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バンコク不動産、ローン拒否率70%でデベロッパーが「4年間居住無料」キャンペーン

※画像はイメージです(AI生成)

タイの不動産市場が深刻な在庫過多と住宅ローン承認率の低迷に直面しており、デベロッパー各社は「4年間居住無料」を含む大規模な割引キャンペーンを展開しています。タイ中央銀行(BOT)は市場の回復が遅いと評価し、特に低所得層の購買力低下が顕著であると指摘しています。Prachachatの報道によると、ローン承認拒否率が最大で70%に達するデベロッパーも現れており、政府の追加支援策が待望されています。

バンコク不動産市場の厳しい現状

タイ中央銀行(BOT)の金融政策担当副総裁ドン・ナコーンタタップ氏は、タイの不動産市場が依然として回復しておらず、住宅ローン申請の減速と購買力の低下が続いていると発表しました。中東情勢の悪化による事業コストの上昇と消費者の購買意欲減退が主な原因とされています。特に、インフレ率は2026年4月には3%に達する見込みで、年間目標を上回るペースで推移しており、家計の脆弱性が浮き彫りになっています。

バンコクとその近郊におけるコンドミニアムの在庫は減少傾向にあるものの、依然として22万1,805戸もの住宅が残っています。2026年1月から2月にかけての住宅価格指数は前年比で減少し、特にコンドミニアムは3.6%、タウンハウスは0.8%の下落を記録しました。一方、一戸建て住宅の価格は1.2%上昇しています。

所得の伸び悩みと住宅ローン承認率の悪化

ドン氏によると、過去5年間で賃金の伸びが住宅価格の伸びに追いついておらず、特に新型コロナウイルス感染症以降、低所得層の住宅ローン取得が一段と難しくなっています。月収3万バーツ(約15万円)未満の層に対する新規住宅ローン承認率は、以前の10%から7%にまで減少しました。これにより、多くの層が中古住宅の購入にシフトしており、中古住宅市場の成長率は31%から41%に拡大しています。

安定した収入がないフリーランスや、所得証明が不明確な人々にとって、住宅ローンへのアクセスは依然として大きな障壁です。特に、高額な債務を抱え、支払い延滞履歴がある人々の承認率は低いです。しかし、金融機関は貸付基準を維持しつつ、月収5万バーツ(約25万円)未満の借り手に対しては、貸付期間を30年から40年に延長することで、月々の返済額を減らし、ローンへのアクセスを容易にする努力をしています。それでも、過去数年間の経済状況と家計債務の増大により、ローン申請者の「質」が低下しているとドン氏は述べています。

政府・中央銀行への期待高まる

タイ不動産市場はこれまでも幾度となく危機を乗り越えてきましたが、現状の困難は根深く、政府による追加の支援策が強く求められています。特に、LTV(ローン・トゥ・バリュー)規制の緩和措置の延長や、譲渡・抵当手数料の0.01%への引き下げ措置(2026年6月30日期限)の1年間延長が期待されています。これらの措置は、最大1,000万バーツ(約5,000万円)までの住宅に適用範囲を拡大し、商業銀行を通じたソフトローンの供給を増やすことで、幅広い顧客層を支援することが目指されています。

タイ中央銀行も、LTV規制の延長だけでなく、不動産セクターを支援するためのさらなる方法を模索していると表明しており、その動向に注目が集まっています。タイの経済発展に伴って貧困層が減少し、中所得階層が拡大してきた歴史的背景を考えると、現在の住宅市場の低迷は、雇用や所得格差の問題が根底にある構造的な課題とも言えます。

デベロッパー各社、大規模キャンペーンで在庫解消へ

タイコンドミニアム協会のピティパット・プリーダノン会長は、2026年第1四半期の不動産市場は回復せず、多くのデベロッパーが新規コンドミニアムの発表や将来のプロジェクト入札を延期していると述べました。建設コストの高騰により、請負業者がリスクを負いきれず、入札価格の確定が困難になっているためです。また、請負業者のキャッシュフロー問題や、ローン拒否による物件引き渡しの中断も深刻化しています。

このような状況を受け、大手デベロッパー各社は在庫解消とキャッシュフロー確保のため、大規模なプロモーションを展開しています。例えば、LPNは、チョンブリ県やペッチャブリー県のルムピニ シービュー チャアムなどのコンドミニアムを99万9,000バーツ(約500万円)に値下げするほか、一戸建てやタウンホームを含む27プロジェクトで最大200万バーツ(約1,000万円)の割引を提供しています。

APタイランドは、400万〜5,000万バーツ(約2,000万〜2億5,000万円)の一戸建てを対象に、頭金3,999バーツ(約2万円)、最長36ヶ月のローン補助、ガソリンカード、譲渡費用無料などの特典を用意。SCアセットは、300万〜1億バーツ(約1,500万〜5億円)の住宅・コンドミニアムで「3年間居住無料」、ガソリンカード最大20万バーツ(約100万円)、水道光熱費1年分最大5万バーツ(約25万円)、高速道路料金1年分最大2万5,000バーツ(約12万5,000円)、日用品最大2万バーツ(約10万円)を提供しています。ランド&ハウスは、バンヤイ、ペッチャカセム、プラチャウティット、ランシット-ラムルッカの4エリア6プロジェクトで、最大100万バーツ以上の割引を実施しています。

サンシリの「48ヶ月支払不要」キャンペーンと今後の見通し

サンシリは、タイ商業銀行とクルンタイ銀行と提携し、「最長48ヶ月支払不要」キャンペーンを開始しました。90万バーツから4,000万バーツ(約450万円から2億円)の100以上のプロジェクトが対象で、2026年5月1日から6月30日まで実施されます。一戸建てとセミデタッチハウスでは、最長48ヶ月の支払不要または最大1,000万バーツ(約5,000万円)の割引、さらにガソリンカード最大10万バーツ(約50万円)が提供されます。タウンホームも同様に最長48ヶ月支払不要または最大80万バーツ(約400万円)の還元、ガソリンカード最大10万バーツが付帯します。コンドミニアムでは、最長48ヶ月居住無料、または管理費最長10年無料最大250万バーツ(約1,250万円)の割引、ガソリンカード最大5万バーツ、家具・家電無料といった特典が用意されています。

サンシリのコンドミニアム開発担当副社長オンアート・スワンナクン氏は、現在の市場は購入にとって「良いタイミング」であると強調しました。低金利、政府の支援策、特にLTV規制緩和が住宅ローンへのアクセスを容易にしているためです。また、建設コストは5%から10%上昇しているものの、需要の弱さから販売価格への転嫁は限定的であるため、将来的な価格上昇を避けるためにも今が好機であると指摘しています。

タイの不動産市場が直面する課題は、単なる景気循環ではなく、所得格差の拡大や中所得層の伸び悩みといった構造的な問題が根底にあります。過去の経済発展で貧困層が減少し、中間層が拡大したというタイの歴史的推移を考慮すると、現在の住宅ローン承認率の低迷は、家計の購買力低下と債務負担の増大が、社会全体の中間層の厚みを損なっている可能性を示唆しています。

この状況は、タイに在住する日本人や日系企業にも影響を及ぼす可能性があります。住宅購入を検討している個人にとっては、デベロッパーによる大規模なプロモーションが一時的な購入機会となる一方で、市場全体の不安定さはリスク要因となりえます。また、日系企業にとっては、従業員の住宅手当や福利厚生を検討する際に、市場の価格変動やローン取得の難しさを考慮する必要があるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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