
今回のドゥシット・ポール調査は、タイ経済が抱える構造的な課題を改めて浮き彫りにしています。コロナ禍からの回復期にあるにもかかわらず、国民は政府の経済運営に懐疑的であり、特に大規模な借款に対しては、その効果よりも将来の債務負担への懸念が先行しています。これは、タイの政治経済が長年にわたり直面してきた、政策立案の透明性や実効性に対する国民の不信感の根深さを示唆していると言えるでしょう。
在住日本人や日系企業にとって、この国民感情はタイの消費市場や労働環境に間接的な影響を及ぼす可能性があります。生活費の高騰は、従業員の生活保障や賃金改定の議論に繋がり、経済の不確実性は新規投資や事業拡大の判断を慎重にさせる要因となり得ます。政府がこれらの国民の懸念にどれだけ迅速かつ効果的に対応できるかが、今後のタイ経済、ひいては在タイビジネス環境の安定性を測る上で重要な試金石となるでしょう。


