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中国が石炭で肥料自給、中東情勢の影響を回避か【北京発】

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中東紛争による肥料供給網の混乱と価格高騰に対し、中国が石炭由来の尿素生産を強化し、自給自足体制を確立している。世界の肥料供給の30%を担うホルムズ海峡の混乱により、中国以外の尿素価格が約70%も高騰する中、中国国内では影響が限定的だ。ロイターが報じたこの戦略は、国内の豊富な石炭資源を活用することで、国際市場の変動から中国経済を守る狙いがある。

中東紛争が肥料市場を直撃、国際価格が高騰

中東紛争が長期化する中、世界の肥料貿易の約30%が通過するホルムズ海峡の航行が不安定化している。この混乱は、尿素をはじめとする肥料の供給網に深刻な影響を及ぼし、中国を除く国際市場では尿素価格が 約70%も高騰している。尿素は、窒素を豊富に含む無機肥料であり、リンやカリウムと並び、植物の成長に不可欠な三大栄養素の一つだ。食料安全保障の観点からも、肥料の安定供給は世界中で最重要課題とされており、毎年約2億トンの肥料が農業部門で使用されている。特に窒素肥料は、2023年には全体の58%を占める最大の割合となっている。

中国の石炭利用戦略:肥料自給の道

多くの国が天然ガスを原料として尿素を生産する中、中国は国内の 豊富な石炭資源 を活用することで、尿素生産の約80%を石炭に依存している。この戦略により、中国は肥料供給の自給自足体制を確立し、中東情勢の混乱や国際市場での価格変動による影響を最小限に抑えることに成功している。これは、米国の自国第一主義政策や経済の強靭性を重視する国際的な潮流の中で、中国経済が国際競争力を維持するための重要な要素となっている。

中国の輸出制限と国際市場への影響

中東紛争以前から、中国は国内市場を保護するため、尿素の輸出割当を 50〜80%削減していたと報じられている。インドのデリーに本社を置く肥料会社の幹部によると、この決定は国際的な肥料供給をさらに逼迫させ、世界市場に大きな圧力を加えているという。国際貿易センターのデータによれば、昨年、中国は130億ドル相当の肥料を輸出し、ブラジル、インドネシア、タイの輸入量の約5分の1、マレーシアとニュージーランドの約3分の1を占めていた。新興国の台頭により穀物等の主要輸出国・輸入国に大きな変化が生じている中、中国の輸出政策は国際的な食料安全保障にも影響を与えている。

石炭由来肥料生産の環境負荷と課題

石炭を利用した肥料生産は、中国の 肥料自給自足 能力を高める一方で、気候変動への大きな影響が懸念されている。ドイツの非営利組織ウルゲヴァルトのデータによると、石炭からのアンモニア生産は、天然ガスを使用する場合と比較して、CO2排出量が 3倍 にも達するという。また、グリーンピースの調査では、内モンゴルのシェンファ(Shenhua)グループの工場では、1トンの肥料を生産するために10立方メートルもの水が必要となるなど、水資源の大量消費も問題視されている。炭素排出量に関する厳格な環境政策や、炭素税、排出量取引制度といった規制は、石炭由来の肥料生産コストを増加させ、この技術の持続可能性に大きな課題を投げかけている。

石炭ガス化技術の国際的な広がりと限界

それでもなお、石炭資源が豊富な一部の国々では、肥料供給の自給自足を目指し、石炭ガス化技術の導入が試みられている。インドでは、輸入天然ガスの代替戦略として石炭ガス化が検討されているが、新しいプロジェクトはまだ初期段階にある。インドネシアでは、一部の企業が中国企業と合弁事業を組み、生産の最適化を進めているとインテル・マーケットが報じている。一方で、オーストラリアでは、排出量削減目標と炭素価格税によるコスト負担が大きく、このモデルを広げることは難しい状況だ。水供給と気候変動の問題が相互に影響しあう中で食料安全保障に取り組むため、気候対応型農業、農業バリューチェーン、アグリビジネスおよび自然資源管理の重要性が増している。

中国が石炭を基盤とした肥料自給自足体制を構築している背景には、国際的なサプライチェーンの混乱や価格変動から国内経済、特に農業分野を守るという国家戦略がある。これは、天然ガス輸入に依存する多くの国々とは一線を画すアプローチであり、食料安全保障の確保と経済の強靭性を高めるという中国の強い意志を反映している。

しかし、この石炭利用戦略は、環境への負荷という大きな課題を抱えている。CO2排出量の増大や水資源の大量消費は、国際社会が推進する持続可能な開発目標や気候変動対策と真っ向から対立する。将来的に、国際的な環境規制の強化や炭素国境調整メカニズムの導入などが進めば、中国のこの生産モデルは国際競争力や貿易関係において新たな障壁に直面する可能性を秘めている。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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