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ランソン省ドンダン村、タイ族の掟で100年の原生林を保護

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ベトナム北部ランソン省のドンダン村では、タイ族の地域コミュニティが独自の厳しい村の掟「ホイヒエウ」を何世紀にもわたり厳守し、貴重なニエンの原生林を保護しています。この伝統的な慣習は、原生林を伐採から守り、自然と共生する文化を現代に伝えています。ベトナムのニュースメディアVnExpressが、このユニークな森林保護の取り組みと、村人たちの生活文化について報じました。

ランソン省ドンダン村、貴重なニエンの森を守る独自の掟

ランソン省バックソン県ドンダン村に位置する広さ13.3ヘクタールのニエン原生林は、国立の絶滅危惧種に指定されている184本のニエンの木が石灰岩の山に集中して生息しています。これらの木々は樹齢数百年にも及び、中には直径2メートルを超える大木も。この森は、バックソン渓谷を抱くように広がる平均標高600メートルの石灰岩の山系の一部を成しています。

ドンダン村のタイ族の人々は、このニエンの森を何百年もの間、独自の「ホイヒエウ」と呼ばれる村の掟によって守り続けてきました。この掟は、森から枯れ木一本たりとも持ち出してはならないという厳格なもので、法的な規制が導入される以前から存在していました。村人たちは、ニエンの木の強靭な根が土砂崩れや洪水から村を守ることを知っており、先祖代々この知恵と掟を受け継いできました。

「ホイヒエウ」:厳格な村の掟とコミュニティの力

「ホイヒエウ」は、村の冠婚葬祭を取り仕切る最も強力な組織を通じて維持されています。この掟は、木の伐採や森からの産物の持ち出しを禁じており、違反者には厳しい罰則が科せられます。初回違反者には最低50万ドン(約3,000円)の罰金が課され、村全体の前で注意喚起されます。もし2度目の違反があった場合、その人物は村の会議で議論され、「ホイヒエウ」から追放されることになります。

金銭的な罰則よりも村人を恐れさせるのは、この「ホイヒエウ」からの追放です。追放されると、葬儀の際に棺を運ぶ人がいなくなったり、困りごとの際に誰も助けてくれなくなったりするなど、人生の重要な局面でコミュニティからの支援を一切受けられなくなります。この共同体からの孤立への恐れが、村人一人ひとりに掟の遵守を促す強力な動機となっています。ドンダン村の138世帯のほとんどがタイ族のズオン姓を名乗っており、血縁に基づいた強い結びつきが、この掟を維持する基盤となっています。

信仰と自然への畏敬の念

ドンダン村のコミュニティが掟を厳守する背景には、森の神であるオン・ドゥイを崇拝する信仰心も深く関わっています。森の入り口にあるガジュマルの古木の根元には、解読されていない古文書が刻まれた大きな石板と、石製の香炉が置かれています。村の大人たちは、子どもたちにこの石板に登ったり、その周辺で不敬な行為をしたりしないよう厳しく教えています。過去には、森を侵害した者が「まるで悪霊に取り憑かれたように」錯乱状態に陥ったという目撃談もあり、村人たちの信仰心はさらに強固なものとなっています。

未来を見据えた持続可能な観光計画

森は村を守り、土砂崩れを防ぎ、バックソン渓谷全体を抱きしめるように広がっています。渓谷の麓には、ドンダン村、トリイエン村、そして2025年に「世界最高の観光村」に認定されたクインソン村が点在し、豊かな田園風景と高床式の家屋が美しいコントラストを織りなしています。ドンダン村も観光開発計画を進めており、ニエン原生林を巡るトレッキングルートの設計を検討しています。

しかし、その核心的な原則は、先人たちが守ってきたように、森を現状のまま維持することです。ズオン・フー・チュン村長は、タバコや花卉、果物の栽培による年間平均所得5,600万ドン(約33万6,000円)の収入に加え、森林保護の成果が村人たちの生活を豊かにすると期待しています。

村人による献身的な森林保護活動

ドンダン村の住民は、ニエンの木だけでなく、バックソン自然保護区内の合計427ヘクタールにも及ぶ森林の保護を委託されています。ニエンの木が生息しない区画でも、リ、ボン、バンタムなど多様な植物が自生しています。村人たちは、石灰岩の地質が特定の植物の成長に適していることを知り、山の麓に生えた苗木を森の中に移植することもあります。成長の遅いニエンの木は、小指ほどの太さから手首ほどの太さになるまでに数十年を要します。

7年前に設立された森林保護パトロール隊は、専門の職員に加え、ドンダン村の若者たちも参加しています。彼らは月に一度、乾季には頻度を増やして定期的に巡回し、ニエンの木一本一本の状態を確認し、写真を撮って管理センターに報告しています。彼らが好んで休憩する場所は、幹の直径が2.04メートルもある大木の下で、多くの木こぶや野生のランが生息しています。巡回ごとに、隊員一人あたり20万ドン(約1,200円)の支援金が支給されます。ズオン村長は、「たとえお金がなくても、この地の住民は何世代にもわたって森を守り続けてきたし、これからも守り続けるだろう」と語り、自身の故郷の伝統と、バックソン遊撃隊のゆりかごとなった村を誇りに思っています。

ベトナム北部ランソン省のドンダン村におけるニエン原生林の保護は、単なる環境保全活動に留まらず、タイ族の強固なコミュニティ構造と伝統文化が現代社会でいかに機能しているかを示す好例です。村の掟「ホイヒエウ」は、行政の法律や金銭的インセンティブを超え、共同体からの孤立という最も根源的な恐怖を動機付けとして、住民が自発的に自然保護に貢献する仕組みを築いています。これは、外部からの強制ではなく、内発的な規範と信仰が持続可能な社会を形成する上で極めて重要であることを示唆しています。

このドンダン村の事例は、ベトナムが目指す持続可能な観光開発においても重要な示唆を与えます。近隣のクインソン村が「世界最高の観光村」に認定されたように、地域固有の文化と自然を守りながら観光を振興するモデルは、日本人旅行者にとっても大きな魅力となるでしょう。特に、少数民族の生活文化や手つかずの自然を体験できる北部の秘境は、都会の喧騒から離れて本物のベトナムを求める旅行者にとって、忘れられない体験を提供する可能性を秘めています。伝統的な知恵と現代のニーズが融合した、新たな旅の形がここにあります。

  • バックソン渓谷(バックソン県): 石灰岩の奇岩が織りなす壮大な景観が魅力。トレッキングや少数民族文化体験が楽しめる。
  • クインソン村(バックソン県): 2025年に「世界最高の観光村」に認定された美しい村。高床式家屋や伝統的な生活を体験できる。
AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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