ベトナムの首都ハノイ市は、交通渋滞と大気汚染対策の一環として、ガソリン式バイクタクシー(セーオム)の規制強化案を策定しています。この新たな規制は、市中心部の低排出ゾーンでの走行禁止や、配車アプリ利用業者への厳格な管理を盛り込むもので、2026年6月の施行を目指しています。VnExpressが報じたところによると、市民や関係機関からの意見収集が進められています。
ハノイ市、バイクタクシー規制強化の背景
ハノイ市人民委員会は、市内で事業を行うバイクや簡易車両を用いた旅客・貨物輸送サービスに関する決定草案について意見を募っています。これは、急増する車両が引き起こす交通渋滞と深刻な大気汚染への対策として、その管理を強化することが目的です。現在、ハノイ市には約690万台のバイクがあり、さらに周辺省からの流入車両も加わることで、交通インフラへの負担が限界に達しています。
低排出ゾーンの導入と対象エリア
市は、バンダイ1(環状1号線)内の「低排出ゾーン」を試行導入する計画です。第一段階として、2024年7月1日から12月31日まで、ホアンキエム区の11の通り(チャンティエン、ハンカイ、レータイトー、ハンダオ、ハンガン、ハンブオム、マメイ、ハンバック、ハンマム、グエンフーファン、リータイトー)で試験的に実施されます。このエリアは広さ0.5平方キロメートル、周囲3.5キロメートル、人口約2万人の地域です。
アプリ利用型と伝統型セーオムへの影響
今回の規制案では、配車アプリを利用する「テクノロジーセーオム」と呼ばれるガソリン式バイクタクシーは、低排出ゾーン内での走行が全面的に禁止されます。一方、アプリを使わない「伝統型セーオム」も、指定された時間帯には同ゾーン内での走行が禁止されます。禁止時間帯以外は、政府や市が定める排出ガス基準を満たせば走行が許可されます。
その他の交通手段と観光シクロへの規制
公共交通の利用促進も図られており、公共自転車は市内全域で24時間利用が可能です。これは、市民がいつでもサービスを利用できるよう最大限の便宜を図り、特に短距離移動やバス、都市鉄道といった公共交通機関への「ラストマイル」接続のニーズに応えるものです。観光用シクロ(三輪自転車タクシー)は、市が指定した特定の通りや乗降場所でのみ運行が許可されます。これにより、観光輸送の特性に応じた厳格な管理体制を確立し、交通秩序と都市の美観を確保します。
アプリ提供事業者への厳格な要求
配車アプリを提供する企業に対しても、新たな義務が課せられます。これらの企業は、事業に必要な免許を持つドライバーにのみサービスを提供し、化石燃料を使用するバイクが低排出ゾーンに進入するような配車指示を行ってはなりません。さらに、交通安全法規や指定された乗降場所での違反があった場合、当局からの通知があれば、該当ドライバーのアカウントを一時的にロックする責任を負います。
ハノイ市のバイク事情と課題
ハノイ市当局の統計によると、市内には約690万台のバイクと1万1000台以上の電動自転車・電動バイクが存在します。これに加えて、周辺省からの車両も10~15%に上ると推計されています。配車アプリ提供事業者からの報告では、ハノイ市内のテクノロジーセーオムは12万6500台を超えており(Be Groupが4万7881台、Grabが6万5593台、GSMが1万3052台)、さらに未登録の事業者も多数存在します。市は、これらのバイクや簡易車両による旅客・貨物輸送ビジネスの急速かつ制御不能な発展が、深刻な問題を引き起こしており、国家による厳格な管理が必要であると認識しています。
今後の見通しと市民生活への影響
この規制案は、市民や関係団体からの意見収集を経て、修正・完成された後、2026年6月までに当局によって公布される予定です。今回の規制強化は、ベトナムの首都ハノイが抱える交通渋滞や大気汚染という長年の課題に対し、具体的な対策を講じる一歩となります。将来的には、2030年までにバイクを禁止するという長期的な目標に向けた布石とも言えるでしょう。
今回のハノイ市によるガソリンバイクタクシー規制強化案は、単なる交通規制ではなく、2030年までにバイクの全面禁止を目指すという長期的な都市計画の重要な一環と捉えることができます。ハノイでは、バイクが市民の主要な移動手段であり、経済活動の根幹をなしているため、その規制は社会全体に大きな影響を与えます。この動きは、都市の持続可能性と住民の生活の質の向上を目指すものであり、大気汚染や交通インフラの過負荷といった構造的な課題への取り組みを示しています。
在住日本人にとっては、中心部でのバイクタクシー利用の制限は、日常の移動手段に直接的な影響を及ぼす可能性があります。特に、テクノロジーセーオムの利便性は高く評価されていただけに、低排出ゾーン内での利用不可は、移動ルートや交通手段の選択を見直すきっかけとなるでしょう。しかし、公共自転車の24時間利用や観光シクロのルート指定など、代替手段の整備も進められており、都市の進化とともに、移動の選択肢も多様化していくことが期待されます。


