ベトナムのテクノロジー大手VNGグループが、上場以来となる四半期で過去最高の純利益を記録しました。2022年末の上場以降、初の快挙となり、ベトナムのデジタル経済の活況を象徴しています。VnExpressが報じたところによると、オンラインゲーム事業が引き続き好調を維持し、利益を大きく牽引しました。
VNG、売上高32%増で過去最高益を達成
ベトナムを代表するテクノロジー企業VNGグループ(証券コード: VNZ)は、2024年第1四半期の純売上高が前年同期比32%増の約2兆8,000億ドン(約168億円)に達したと発表しました。これにより、税引き後利益は1,250億ドン(約7.5億円)となり、2022年末の株式市場上場以来、最も高い四半期利益を達成しました。
VNGのケリー・ウォンCEOは、同社の主要4事業のうち3事業が第1四半期に2桁成長を遂げたと述べています。特に、ザロペイ(Zalopay)の変動が最も大きく、117%の成長を記録。これは、新たな「タップ・トゥ・ペイ」決済ソリューションの提供や、アジア5カ国での国際QRコード決済ネットワークの拡大が寄与しました。
オンラインゲームが利益の柱、デジタル決済も急成長
VNGの収益構造において、オンラインゲーム事業は依然として圧倒的な割合を占めており、全体の約69%に相当する約1兆9,400億ドン(約116億円)を生み出しました。次いで、メッセージングアプリのザロ(Zalo)およびAIプラットフォームが合計5,060億ドン(約30億円)で第2位に。ザロペイと法人向けAIソリューション事業もそれぞれ2,160億ドン(約13億円)、1,700億ドン(約10億円)と堅調に推移しました。
特にベトナムでは、ジェトロの報告にもあるように、ASEAN地域全体でデジタル経済が急速に発展しており、オンラインゲームやモバイルアプリケーションサービス、オンライン広告の市場が拡大しています。VNGの成長は、この地域全体のデジタル化の波に乗っていることを示しています。
5期連続赤字からの脱却、厳格なコスト管理が奏功
VNGは第1四半期に1兆1,100億ドン(約67億円)の売上総利益を計上し、利益率は約40%に達しました。これは前年同期の37.5%から大幅な改善です。ケリー・ウォンCEOは、主要4事業の効率向上に加え、厳格な運用規律とコスト管理が今回の高水準の利益に繋がったと説明しています。
近年、VNGの財務状況は着実に改善しています。昨年は2,630億ドン(約16億円)の連結損失を計上し、5年連続の赤字となりましたが、この額は2024年の計画の4分の1に過ぎず、経営陣が以前予測していた額の半分にも満たないものでした。これは、ベトナムのスタートアップ投資が件数・金額ともに増加傾向にある中で、企業が財務健全性を重視し始めている動きと合致しています。
インターネットカフェからベトナムを代表するテック企業へ
VNGは2004年、ホーチミンのインターネットカフェで「ビナゲーム(VinaGame)」として設立されました。当初はロールプレイングゲームの配信を主軸としていましたが、その後、メッセージングサービス、電子決済、オンライン広告、そして人工知能(AI)へと事業領域を多角的に拡大してきました。
現在、VNGグループは37の直接・間接子会社を擁し、従業員数は3,300人を超えます。第1四半期末時点の総資産は10兆7,300億ドン(約6,440億円)を超え、未分配利益は7,400億ドン(約44億円)に達しています。KPMGの報告にあるように、ベトナムはアジア太平洋地域のニューエコノミービジネスにおいて重要な役割を担っており、VNGはその中心的な存在として、ベトナムのデジタル経済成長を牽引しています。
今回のVNGの過去最高益は、ベトナムがASEAN地域におけるデジタル経済の新たなハブとして急速に台頭している構造的な背景を色濃く反映しています。オンラインゲーム、モバイルアプリ、AI、フィンテックといった分野は、同国政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)政策と、若年層の多い人口構成がもたらす旺盛なデジタル需要によって、持続的な成長基盤を確立しつつあります。特に、金融包摂の観点からeKYC(電子本人確認)を伴うデジタル銀行やモバイル決済の普及は、農村部を含む広範な層に新たな金融サービスを届け、経済活動を活発化させています。
在住日本人や日系企業にとって、VNGのような国内大手テック企業の躍進は、ベトナム市場における消費者のデジタル慣習がより一層定着し、高度化していることを示唆します。ザロペイの国際QR決済ネットワーク拡大は、現地でのビジネス展開や生活において、キャッシュレス決済の利便性が向上し、今後の投資や事業戦略を検討する上で、デジタルインフラと消費者の行動変容を考慮に入れる必要性が高まっていると言えるでしょう。ベトナムのデジタル化の波に乗り遅れないよう、常に最新の動向を把握することが重要です。


