ベトナムのホーチミン市で、製造業の生産が過去5年間で最高の伸びを記録しました。年初から5ヶ月間の製造加工業は、前年同期比11.8%増と部門全体を牽引しており、S&PグローバルのPMI指数も好調を示しています。VnExpressが報じたこの成長は、市場変動への柔軟な適応と政府の支援策が背景にあるとされています。
ホーチミン製造業、驚異の成長を記録
ホーチミン市の統計局によると、2024年1月から5月にかけて、製造加工業の生産は前年同期比11.8%増を達成し、産業全体の成長を力強く牽引しています。これは新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、この期間における製造加工業の工業生産指数(IIP)が初めて二桁成長を記録したもので、同市経済の回復と発展を明確に示しています。
この好調の背景には、市場変動への柔軟な適応能力、政府による積極的な支援策、そして強力な公共投資が挙げられます。特に顕著な伸びを見せたのは、ベッド・キャビネット・テーブル・椅子製造業で73.2%増、化学工業で43.9%増、電気機器で29.2%増、電子工業で25.2%増と、多岐にわたる分野で高い成長率を記録しました。
輸出入も好調、今後の見通しは明るい
ホーチミン市の貿易活動も活発で、年初から5ヶ月間の輸出額は前年同期比5.3%増の394.7億ドルに達しました。輸入額も約443億ドルと約11%増加しており、これは今後の受注増加につながる明るい兆候と見られています。ベトナムは1986年のドイモイ改革以降、市場経済の導入と国際貿易の自由化によって大きく変化し、外国資本の流入と輸出産業の発展が経済成長の原動力となっています。
こうした輸出の拡大は、外国直接投資(FDI)によって牽引されており、製造業が経済成長の重要な柱であり続けています。特に、多くの外国企業がベトナムを生産拠点として選択することで、サプライチェーンの強靭化にも貢献しています。ただし、ベトナムの物流インフラはタイや中国に比べるとまだ整備が遅れている部分もあり、今後の更なる改善が期待されています。
PMI指数が示す製造業の回復基調
S&Pグローバルが発表した5月の購買担当者景気指数(PMI)も、ベトナム製造業の好調を裏付けています。PMIは4月の50.5ポイントから5月には52.8ポイントに上昇し、2月以来の最高値を記録しました。これは新規受注の増加が背景にあり、ベトナムの製造業が第2四半期中盤にかけて順調に成長していることを示しています。S&Pグローバルは、ビジネス環境が全体的に11ヶ月連続で改善していると評価しています。
S&Pグローバルが指摘する持続可能性への懸念
しかし、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの経済ディレクターであるアンドリュー・ハーカー氏は、この成長の持続可能性について慎重な見方を示しています。最近の受注増加の一部は、イラン紛争による供給途絶を懸念したバイヤーによる買いだめ努力が原因であると指摘されています。また、製造業は燃料費や輸送費など、投入コストが4ヶ月連続で上昇しており、価格圧力に直面しています。
ハーカー氏は、「世界の他地域で何が起こるかが、今後数ヶ月間の製造業の業績を決定する主要な要因となるだろう」とコメントしており、国際情勢の変動がベトナム経済に与える影響に警鐘を鳴らしています。ベトナムの製造業は外資が牽引し成長を続ける一方、部素材の多くは輸入に依存する構造であり、グローバルサプライチェーンの安定性が極めて重要です。
今回のホーチミン市における製造業の力強い成長は、ベトナム経済が外国直接投資(FDI)と輸出に大きく依存する構造が引き続き機能していることを示しています。ドイモイ政策以降、市場経済化と国際貿易の自由化を推進してきたベトナムは、グローバルサプライチェーンにおいて重要な位置を占めることに成功しており、今回の製造業の好調はその戦略の成果と言えるでしょう。
一方で、S&Pグローバルが指摘するように、地政学的なリスクや投入コストの上昇は、ホーチミンに進出する日系企業にとっても無視できない課題です。特に、燃料や輸送費の高騰は、サプライチェーンの効率化やコスト管理の重要性を一層高めます。在住日本人や日系企業は、ベトナム経済の成長と同時に、これらの外部要因が事業に与える影響を常に分析し、柔軟な戦略を立てる必要があるでしょう。


