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ハノイ旧市街、低排出ゾーン導入で住民に困惑広がる

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ハノイのホアンキエム区で計画されている低排出ゾーン(LEZ)の試験導入に対し、住民や零細事業者から懸念の声が上がっています。7月1日からの実施が予定されており、週末にはホアンキエム湖周辺の主要11路線でガソリンバイクの通行が禁止される見込みです。VnExpressが報じたところによると、特に生計を立てる人々にとって、電動バイクへの移行費用や充電インフラの不足が大きな課題となっています。

ハノイ旧市街に導入される低排出ゾーンの概要と背景

ベトナムの首都ハノイでは、2011年のマクロ経済の安定重視への政策転換以降、急速な経済成長と都市化が進んでいます。しかし、それに伴い交通渋滞や大気汚染といった都市問題も深刻化しており、環境負荷の軽減が喫緊の課題となっています。今回、ハノイ市人民委員会が提案する低排出ゾーン(LEZ)は、この問題に対処するための一環として、ホアンキエム区の旧市街中心部で試験的に導入されるものです。

具体的には、7月1日より、ホアンキエム湖周辺のリーナムデー通り、ハンマー通り、ルオンバンカン通り、ハンガイ通り、ハンブオム通りなど、主要な11路線において週末の特定の時間帯にガソリンバイクの通行が禁止される予定です。この政策は、都市の空気をきれいにし、より持続可能な都市環境を創造するための第一歩と位置づけられています。

生計を立てる人々への影響:デリバリー運転手の苦悩

この新政策は、旧市街で生計を立てる多くの住民に直接的な影響を与えます。例えば、42歳のミン・カンさんは、ドンスアン市場から旧市街の小売店へ商品を運ぶデリバリー運転手です。彼は毎日、週末を含め多くの荷物を運んでおり、この禁止措置により「確実に顧客を失い、収入が減少する」と語っています。

カンさんの月収は900万〜1,000万ドン(約5万4,000円〜6万円)ですが、食費や生活費、2人の子供の学費を差し引くと、電動バイクを新たに購入する余裕はほとんどありません。彼は電動バイクについて調査したものの、現在の経済状況では手が届かないのが現状です。

観光ドライバーの不安:週末の収入源が途絶える

ホアンキエム区ハンブオム通りに住む43歳のマン・フンさんも、観光客を乗せてホアンキエム湖周辺や旧市街を案内するドライバーです。彼の収入は週末の観光客に大きく依存しており、特に週末は最も稼ぎ時だと語ります。しかし、規制が導入されれば、「週末の収入が丸ごと失われる」と不安を募らせています。

フンさんも電動バイクへの切り替えを検討していますが、3,000万〜4,000万ドン(約18万円〜24万円)という購入費用は決して安くありません。また、彼が住む路地は数十世帯が共有する狭い通路であり、各家庭が複数の電動バイクを充電すれば、電線が絡み合い、雨季にはショートや火災のリスクもあると指摘しています。さらに、水害の多い旧市街では、電動バイクの電気系統が故障した場合の修理費用がガソリンバイクよりも高額になる可能性も懸念しています。

一般住民の不便と電動バイクへの課題

レーライ通りに住むラン・フオンさんも、この政策自体には賛成しつつも、具体的な不便さを想像し始めています。週末に外出する際は、公共交通機関の停留所まで歩く必要があり、親戚が訪れる際も遠くの駐車場に車を停めて歩いてこなければなりません。

フオンさんも電動バイクへの切り替えを考えていますが、ホアンキエム区の他の住民と同様に、高い変換費用や、政府からの支援策が未発表であること、公共充電ステーションやバッテリー交換所の設置場所がまだ計画段階であることなどが障壁となっています。また、電動バイクのバッテリーの耐久性や1回の充電での走行距離についても懸念を抱いています。「低排出ゾーンが正式に導入されて初めて、住民が直面するすべての問題が見えてくるでしょう」と彼女は語っています。

ハノイ市の調査結果と市民の意見

ハノイ市人民委員会の低排出ゾーン計画案によると、関連する組織や個人、住民を対象とした意見聴取が行われました。1,250件以上の回答(有効回答1,010件)からは、環状1号線とその周辺地域の住民が依然としてガソリンバイクや化石燃料車に大きく依存しており、電動車両や公共交通機関の利用率は低いことが明らかになりました。

住民は公共交通機関による「グリーンな転換」を支持しているものの、代替手段が不十分な状況での個人車両の制限や課金、禁止措置については慎重な姿勢を示しています。企業も低排出ゾーンの方向性には賛成していますが、移行費用を削減し、事業への影響を抑えるために、早期のロードマップ公表と、優遇融資、料金・手数料の免除・減額、充電インフラ整備などの支援策を求めています。

調査結果は、低排出ゾーンの導入が、公共交通インフラの整備や車両転換支援策と並行して、適切なロードマップに沿って実施されるべきであることを示唆しており、社会的な合意形成と住民生活・企業活動への影響を最小限に抑えることが重要であると報告書は述べています。

今後の見通し:政府からの支援策に期待

低排出ゾーンの試験導入まであと2か月。ミン・カンさん、マン・フンさん、ラン・フオンさんをはじめとする多くの住民は、政府が車両転換支援策や電動バイクの充電ステーションネットワークについて早期に発表することを心待ちにしています。ハノイ市が持続可能な都市へと発展していくためには、環境保護と住民の生活維持のバランスを取る包括的なアプローチが求められています。

ハノイのホアンキエム区における低排出ゾーン導入の動きは、ベトナムが急速な経済発展に伴う都市化の課題、特に大気汚染と交通渋滞にどう向き合うかという構造的な問題を浮き彫りにしています。JICAの分析ペーパーにもあるように、ベトナム政府はマクロ経済の安定重視へと政策方針を転換しており、持続可能な都市開発は国家的な優先事項です。しかし、政策の恩恵が公平に分配されず、特に低所得層の生計に直接的な打撃を与える可能性は、環境政策と社会公平性の間で揺れ動く途上国の共通の課題と言えるでしょう。

このニュースは、ハノイ在住の日本人にとっても、旧市街での移動手段や観光計画に影響を与える可能性があります。週末に旧市街を訪れる際は、ガソリンバイクの乗り入れ規制に注意し、公共交通機関の利用や徒歩での散策を検討する必要が出てくるでしょう。また、将来的に電動バイクへの切り替えを検討している場合は、充電インフラの整備状況や政府の支援策の動向を注視することが重要になります。

  • ホアンキエム湖周辺: ハノイの中心地で、週末は歩行者天国になることも多い。湖畔の散策や周辺のカフェ巡りがおすすめ。
  • ハノイ旧市街: 伝統的な家屋やショップが並び、ベトナムの歴史と文化を感じられるエリア。ローカルグルメや雑貨探しが楽しめる。
  • ドンスアン市場: 旧市街最大の屋内市場で、地元の生活を垣間見ることができる。活気あふれる市場でベトナムの日常を体験。
AsiaPicks 編集部
AsiaPicks 編集部
タイ・ベトナム・インドネシアの最新ビジネスニュースを日本語で毎日配信。現地メディアの一次情報をもとに、日系企業・駐在員の意思決定に役立つニュースを厳選してお届けします。
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