ベトナムの鉄鋼大手ホアファット(Hoa Phat)グループが、クアンガイ省の巨大プロジェクトへの投資により、毎日150億ドン(約9000万円)以上の利息を支払っていることが明らかになりました。これは同社の財務報告で示されており、多額の借入金と高金利環境が背景にあります。VnExpressが報じたところによると、同社は利息負担を管理可能としながらも、ベトナム経済の成長を牽引する主要企業の動向として注目を集めています。
クアンガイ省の巨大プロジェクトが背景に
ホアファットの2024年第1四半期財務報告によると、3月末時点での総借入金は90兆6000億ドン(約5436億円)を超え、昨年末から約2兆ドン(約120億円)減少しました。この減少は、主に大型鉄鋼複合施設「ズンクアット2(Dung Quất 2)」プロジェクトの融資返済が始まったことによるものです。しかし、金融費用は過去最高の1兆9000億ドン(約114億円)近くまで18%増加し、その72%にあたる1兆3590億ドン(約81億5400万円)が利息支払いに充てられています。
この費用増加の主な原因は、ズンクアット2が稼働を開始したことで、これまでの資本化が停止されたこと、そして第1四半期の高金利環境にあります。VnExpressの調査によると、多くの銀行における12ヶ月定期預金の金利は年6.5〜7.5%で推移しており、これは昨年末と比較して1〜3%の上昇です。ベトナムではインフラ整備や産業構造の高度化に向けた大規模投資が活発であり、これに伴う企業の資金需要と金融市場の動向が注目されています。
記録的な利息負担と好調な事業実績
クアンガイ省に位置するズンクアット2鉄鋼複合施設は、280ヘクタールの敷地を誇り、総投資額は85兆ドン(約5100億円)に上ります。年間560万トンのHRC(熱延コイル)生産能力を持ち、第1四半期にはすでにフル稼働を達成しています。記録的な利息費用を支払いながらも、ホアファットはこれが中核事業の収益性に圧力をかけるものではなく、管理可能な範囲内であると説明しています。
実際、今年初めの第1四半期において、チャン・ディン・ロン会長率いるホアファットは、売上高が53兆3000億ドン(約3198億円)を超え、前年同期比40%増を記録しました。このグループの総売上高の96%は鉄鋼事業が占め、51兆2210億ドン(約3073億2600万円)に相当します。鉄鋼製品の販売量は300万トンに達し、前年同期比で26%改善するなど、ベトナムの製造業を牽引する存在感を改めて示しました。
不動産事業が利益を後押し
同期間中、ホアファットの金融活動からの収益は5兆9000億ドン(約354億円)を超え、前年同期の13.5倍に急増しました。この大幅な増加は、フンイエン省フォーノイ(Phố Nối)の不動産プロジェクトを譲渡したことによるものです。これにより、税引き後利益は9兆550億ドン(約543億3000万円)を超え、前年同期の2.7倍となりました。親会社の株主帰属純利益は8兆9940億ドン(約539億6400万円)に達し、前年同期比170%増と、過去5年間で最高水準を記録しています。
将来への展望:鉄鋼と不動産
ホアファットは今年、売上高210兆ドン(約1兆2600億円)、税引き後利益22兆ドン(約1320億円)を目標に掲げています。これは2025年の実績と比較してそれぞれ33%と42%の増加であり、すでに利益目標の約41%を達成しています。チャン・ディン・ロン会長は年次株主総会で、ホアファットの戦略は鉄鋼分野への継続的な拡大と深い投資であると述べました。また、不動産分野の発展も計画しており、好立地で手頃な価格、そして実需に応えるプロジェクトに焦点を当てる方針です。これは、ベトナムの経済成長を支える産業投資と、都市開発のニーズに応える複合的な戦略と言えるでしょう。
今回のホアファットの財務状況は、ベトナム経済が急速な成長を遂げる中で、企業が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。ズンクアット2のような大規模インフラプロジェクトは国の産業基盤強化に不可欠である一方、その資金調達は莫大な借入金と高金利リスクを伴います。特に、トーラム・フン新首相体制への移行期にあるベトナムでは、産業政策や金融政策の方向性が企業の資金調達環境に大きな影響を与える可能性があります。鉄鋼業のような基幹産業への投資は、経済安全保障やサプライチェーンの強靭化という観点からも重要視されており、政府と企業の連携が今後の成長を左右するでしょう。
在住日本人や日系企業にとって、このホアファットの事例は、ベトナムにおける事業展開のヒントとなります。高金利環境は、新たな設備投資や事業拡大における資金調達コストを直接的に押し上げる要因となるため、財務計画には慎重な検討が必要です。一方で、ホアファットが不動産プロジェクトの譲渡で大きな利益を上げたように、ベトナムの不動産市場は依然として構造的な成長ドライバーを秘めています。工業団地開発や都市部の住宅需要は堅調であり、日系企業にとっても、自社の強みを活かした多様な事業機会が存在すると言えるでしょう。


