ベトナムのトー・ラム総書記兼国家主席は、ホーチミン市の既存の経済成長モデルが弱まっていると指摘し、新たなモデルへの転換を強く提言しました。同氏は、ドイモイ政策以降の発展を評価しつつも、現状に満足せず、生産性向上と科学技術に基づく成長を促しました。この議論は、VnExpressが報じたところによると、4月27日に開催されたホーチミン市委員会との会合で交わされました。
ホーチミン市の成長鈍化とアジア主要都市との格差
トー・ラム総書記兼国家主席は、ホーチミン市がドイモイ政策導入から40年間で目覚ましい発展を遂げ、開放的な経済政策、活発な民間セクター、そして商業・サービス・工業の柱によって国家予算に大きく貢献してきたと評価しました。しかし、同氏は「これまでの成長原動力は徐々に減退しており、かつての優位性はもはや突出していない」と警鐘を鳴らしました。
合併後、ホーチミン市は大きな潜在力を持つ超巨大都市となりましたが、その飛躍は将来のビジョン、成長モデル、統治制度、そして実行能力にかかっていると指摘されています。現在もベトナムのGDPの23%以上、国家予算収入の約31%を占めていますが、かつてのような顕著な成長効率を維持できていないのが現状です。
トー・ラム総書記兼国家主席によると、ホーチミン市とバンコク、ジャカルタ、上海、シンガポールといったアジアの主要都市との差は、収入、インフラ、国際化の度合い、イノベーション、ガバナンスなど多岐にわたる面で拡大傾向にあるとのことです。同市のGDPは1,000億ドル強で、これらの都市を下回っており、一人当たりの平均収入約8,000ドル(約4万8千円)も、依然として大きな開きがあります。
生産性、科学技術、デジタル変革を軸とした新経済への移行
トー・ラム総書記兼国家主席は、「現在の地位に満足してはならない」と述べ、ホーチミン市は生産性、科学技術、デジタル変革、そして効率的な資源配分に基づいた成長モデルへ移行すべきだと強調しました。同市は、科学技術、国際統合、民間経済に関する決議を具体的な成果へと結びつける先導者となる必要があります。「素晴らしい文章や発言があっても、実行が伴わなければ意味がない」と、その重要性を強く訴えました。
また、党と国家のトップは、発展は必ず国民が享受できる形で進められるべきだと指摘。例として、市民向けのバス無料化政策(VnExpressで報じられたホーチミン市の交通政策)を挙げ、ホーチミン市がこの政策を拡大し、個人交通手段から公共交通機関への移行を促すための資源を増やすよう提案しました。この取り組みは、他の地方都市にとっても参考になるとしています。
特別都市法の制定と中央政府の協力体制
中央政府に対し、現行の決議31に代わる新たな決議の早期発行と、ホーチミン市の自治権、管理ツール、国際競争力を高めるための「特別都市法」の制定を求める提言について、トー・ラム総書記兼国家主席は、中央政府がこれに同意し、これを市の新たな発展段階への道を開くために不可欠な制度的基盤と見なしていると述べました。
これを受け、ホーチミン市党委員会のチャン・ルー・クアン書記は、達成された成果は要求や期待に比べればまだ控えめであると認識を示しました。「任務は非常に重いですが、ホーチミン市は決して孤立していません」と述べ、トー・ラム総書記兼国家主席が何度も会合に臨んでいることから、中央政府との連携が強化されていることを強調しました。
チャン・ルー・クアン書記は、ホーチミン市が具体的な測定可能な成果によって行動を起こすことを約束しました。同市は、土地からの収入に依存せず、生産、サービス、イノベーション、デジタル経済、効率的なガバナンスに基づいて、二桁成長と1兆ドン(約6兆円)の予算収入を目指す目標を掲げています。これは、ベトナム経済の牽引役としてのホーチミン市の役割を再定義する重要な一歩となるでしょう。
今回のトー・ラム総書記兼国家主席によるホーチミン市への提言は、ベトナム経済の構造的な転換点を示唆しています。1986年のドイモイ政策導入以来、ホーチミン市は市場経済化の恩恵を最大限に享受し、特に民間投資と輸出主導型経済で驚異的な成長を遂げてきました。しかし、その成長モデルが成熟期を迎え、労働集約型から知識集約型への産業構造転換が急務となっている現状が浮き彫りになりました。アジアの他主要都市との競争力維持のためには、イノベーションと生産性向上を核とした新たなアプローチが不可欠です。
この政策転換は、ホーチミン市に拠点を置く在住日本人や日系企業にとっても重要な意味を持ちます。特に、製造業においては、これまでの安価な労働力を前提としたビジネスモデルから、技術導入や高付加価値化へのシフトが求められるでしょう。また、デジタル変革や科学技術への投資が強化されることで、関連分野での新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。ホーチミン市の自治権強化の動きは、地方政府との連携や投資環境の透明性向上に寄与する可能性があり、今後の法整備と具体的な政策の進展が注目されます。


