ベトナムで交通インフラの保証期間を現在の2年から10年に延長する提言が浮上しています。建設大手ソンハイグループがインフラの実際の寿命に見合うよう期間延長を訴え、これに対し建設省は慎重な姿勢を示しているとVnExpressが報じました。
交通インフラ保証期間10年への提言
ベトナムの建設大手ソンハイグループは最近、交通インフラの最低保証期間を現在の2年から10年に延長するよう提言しました。これは、現在の規定がインフラ構造物の実際の寿命に見合っていないとの認識に基づくものです。ベトナムのインフラ整備は近年急速に進んでいますが、その品質確保と長期的な維持管理が課題となっています。
建設省の慎重姿勢と課題
建設省のル・クエット・ティエン経済・建設投資管理局長は、現行法では特別級および1級の公共投資プロジェクトに対し、最低2年の保証期間を義務付けていると説明しました。しかし、プロジェクトの性質に応じて投資家と請負業者が合意すれば、期間の延長は可能であるとも述べています。
建設省は、保証期間を義務的に10年に延長する場合、企業や投資家への包括的な影響評価が不可欠であると強調しています。特に、施工業者と管理・運営業者の間で責任の所在を明確にする必要があるとの見解です。ティエン局長は、保証期間の延長自体には反対しないものの、各工事項目に義務的な規定を設ける場合は、綿密な調査と十分な影響評価が求められると述べました。
また、保証期間が10年に延長された場合、定期的なメンテナンスサイクルと重なる可能性があり、その際に損傷が請負業者の保証責任に属するのか、それとも管理部門のメンテナンス責任に属するのか、責任の分離が困難になるという懸念も示されています。これは、タイ国がICTを活用した効率的なインフラ維持管理システムを導入し、老朽化対策に取り組んでいる事例と比較しても、ベトナムにおける複雑な課題と言えるでしょう。
一律保証期間の困難さとコスト増大
タンロンプロジェクト管理局のディン・コン・ミン局長は、各工事パッケージには寿命や技術的特性が異なる多くの項目が含まれるため、一律の保証期間適用は難しいと指摘します。例えば、コンクリート構造物は10年の保証が可能でも、道路標示の塗装は運用開始後約2年で劣化する可能性があるため、もし一律に10年保証を義務付ければ、工事費用の再計算が必要になるとの見解です。
鉄道プロジェクト管理局の代表者も、保証期間が長くなればなるほど投資家の責任が大きくなると述べています。故障が発生した場合、投資家は原因を特定し、メンテナンス資金を使用するか、請負業者に保証履行を求めるかを決定しなければなりません。請負企業の視点からは、保証期間の延長は、長期にわたる責任、保証、リスク処理に関する多くの条項を追加する必要があるため、契約交渉が複雑化すると指摘されています。
ベトナム道路交通インフラ投資家協会のチャン・チュン会長は、すべての交通プロジェクトに10年の保証を義務付けた場合、保証金、保険料、リスク引当金、そして入札価格が大幅に増加する可能性があると警告しています。燃料、資材、輸送費、借入金利の高騰に直面している建設業界にとって、保証期間の延長は総投資額をさらに増加させ、プロジェクトの効率に悪影響を及ぼす恐れがあります。
品質確保のための保証金制度
協会およびプロジェクト管理局の代表者たちは、工事契約額の3〜5%を保証金として保留する現行の制度は、請負業者の工事品質に対する責任を確保するために不可欠なメカニズムであると強調しています。この資金は、請負業者が遅延したり、履行能力が不足したりした場合に、投資家が迅速に損傷を修復するための財源となり、インフラの安全性と円滑な交通を確保する上で重要な役割を果たしています。
今回の交通インフラ保証期間延長の議論は、急速な経済成長を遂げるベトナムにおけるインフラ整備の構造的課題を浮き彫りにしています。これまで建設コストの抑制や工期の短縮が優先されてきた側面もある中で、長期的な視点での品質確保と維持管理の重要性が高まっています。日本企業が持つインフラメンテナンス技術や、高品質な建材(日本製鉄の鉄鋼製品など)への需要も、今後ベトナムで高まる可能性があります。
この動きは、ベトナムで事業を展開する日系建設企業や、インフラ投資を検討する企業にとって、契約条件やリスク評価に大きな影響を与える可能性があります。保証期間の延長は、請負業者の責任範囲を広げ、コスト増を招く一方で、高品質な施工と長期的な信頼性を重視する企業にとっては競争優位につながる機会ともなり得ます。ベトナムのインフラ投資環境は、今後、さらに品質と持続可能性を重視する方向へとシフトしていくでしょう。


