ベトナムのレ・ミン・フン首相は、国の発展を加速させるため、戦略的・コア技術開発への予算配分比率を大幅に引き上げるよう指示しました。これは、科学技術省との会議で発表されたもので、デジタル経済の成長とイノベーション促進に向けた具体的な目標と政策転換が求められています。VnExpressが報じたところによると、政府は今後、この分野への投資を国家予算の少なくとも3%とする方針です。
首相、コア技術開発への投資強化を指示
4月22日、レ・ミン・フン首相は科学技術省との会議を主宰し、科学技術、イノベーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実施状況について協議しました。首相は、決議57の実施や政策枠組みの整備、インフラ・技術開発の推進における同省の努力を高く評価しつつも、いくつかの課題を指摘しました。
現在、社会資源の動員や官民連携、発注・任務付与、費用計算、基金の利用に関するメカニズムには依然として多くの障壁があります。また、研究、応用、訓練、市場間の連携が弱く、研究成果の商業化、テクノロジー企業やスタートアップの育成、科学技術市場の発展も不十分であると指摘されました。さらに、デジタルインフラ、データ、戦略技術、高品質な人材もボトルネックとなっており、データエコシステムの形成やデータ共有・活用が経済社会の発展に十分に貢献できていません。
ベトナムの科学技術における現状と課題
ベトナムは、経済発展の旅路において重要な局面を迎えており、過去のドイモイ(刷新)政策以降、市場経済の導入と対外開放化を推進してきました。しかし、科学技術の分野では、研究成果の実用化や人材の確保、イノベーションエコシステムの強化が引き続き課題となっています。特に、半導体、人工知能(AI)、バイオテクノロジーといった戦略的技術分野における質の高い人材育成は、世界銀行との協力も進められている重要な課題です。
政策転換と具体的な目標設定
首相は、今後、国家予算における科学技術、イノベーション、DX関連の支出総額のうち、戦略的技術、ハイテク、コア技術への配分比率を増やすよう強調しました。これは、決議57で定められた「国家予算の少なくとも3%をこの分野に充てる」という要件を満たすためのものです。
また、企業支援政策の考え方を見直し、インプットベースからアウトプット(結果)ベースへの転換を求めました。管理・財政・投資メカニズムに焦点を当て、規制障壁を徹底的に取り除き、制御されたリスクを許容することで、科学技術機関の自律性を高める方針です。首相は、基盤技術、先進技術、戦略技術、デジタル技術の習得を優先し、デジタル資産や暗号通貨の健全かつ効率的な発展を促進する必要性も指摘しました。
各省庁への具体的な指示と協力体制
政府は、デジタル経済がGDPの30%を占めること、イノベーション活動を行う企業の割合が40%に達すること、Eコマースの売上高が平均23~25%成長することを目標に掲げています。首相は科学技術省に対し、デジタル変革法と人工知能法の施行をガイドする3つの政令と2つの首相決定を4月中に提出するよう指示しました。また、戦略技術と戦略技術製品のリストを見直し、国の短期的・長期的な発展に決定的な意味を持つ分野に集中するよう求めました。
政府指導部は、各省庁に対し、国の大きな課題と連携した戦略的技術課題を特定し、具体的なロードマップに基づき、測定可能な結果を伴って実施するよう指示しました。さらに、省庁間調整タスクフォースの設立と統一的な指導メカニズムの確立が、戦略技術開発プログラムの効果的な実施、企業・大学・研究機関間の連携強化、資源の無駄の回避に不可欠であると強調しました。
進むデジタル化とイノベーションの現状
科学技術省は財務省と協力し、科学技術、イノベーション、DXプロジェクトへの国家予算使用に関する基準、手順、手続き、内容を定めた規定の策定を進めています。この中で、資金配分メカニズムは、成果ベースの発注・任務付与へと移行し、研究における制御されたリスク受容メカニズムを確立することが求められています。第2四半期には、科学技術省が中央政策・戦略委員会と協力し、科学技術、イノベーション、DXに基づく新たな国家発展モデルに関する決議を策定し、中央委員会第3回会議に提出する予定です。
報告によると、ベトナムはすでに11の戦略技術グループと35の戦略技術製品を制定しています。2025年には53の科学技術組織が地域および国際レベルに達し、6つのハイテクパークが設置される見込みです。ハイテク製品の輸出比率は50%近くに達し、ベトナムは世界イノベーション指数で139カ国中44位、スタートアップエコシステムでは世界55位にランクされています。
科学技術予算の現状と今後の展望
2026年3月末までに、ベトナムの5Gカバー率は人口の91.9%に達し、2240万以上の加入者を擁しています。モバイルインターネット速度は世界14位、固定インターネットは9位、IPv6インフラは世界7位と、デジタルインフラの整備が急速に進んでいます。デジタル技術企業は1394社増加し、デジタル技術製品の輸出額は450億ドル以上(約2兆7000億円)と32.2%増加しました。総輸出額は1720億ドル(約10兆3200億円)に達し、Eコマースの市場規模は360億ドル(約2兆1600億円)と、2020年の3倍に拡大しています。
2026年の科学技術、イノベーション、DXに充てられる総予算は、国会で承認された65兆20億ドン(約3901億円)です。このうち、30兆720億ドン(約1843億円)が経常支出、34兆3000億ドン(約2058億円)が投資開発支出に割り当てられています。現在、経常支出の92.27%、投資支出の68.58%がすでに配分されており、残りの予算も引き続き見直しが行われ、配分される予定です。
今回の首相による指示は、ベトナムが長年掲げてきた「ドイモイ政策」の延長線上にある、より高度な経済発展モデルへの移行を強く意識したものです。過去には労働集約型産業が経済を牽引してきましたが、近年は質の高い人材と戦略的なコア技術の開発が、持続可能な成長と国際競争力の強化に不可欠であるとの認識が強まっています。世界銀行との協力によるハイテク人材育成プログラムもその一環であり、ベトナム政府が国を挙げてイノベーションエコシステムの構築に注力している姿勢が鮮明です。
この政策転換は、ベトナムに進出している日系企業や在住日本人にも大きな影響を与えるでしょう。特にIT・ハイテク分野では、政府の重点投資により、半導体、AI、バイオテクノロジーなどの分野で高度人材の採用競争が激化する可能性があります。また、研究開発成果の商業化やスタートアップ育成への注力は、新たなビジネス機会を生み出す一方で、既存企業にはよりイノベーティブな事業戦略が求められることになります。デジタル化の進展は、ビジネス環境の効率化だけでなく、消費者の行動様式にも変化をもたらし、市場への迅速な適応が成功の鍵となるでしょう。


