ベトナム鉄道公社は今夏の列車運賃を、燃料価格の変動を理由に昨年比で5〜10%引き上げると発表しました。これにより、ハノイ発着を含む夏の旅行シーズンにおける交通費の上昇が懸念されています。VnExpressが報じたところによると、この価格調整は財政バランスの確保とサービス品質の維持を目的としているとのことです。
ベトナム鉄道、夏期運賃を最大10%値上げ
ベトナム鉄道公社(Vietnam Railways Corporation)は、今年の夏期(5月15日から8月16日)の列車運賃を、燃料価格の変動を理由に昨年から5〜10%値上げすると発表しました。この措置は、財政の健全性を保ちつつ、乗客へのサービス品質を維持するために不可欠であると説明されています。すでに販売開始から3週間で、供給される150万席のうち約15万席が予約済みとなっています。
夏の旅行シーズンに向けた運行体制強化
夏の旅行シーズンに向けて、ベトナム鉄道は運行体制の強化を図っています。毎日運行するトンニャット(Thong Nhat)号はSE1/2、SE3/4、SE5/6、SE7/8、SE9/10の5往復に加え、SE11/SE12の追加運行も検討されています。さらに、ハノイからビン(Vinh)およびダナン(Da Nang)、サイゴン(Sai Gon)からダナン、ニャチャン(Nha Trang)、ファンティエット(Phan Thiet)、そしてフエ(Hue)からダナンを結ぶ区間列車も7往復維持されます。
週末には、サイゴン-クイニョン(Quy Nhon)、ニャチャン-ダナン、ハノイ-ドンホイ(Dong Hoi)の各路線で4往復の列車が増便される予定です。ベトナムでは急速な経済成長と都市化が進んでおり、公共交通機関は増大する需要に対応するため、インフラ強化と効率的な運行が求められています。
AI活用による柔軟な運賃システム導入
ベトナム鉄道は、5月1日より電子チケットプラットフォーム上でAIを活用した柔軟な価格設定システムを導入しました。このシステムは、予約データを分析し、長距離チケットが販売された後に残っている短距離区間の空席に対して、価格を自動的に調整するものです。試験運用期間(4月22日〜29日)では、15〜35%の割引が適用され、9,376席が販売され、乗客には総額5億2300万ドン(約313万8000円)が直接還元されました。この革新的なシステムは、交通弱者にも安価なモビリティを提供し、移動の利便性を向上させるというベトナム政府の公共交通政策にも合致しています。
早期購入割引と直前購入割増
需要に応じた価格調整メカニズムに加え、ベトナム鉄道は早期購入割引政策も継続しています。具体的には、列車出発の20日以上前にチケットを購入した乗客は、運賃が5〜10%割引されます。この割引は、トンニャット号SE1からSE12(900km以上)、サイゴン-ダナン間のSE21/22(600km以上)、サイゴン-クイニョン間のSE29/30(400km以上)、サイゴン-ニャチャン間のSNT1/2(300km以上)などの主要路線に適用されます。また、ベトナム英雄の母、革命功労者、傷病兵、高齢者、学生、子供といった社会政策対象者は、40日以上前の購入で引き続き優遇されます。
一方で、列車出発の48時間以内にチケットを購入した場合、1,000km未満の区間では7%、1,000km以上の区間では5%の割増料金が適用されます。この価格戦略は、収益の最大化と座席稼働率の向上を目指し、早期予約を促すためのものです。
多様な割引制度の継続
ベトナム鉄道は、社会政策対象者への優遇措置を継続するほか、往復割引、団体割引、早期購入割引など、具体的な条件に応じた柔軟な割引プログラムを実施しています。公共交通機関の維持と発展は、地域経済の活性化と社会全体の持続可能性に貢献するという政府の長期的なビジョンに沿っており、これらの割引制度はより多くの人々が鉄道を利用しやすくするための重要な施策と言えるでしょう。
ベトナム鉄道公社が夏期の運賃値上げに踏み切った背景には、燃料価格の変動だけでなく、公共交通事業全体の持続可能性を確保するための構造的な課題がある。ベトナムでは急速な経済成長と都市化が進む一方で、老朽化したインフラの維持・更新費用が増大している。運賃の柔軟な価格設定は、収益性を高めつつ、AIを活用した効率的な座席管理を通じて、サービス品質を維持し、長期的なインフラ投資を可能にするための戦略的な一歩と言える。これは、他のアジア諸国でも見られる公共交通機関のサステナビリティ確保に向けた動きと共通している。
この運賃改定は、ベトナム在住の日本人や観光客にとっても無視できない影響がある。特に夏の旅行シーズンに鉄道を利用する際には、早期予約割引を積極的に活用することで、交通費を抑えることが可能だ。逆に、急な移動や直前での予約は、割増料金が発生するため、注意が必要となる。AIを活用した価格変動システムは、利便性向上と同時に、賢い利用が求められる新しい旅行スタイルを確立しつつあると言えるだろう。


