ホーチミン市の老舗テーマパーク「ダムセン文化公園」が、商業施設との競争激化により来場者減少に直面していることが明らかになりました。昨年は売上が前年比約17%減となり、目標の8割にとどまるなど厳しい状況が続いています。VnExpressが報じたところによると、運営会社は若者や家族層をターゲットに、VR技術の導入など大規模な刷新計画を進めているとのことです。
ホーチミン「ダムセン文化公園」の苦境
フートー・ツーリスト(Phu Tho Tourist – DSP)が運営する「ダムセン文化公園(Dam Sen Cultural Park)」は、2023年の総売上が1,340億ドン(約8億400万円)を超えましたが、これは前年比で約17%減であり、年間計画のわずか80%しか達成できませんでした。特に、公園の主要な収入源であるゲームチケットの販売は、来場者数が約30万3,900人にとどまり、前年同期比で78%に減少しています。
商業施設と無料スポットの台頭
ダムセン公園の経営陣は、売上不振の主な理由として、ホーチミン市内の大型ショッピングモールとの競争を挙げています。これらのモールは、ショッピングだけでなく、エンターテイメントやグルメも兼ね備えた複合施設として急速に発展しており、屋外型テーマパークの代替選択肢となっています。さらに、グエンフエ通り(Nguyen Hue)、バクダン埠頭(Bach Dang)といった市中心部の無料または低コストで楽しめる観光スポットも、週末や祝日には毎日数万人の来場者を集め、ダムセン公園から客足を奪っていると分析されています。
若年層の消費行動の変化と競合の動向
デジタル消費の拡大に伴い、若年層の顧客は、ポップアップイベント、テーマ型フェスティバル、短期間のイベントなど、新しく、感情を揺さぶるような体験を求めています。このような分散型の娯楽消費行動は、地元顧客の来場頻度やリピート率を低下させています。また、同業他社との競争も激化しており、メトロ1号線の開通でアクセスが改善されたスイティエン公園(Suoi Tien Park)や、教育と動物愛護をテーマにしたタオカムビエン・サイゴン(Thao Cam Vien Saigon)などが、家族連れや若者層のニーズを捉え成功を収めています。
近隣地域のモダンなアトラクションも脅威に
さらに、ドンナイ(Dong Nai)省のソンティエン・アメイジングベイ(Son Tien – Amazing Bay)など、近隣地域のテーマパークもダムセン公園にとって脅威となっています。これらの施設は、よりモダンで若者を惹きつけるエンターテイメントに焦点を当てており、顧客の選択肢を広げています。ホーチミン市の経済発展に伴う産業集積や大規模な開発事業、急速な人口増加は、都市の娯楽施設にも多様な選択肢をもたらし、競争が激化している背景があります。
「ダムセン再生」に向けた大規模刷新計画
こうした競争圧力と顧客嗜好の変化に対応するため、フートー・ツーリストは、製品とサービスの刷新を今年の重点課題と位置付けています。特に、Z世代、アルファ世代、そして家族層を主要ターゲットとし、ダムセン公園を「象徴として復活させる」計画です。具体的には、既存のゲームのアップグレードに加え、VR(バーチャルリアリティ)などのハイテク小型アトラクションや、環境教育を組み合わせたエコアドベンチャーゲームへの投資を進めます。週末の定期ショーや音楽と組み合わせたナイトマーケットの開催、景観の改善、魅力的なフォトスポットの設置にも注力するとのことです。
大規模投資を阻む土地利用権の問題
しかし、大規模な投資計画には大きな障害も存在します。ダムセン公園の土地利用権の取得や、1/500スケールの都市計画の承認が遅れていることです。経営陣はこれを、大規模な開発を妨げる最大の課題と認識しており、今年中にこれらの問題を解決し、将来的な大規模投資への道を開くことを目指しています。ベトナムでは都市開発やインフラ整備が急速に進む一方で、土地利用に関する課題は多くの開発プロジェクトで共通して見られるテーマです。
ホーチミン市のダムセン文化公園が直面する課題は、ベトナムの急速な都市化と消費行動の変化を映し出しています。かつて主要な娯楽施設だったテーマパークが、商業施設や無料の公共空間に顧客を奪われているのは、ASEAN諸国全体で進む「スマートシティ」化や統合的な都市開発の副産物と言えるでしょう。特に若者層が「新しい体験」や「感情的なつながり」を求める傾向は強く、単なるアトラクションだけでなく、物語性や独特の空間を提供するポップアップイベントやテーマ型フェスティバルが人気を集めています。
このニュースは、在住日本人にとっても、ホーチミンでの週末の過ごし方が多様化していることを示唆しています。以前は定番だったテーマパークが、今では最新のショッピングモールや、グエンフエ通りなどの無料で楽しめるスポットに取って代わられつつあります。ダムセン公園がVR導入やエコアドベンチャーなど、現代的な要素を取り入れて「再生」を図ることは、在住日本人の家族連れや、新しい体験を求める層にとっても、新たな選択肢となる可能性を秘めています。
- ホーチミン市内の人気ショッピングモール: サイゴンセンター(高島屋)、ビンコムセンター
- 無料の人気スポット: グエンフエ通り(歩行者天国)、バクダン埠頭(リバークルーズ)


