ホーチミン市にある歴史的建造物「ベンニャーロン」(ホーチミン博物館)の大規模改修プロジェクトが開始されました。1863年にフランスによって建設されたこの建物は、ベトナムの独立運動の象徴であり、多くの歴史的瞬間を見守ってきました。VnExpressが報じたところによると、この改修は来る9月2日のベトナム独立記念日までの完了を目指しています。
歴史を刻むホーチミン博物館「ベンニャーロン」
ホーチミン市の歴史的なランドマークである「ベンニャーロン」(ホーチミン博物館)の改修プロジェクトが、1.4ヘクタールの敷地で始まりました。これは、総額20兆ドン(約1200億円)を超えるニャーロン-カインホイ港の再整備プロジェクトの一環です。フランスによって1863年に建設されたこの建物は、ベトナムの独立運動指導者ホー・チ・ミンが1911年に海外へ旅立った歴史的な場所として知られています。かつてはサイゴンの賑やかな海上貿易の玄関口であり、観光客にとってのベトナム史の入り口として重要な役割を担っています。
フランス統治時代から現代へ、建物の変遷
ベンニャーロンの建物は、建設から1年後の1864年の写真と比べても、現在の姿とほとんど変わっていません。1864年から1955年までの間、ここはサイゴンにおけるフランスの海運会社メサジェリー・マリティーム社の拠点でした。その後、アメリカ軍によって使用され、1975年以降はホーチミン博物館として一般公開されています。この地域は当時、サイゴン港として南ベトナムの重要な貿易拠点であり、163年という長い歴史の中で、様々な時代の変遷を見守ってきました。
東西融合のユニークな建築様式
全体として、ベンニャーロンはサイゴン川とベンゲー運河の合流点に位置する約1.4ヘクタールの敷地に建つ長方形の建物です。厚いレンガの壁と熱帯気候に適した傾斜屋根を持つ2階建ての構造が特徴です。特に屋根には、緑色の釉薬をかけたテラコッタ製の双竜「ルオンロンチャウグエット」のモチーフが施されており、これが「ニャーロン(竜の家)」という名の由来となっています。この竜の装飾は1871年にメサジェリー・マリティーム社のシンボルに置き換えられましたが、1955年以降に現在の外向きの双竜として復元されました。この西欧様式とベトナム文化の融合は、ホーチミン観光の魅力の一つと言えるでしょう。
博物館内部に息づくホー・チ・ミンの足跡
博物館の内部空間は、ホー・チ・ミンの生涯と革命活動に関するテーマ別の展示室に改装されていますが、建物の初期構造は基本的に維持されています。廊下には、ホー・チ・ミンが乗船したとされるアミラル・ラトゥーシュ・トレヴィル号の模型や、昔のニャーロン港の大きな写真が展示されています。この博物館には、ホー・チ・ミンの人生と革命活動に関する何百もの遺物や資料が保存されています。曲線状の階段や鉄製の装飾が施された手すりも建設当時のままで、上階からはサイゴン川とホーチミン市中心部の広大な眺望を楽しむことができます。
観光客を魅了する歴史スポット
ベンニャーロンは、特に4月30日の解放記念日や国慶節などの祝日には多くの観光客で賑わいます。ある72歳の訪問客は、「改修後、もっと美しくなり、多くの観光客を迎えることを願っている」と語りました。ベンニャーロンの向かいには、1865年に建設された高さ約40メートルのトゥーグー旗竿があります。これはかつて水上交通の信号を掲げるために使用された歴史的建造物で、サイゴン港の記憶と深く結びついています。夜にはベンニャーロンが幻想的な光に包まれ、サイゴン川沿いの夜景スポットとしても人気を集めています。
このホーチミン博物館「ベンニャーロン」の改修は、単なる建物の修繕に留まらず、ベトナムの民族意識と歴史認識の変遷を象徴する出来事と言えるでしょう。フランス植民地時代に建設された西洋建築が、独立運動の指導者ホー・チ・ミンの記念館となり、今また大規模な観光開発の一環として整備される背景には、過去の歴史をどのように現代のナショナリズムと結びつけ、未来へと継承していくかというベトナム政府の強い意思が見て取れます。特に、フエの世界遺産登録を目指した時期にも観光開発に高い優先順位が与えられたように、ベトナムにとって歴史的建造物は重要な観光資源であり、国民統合の象徴でもあるのです。
在ベトナム日本人にとって、ベンニャーロンはホーチミン市の歴史を肌で感じられる貴重な場所です。かつてはサイゴン港として活気に満ち、ホー・チ・ミンが世界へと旅立ったこの場所は、現代のベトナムの発展の原点とも言えます。改修後、より美しく、魅力的な姿で生まれ変わることで、観光客だけでなく在住者にとっても、ベトナムの過去と現在、そして未来を繋ぐ「生きた歴史」を体験できるスポットとなるでしょう。歴史的環境保全と都市開発が融合した「職住学遊」のミックス都市計画の一端を垣間見ることができます。
- ホーチミン博物館(ベンニャーロン):ホーチミン市1区グエンタットタン通り1番地
- トゥーグー旗竿:ホーチミン市1区トンドゥックタン通り1番地(ベンニャーロン向かい)


