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バンコク発:ROVULA、深海探査AUVでASEAN市場席巻

※画像はイメージです(AI生成)

タイのディープテックスタートアップROVULAが、自社開発の深海探査AUV「Xplorer」でASEAN市場を席巻し、3年以内の黒字化を目指しています。PTT Exploration and Production(PTTEP)とカセサート大学の連携により開発されたこの技術は、効率的かつ安全な海底パイプライン検査を実現し、既にマレーシアでの収益が過半を占めています。Prachachat.netが報じたところによると、ROVULAはインドネシアへの進出も視野に入れ、将来的にはアジア全域への展開を目指しています。

タイ発「Xplorer」が深海探査の常識を覆す

タイの首都バンコクで開催された「Matichon X AIS Forum 2026: Innovation Changes Thailand」セミナーで、ROVULA(ロヴーラ)タイランド共同創設者のパッチャノム・フンスワン氏が登壇し、同社の革新的なディープテック開発について発表しました。ROVULAは、タイ国営石油会社PTT傘下のPTT Exploration and Production(PTTEP)の自動ロボットスタートアップです。

同社が開発した自動潜水探査機「Xplorer」は、従来の有線式ROV(遠隔操作無人探査機)が抱えていた海底ガスパイプライン検査におけるリスク、コスト、時間の問題を解決するために生まれました。PTTEPとカセサート大学が8年以上の歳月をかけて共同開発したこのAUV(自律型無人潜水機)は、タイ人エンジニアの技術の結晶であり、海底油田・ガスパイプラインの検査効率と安全性を大幅に向上させます。2024年末からは、国内外で商業サービスを開始しています。

ASEAN市場を深掘り:マレーシアで収益過半を達成

ROVULAタイランドの経営陣は、2025年の収益が2024年の約1億4500万バーツ(約7億2500万円)を上回るとの見通しを示しました。これにより、同社は親会社からの財政的支援なしに運営できるレベルに達し、今後3年以内には黒字化を達成する見込みです。

注目すべきは、この収益の半分以上が海外、特にマレーシアでの事業によるものである点です。ROVULAは現在、インドネシアへのサービス提供についても交渉を進めており、将来的にはASEAN諸国全体への事業拡大を目指しています。タイ国内でのガスパイプライン探査・修理プロジェクトの有無によって収益は変動するものの、全体としてはマレーシアからの収益が優位な状況が続いています。

AIとマルチセンサー融合:次世代の海底検査技術

「Xplorer」は、従来の海底パイプライン検査技術の限界を克服するために設計されました。最大300メートルの水深における高圧環境下での作業を可能にする高度なエンジニアリングが施されています。埋設されたパイプラインでも正確にナビゲートできるよう、Computer VisionとAI技術を駆使して画像を解析し、パイプラインの自動追跡を実現します。

さらに、Multi-sensor Fusion技術により、ソナーデータと事前にアップロードされたパイプラインマップの情報を統合し、最高の精度で検査を実行します。探査で得られたデータはすべてWebアプリケーションにアップロードされ、ユーザーはどこからでも高解像度ビデオ、ソナー画像、各ポイントのパイプライン腐食グラフ、パイプラインの3Dデジタルツインモデル、イベント記録などを確認できます。将来的には、これらのデータレビューもすべてAIシステムに移行する計画です。現在、ROVULAは商用モデルV.2に進化し、タイ国内およびマレーシア(サラワク州)で700km以上のパイプライン検査実績を持ち、アジアそして世界市場へのサービス拡大を計画しています。

無人潜水システムエコシステム構築と新たな市場機会

パッチャノム氏は、既存の高度な技術をさらに多様なビジネスに展開できると語ります。ROVULAの究極の目標は、完全な「無人潜水システム」エコシステムの構築です。近い将来には、海底ドッキングステーション(Docking Station)を開発し、どこからでも遠隔操作を可能にすることで、オペレーターが船に乗る必要なく、オフィスなどから指示を出せるようになります。この海底ドッキングステーションにより、AUVは24時間365日連続稼働が可能となり、大型支援船のリース費用、危険なオフショア作業員の人件費、そして大型支援船の使用によるCO2排出量を削減できます。

この探査技術は、PTTEPでの作業中に見つけた課題から生まれ、カセサート大学の学生たちとの共同研究を経て、8年以上にわたる開発の末にスタートアップとして独立しました。このディープテックは、防衛分野(対潜水艦技術、機雷探査)や海洋科学(資源探査、環境モニタリング)など、新たな市場への拡大も視野に入れています。これは、タイが「中所得国の罠」を乗り越え、高所得国へ移行するための重要なイノベーションモデルとなるでしょう。

タイ発ディープテック成功の鍵:産学連携と人材育成

ROVULAの「ディープテック」を新たなビジネスとして成功させた鍵は、以下の6点であるとパッチャノム氏は分析しています。

  1. 産業界と学術界の強固な連携: PTTEPとカセサート大学が密接に協力し、具体的な成果を追求。
  2. スタートアップとしての分離戦略: チームの機動性を高め、業務への集中力と市場競争力を向上。
  3. 親会社(PTTEP)からの長期的な支援: 資金だけでなく、アイデア交換、目標設定、事業方向性に関するサポート。
  4. 深い専門知識: 石油・ガスパイプライン検査に関するチームの専門知識と経験がプロジェクトの核心。
  5. 実環境でのテスト機会(サンドボックス): PTTEPの実フィールドでロボットを運用する機会を得て、現場で発生する問題を解決。
  6. タイ人エンジニアの潜在能力への信頼: 大学4年生からの人材育成プログラムを通じて、イノベーションを創出し、国の重要な人材を育成。

タイは「中所得国の罠」からの脱却を目指し、科学技術・イノベーションへの投資を加速させています。今回のROVULAの成功は、JSTの報告が指摘する通り、高度人材育成に注力してきたタイが産学連携を通じてディープテック分野で具体的な成果を出せることを示す好例です。政府の支援と民間企業、そして教育機関が一体となって、高付加価値産業を創出するエコシステムが機能し始めていると言えるでしょう。

在タイ日本人や日系企業にとって、このようなタイ発のディープテックの進展は、今後の投資戦略や事業展開を考える上で重要な要素となります。タイが単なる製造拠点から、AIやロボティクスといった先進技術の開発拠点へと進化する可能性を示しており、現地企業との連携や、タイの技術系人材の採用・育成といった視点も、より一層重要になってくるでしょう。

AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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