ベトナムの国営宝くじ会社3社がホーチミン市などで巨額の不動産投資を行いながら、多数の物件を空室や不法利用で放置していることが監査で判明しました。これは公的資金の浪費と資産散逸の懸念を高めており、政府の効率的な公的投資管理への取り組みが改めて問われています。VnExpressが報じたところによると、ビンロン省の監察局が専門調査の結果を公表しました。
ホーチミン市で巨額投資の不動産が遊休化
ビンロン省監察局は、2019年初頭から2025年7月1日までの期間における、トラビン省、ベンチェ省、ビンロン省の国営宝くじ会社3社(国家が100%資本を保有)の不動産管理と利用における浪費防止に関する専門調査結果を発表しました。この調査により、多数の価値ある資産が効果的に活用されていない実態が明らかになりました。
ベンチェ省宝くじ会社の高層ビル、6フロアが空室に
ベンチェ省宝くじ会社は、8,185m²以上の土地と14,303m²の床面積を持つ4つの施設を管理しています。特に注目すべきは、ホーチミン市アウコー通りに位置する10階建てのビルです。このビルは、承認された計画では賃貸することになっていたにもかかわらず、わずか4フロアしか使用されておらず、4,758m²に及ぶ6フロアが空室のまま放置されています。
この土地は2003年に6,560ルオン(約487億ドン ≒ 約2.9億円)の金で購入され、その後1,100億ドン(約6.6億円)をかけてビルが建設され、2023年9月から使用が開始されました。さらに、1995年に340ルオンの金で購入されたホーチミン市グエンティエウラ通りの取引所は、手続きの遅れにより、現在に至るまで土地使用権証明書が発行されていません。
ビンロン省・トラビン省でも同様の事態
ビンロン省宝くじ会社が管理する13施設のうち、6施設はホーチミン市にあります。特に、2020年に416億ドン(約2.5億円)で購入された7B通りの4軒の隣接住宅は、現在空室のまま放置されており、投資計画に沿った目的で使用されていません。中には、第三者によって個人的な目的で利用されているケースも見られます。
トラビン省宝くじ会社でも同様の状況が見られます。ホーチミン市ブイティスアン通りにある273m²の住宅は、2024年末から空室のまま放置されており、劣化の危険性があります。
高収益事業の裏で進む公的資金の浪費
監察局は、これらの企業における節約と浪費防止の取り組みが不十分であると結論付けました。多くの不動産が活用されず、資産の散逸につながる潜在的なリスクがあると指摘されています。監察局は、ビンロン省人民委員会の委員長に対し、2019年から2025年までの期間における各会社の幹部の責任を検証し、不動産施設の配置・処理計画を早期に承認して効果的な活用を図るよう提言しました。
宝くじ事業は、特にベトナム南部地域において高い収益を上げています。2025年には、南部地域の21の宝くじ会社が合計155兆5,000億ドン(約9,330億円)以上の収益を達成し、国家予算に約52兆ドン(約3,120億円)を納め、税引前利益は前年比11%増の20兆ドン(約1,200億円)を超えると見込まれています。このような好調な経済状況にもかかわらず、公的資金の非効率な投資が問題となっています。
政府の反腐敗運動と効率化への圧力
ベトナム政府は、「社会主義を志向した市場経済化」を進める中で、公的債務残高がGDP比65%の上限に近接しつつあり、公共投資資金の効率的管理が喫緊の課題となっています。近年、反腐敗・反汚職運動を党の統治能力と正統性の要として推進しており、国営企業における資産の不適切な管理や浪費は、この運動の主要なターゲットとなっています。今回の事例は、政府機関や国営企業における非効率性に対する国民の不信感にもつながりかねない問題です。ベトナムの経済成長を支える上で、公的資金の透明かつ効率的な運用がますます求められています。
ベトナムの国営企業は、市場経済化(ドイモイ改革)以降、政府の経済再建計画と地方自治体の事業拡大ブームの中で、競争力強化のための投資を積極的に行ってきた歴史があります。しかし、その過程で、かつての社会主義経済下の計画経済的な思考が残り、市場の需要や効率性を十分に考慮しないまま、投資が行われるケースが散見されました。今回の宝くじ会社の事例は、国営企業が潤沢な資金を背景に、実需を伴わない不動産投資に走りがちであった構造的な問題を示唆しています。
このような公的資金の非効率な利用は、ベトナム経済全体の信頼性に関わる問題であり、在住日本人や日系企業にとっても注視すべき動向です。政府は公的債務残高のGDP比65%上限に近接しつつあり、公共投資資金の効率的管理が喫緊の課題となっています。今後、政府による国営企業への統制強化や資産売却・再編が進む可能性があり、これは市場に新たな投資機会やM&Aのチャンスをもたらす一方で、ホーチミン市などの不動産市場の動向にも影響を与える可能性があります。


