デンマークの海運大手メアスクは5月5日、ホルムズ海峡を通過する米船籍の商船「アライアンス・フェアファックス」が米海軍の護衛を受け、無事にペルシャ湾を離れたと発表しました。これは、中東情勢の緊迫化により封鎖状態にあった同海峡の商船航行再開に向けた重要な一歩となります。VnExpressの報道によると、米中央軍(CENTCOM)も「プロジェクト・フリーダム」の一環として商船の支援活動を実施していることを明らかにしました。
メアスクが米海軍の護衛を公表
デンマークの海運大手メアスクは5月5日、米船籍の商船「アライアンス・フェアファックス」が米海軍の護衛を受け、ペルシャ湾からホルムズ海峡を無事に通過したと発表しました。この商船は、メアスクの米国子会社であるメアスク・ライン(MLL)が運航しており、米国政府や軍隊への輸送サービスを専門としています。
MLLは、米国籍の貨物船隊としては世界最大規模を誇り、緊急時や戦時には米国の軍事作戦に協力する「米国海事安全保障プログラム」に登録されています。同船は、2月28日の米国・イスラエルとイラン間の衝突激化とホルムズ海峡封鎖以来、ペルシャ湾域に留まっていました。
メアスクは、米軍から同社の船舶を湾岸地域から米海軍艦艇の保護下で移動させる計画について協議があったことを明かし、「米軍と連携して包括的な安全保障計画を策定した後、MLLと船長はホルムズ海峡通過を承認した」と述べています。船はその後、米軍部隊に同行され、無事にペルシャ湾を離れました。
米中央軍(CENTCOM)による「プロジェクト・フリーダム」
これに先立ち、米中央軍(CENTCOM)は、誘導ミサイル駆逐艦がホルムズ海峡を通過し、ペルシャ湾に入り、「プロジェクト・フリーダム」を支援したと発表していました。CENTCOMは、米船籍の商船2隻がホルムズ海峡を無事通過するのを支援したと述べていますが、具体的な護衛活動には言及していませんでした。
メアスクは、アライアンス・フェアファックスのホルムズ海峡通過が「スムーズに、何事もなく行われ、乗組員全員が無事かつ無傷であった」と報告しており、米軍の「プロフェッショナリズムと効果的な連携」を高く評価しています。現在、少なくとももう1隻の米船籍の商船がペルシャ湾域に留まっています。
CENTCOMは、ドナルド・トランプ(当時の)大統領が発動した「プロジェクト・フリーダム」作戦を支援するため、軍艦を派遣するなど、ホルムズ海峡を通じた商業海上交通の回復に向けた活動を積極的に展開していると説明しています。
ホルムズ海峡の地政学的重要性とエネルギー安全保障
ホルムズ海峡は、世界の石油輸送量の約20%を占めていた極めて重要な海上交通路であり、紛争により3月初旬に閉鎖されて以来、数百隻の船舶がペルシャ湾に立ち往生していました。この海峡の封鎖は、世界のエネルギー安全保障に深刻な影響を及ぼし、特に日本のようなエネルギー資源を中東に大きく依存する国々にとっては、海上交通路(シーレーン)の安全確保が喫緊の課題となっています。
中東から日本への石油やLNGの海上交通路の要衝であるホルムズ海峡の安全航行が脅かされる事態は、日本のエネルギー安全保障にとって大きな打撃となります。米国のインド洋安全保障戦略においても、ホルムズ海峡からマラッカ海峡に至る主要なシーレーンの重要性が強調されており、この地域の安定は世界経済に直結しています。
「プロジェクト・フリーダム」による航行安全の確立
ブラッド・クーパーCENTCOM司令官は、米軍が地域の商業海上交通を脅かす6隻の高速艇を沈め、イランによる商船へのミサイルやドローン攻撃を全て迎撃したと述べています。同司令官は、米軍が個々の商船を直接護衛するのではなく、ホルムズ海峡を通過する船舶のために「包括的な防衛態勢」として多層的な保護を展開していると説明しました。
「プロジェクト・フリーダム」は、過去数週間にわたり米軍が「特に洗練された技術」を用いてホルムズ海峡に航路を開通させた後に展開されたものです。この航路は、最終的にペルシャ湾から出るだけでなく、湾に入る船舶も利用できる双方向の航路となる予定です。
司令官は「特に洗練された技術」の詳細を説明していませんが、安全な航路を確保するためには、米軍が船舶の航行する経路から全ての機雷を除去し、イランのミサイルやドローンを迎撃するための防空網を確立する必要があると考えられます。これは、国際的な海上交通の自由とエネルギー供給の安定化に大きく貢献するでしょう。
ホルムズ海峡の封鎖と米海軍による護衛は、現代のエネルギー地政学における海上安全保障の脆弱性を浮き彫りにしています。この海峡は、世界のエネルギー供給の要衝であり、その安定は国際経済に直結するため、米国は「プロジェクト・フリーダム」を通じて、イランとの緊張関係が続く中でも、この重要なシーレーンの安全確保に介入せざるを得ない構造があります。特に、2026年2月末に米国とイスラエルによるイラン攻撃が開始され、イランがホルムズ海峡を封鎖したという背景は、この介入の必然性を強く示しています。
この動きは、ベトナムに進出する日系企業にとっても無関係ではありません。中東からのエネルギー供給の不安定化は、原油価格の変動やサプライチェーンの混乱を招き、製造業や物流コストに直接的な影響を与える可能性があります。ベトナムは輸入に頼る部分も多く、国際的な海上輸送の安全性は、ベトナム経済全体の安定、ひいては日系企業の事業計画にも大きな影響を与えるため、今後のホルムズ海峡情勢と米国の安全保障戦略の動向を注視することが求められます。


