ベトナムのトー・ラム国家主席は、中国との技術協力をAI、半導体、高速鉄道などの戦略的分野で強化する意向を表明しました。4月14日に北京で開催された会談で、同主席は政治的信頼の深化と二国間協力の新たな高みを目指すことを強調しました。VnExpressが報じたところによると、両国は南シナ海問題についても対話を通じて適切に対処していく姿勢を示しています。
北京会談で技術協力とインフラ整備を要請
トー・ラム国家主席は、北京の人民大会堂で中国共産党中央政治局常務委員であるワン・フーニン全国政治協商会議主席と会談しました。ベトナム外務省によると、トー・ラム主席はこの訪問を通じて、政治的信頼をさらに深め、包括的かつ広範な連携により二国間協力に新たな高みをもたらしたいと表明。両国の発展目標を共に実現するため、信念、発展利益、文化、国民間の三つの繋がりを強化するよう提案しました。
トー・ラム主席は、交通インフラ、特に鉄道建設、デジタル変革、AI、量子技術、半導体といった戦略的技術分野での協力強化を呼びかけました。これは、従来の貿易や投資といった協力分野に加え、新たな成長分野を共同で開拓する狙いがあります。また、質の高い人材育成のための教育協力も提案されました。
南シナ海問題と友好関係の推進
トー・ラム主席は、ベトナムと中国間の友好関係や、両国のドイモイ(刷新)および改革開放の成果について、交流と宣伝を強化することも提案しました。さらに、南シナ海における意見の相違を適切に管理・処理するための努力を共にし、相互理解と友好感情の促進に貢献することを強調しました。笹川平和財団の報告書にもあるように、南シナ海の領有権問題は両国関係の重要な側面であり、対話を通じた解決が模索されています。
中国側も協力強化に前向きな姿勢
ワン・フーニン全国政治協商会議主席は、中国がベトナムとの関係を近隣外交政策における優先方向として常に重視していることを強調しました。同主席は、二国間関係の発展方向性をしっかりと把握し、特にインフラ接続とAI、デジタル経済の発展を優先し、戦略的連携をさらに強化するよう提案しました。
ワン・フーニン主席は、中国がベトナムの高品質な農産物などの輸入拡大に前向きであり、中国企業のベトナムへの投資拡大と互恵協力も奨励すると述べました。これは、ベトナム経済にとって重要な貿易パートナーである中国との経済関係のさらなる深化を示唆しています。
国民交流と多国間イベントへの共同支援
中国全国政治協商会議は、ベトナム祖国戦線との友好関係を強化し、特に若者世代間の国民交流を促進する用意があることを表明しました。教育、医療、地方交流の分野での協力を拡大し、両国間の友好交流に新たな章を開くことを目指します。また、中国で開催される2026年APECおよびベトナムで開催される2027年APECを含む、多国間イベントの成功に向けた相互支援も表明されました。
高速鉄道視察と在留ベトナム人コミュニティへの激励
同日、トー・ラム国家主席は夫人および代表団と共に、中国のベトナム大使館を訪問し、大使館職員や中国在住のベトナム人コミュニティと面会しました。
トー・ラム主席は、北京国際空港到着後、高速鉄道で河北省シオンアン新区を視察したことを共有しました。同主席は、中国の現代的な交通インフラ、特に広範囲に接続された鉄道システムに感銘を受けたと述べました。このインフラは、人々の移動を便利かつ迅速、安全にし、移動時間と労力を大幅に削減し、生産性を向上させ、様々な産業分野の発展に寄与していると評価しました。これは、ベトナムが交通・インフラ開発において中国の経験を参考にしたいという意向を示唆している可能性があります。
トー・ラム主席は、中国在住のベトナム人コミュニティに対し、互いに助け合い、積極的に社会に溶け込み、現地の法律を遵守し、受け入れ国の発展に貢献するとともに、常に故郷を忘れないよう激励しました。在中華人民共和国ベトナム大使のファム・タイン・ビン氏によると、中国には10万人以上のベトナム人が居住しており、そのうち2万3千人以上が留学生です。
今回のベトナムと中国の会談は、南シナ海の領有権問題というデリケートな背景を抱えつつも、経済的・技術的な協力関係を深化させようとするベトナムの戦略的な姿勢を示しています。特にAIや半導体、高速鉄道といった分野での中国との連携は、ベトナムが目指すデジタル変革とインフラ現代化において、中国の技術力と投資を重要な要素と捉えていることを浮き彫りにします。JICAの資料が示すように、ベトナムは中国との国境経済特区開発や地理的連結性強化にも意欲を見せており、両国関係は複雑な多面性を持っています。
この協力強化は、ベトナム在住の日本人にとって、インフラ整備の加速による交通利便性の向上や、デジタル化の進展による行政サービスの改善といった恩恵をもたらす可能性があります。しかし同時に、中国の影響力拡大は、サプライチェーンや地政学的なリスク評価において考慮すべき要素となります。特に、南シナ海情勢の動向は常に注視する必要があり、日本企業や在住者は、現地の情報収集を怠らず、変化する地域情勢に対応できる柔軟な事業戦略や生活防衛策を講じることが重要です。


