ベトナムの首都ハノイ市が、スタートアップ企業を支援するため2300億ドン(約13.8億円)規模のベンチャー投資ファンドを設立しました。このファンドは官民連携モデルで運営され、デジタル技術やスマートシティなど12の優先分野に投資することで、市内のイノベーションエコシステム強化を図ります。VnExpressが報じたところによると、市は最大6000億ドン(約36億円)を出資する方針です。
ハノイ市、スタートアップ支援に本腰
ハノイ市は、決議2146/QĐ-UBNDに基づき、スタートアップ企業への投資を目的としたベンチャーファンドを設立しました。このファンドへの市からの出資は段階的に行われ、最大で6000億ドン(約36億円)に達しますが、ファンド総額の49%を超えないとされています。残りの資金は、民間投資家や国際投資家からの出資によって賄われます。
官民連携でイノベーションを加速
このファンド「HVCF(ハノイ・ベンチャー・キャピタル・ファンド)」は、官民連携モデル(PPP)で運営されます。国営資本が主導的な役割を果たし、民間および国際的な資源と連携することで、市場原理に基づいた効率的な投資を目指します。ASEAN諸国では、中長期的な産業育成政策が各国政府によって推進されており、ベトナムでも「ドイモイ(刷新)政策」以降、市場経済化と対外開放化が進められてきました。HVCFの設立は、こうした国の政策と連動し、特に首都ハノイにおける有望なスタートアップの成長を強力に後押しするものです。
重点投資分野と資金アクセス条件
HVCFが優先的に投資する分野は、デジタル技術、IT・通信、バイオテクノロジー、新素材、製造・自動化、環境・気候変動対策、スマートシティ、スマート教育・医療、バイオ医療技術、フィンテック、ハイテク農業の12に及びます。これらの分野は、ベトナムが今後の経済成長を牽引する上で不可欠な要素と位置付けられています。資金アクセスを希望する企業は、革新能力、創設チームの質、製品の商業化能力、そして資金回収可能な事業計画といった基準を満たす必要があります。特に、ハノイ市内のインキュベーターやイノベーションセンターから生まれたプロジェクトが優先されます。
厳格なリスク管理と評価体制
ファンドの投資プロセスは、プロジェクトの探索、選別、評価、決定、そして実行という複数の段階で構成されます。投資後も、対象企業は継続的なモニタリング、支援、定期的な評価を受けることになります。また、リスク管理と撤退(デファンド)のメカニズムも明確に規定されており、目的外使用が発覚した場合には、資金の停止や回収が行われる可能性があります。HVCFは法人格を持たず、運営期間は10年間。5年後に中間評価、10年後に最終的な試験運用結果が総括される予定です。
今回のハノイ市によるベンチャーファンド設立は、ベトナム政府が長年推進してきた「ドイモイ政策」の延長線上にあり、特にハイテク産業育成への強い意欲を示しています。ASEAN諸国全体でスタートアップエコシステムの構築が進む中、ベトナムもまた、市場規模の小ささや人材育成における課題を抱えつつも、官民連携を通じてイノベーションを加速させようとする構造的な動きが見て取れます。特に、スマートシティやデジタル技術といった分野への重点投資は、今後のベトナム経済の方向性を明確に示すものです。
このファンド設立は、ベトナムへの進出を検討している日系企業や、すでに現地で事業を展開している企業にとっても新たなビジネス機会をもたらす可能性があります。特に、優先分野に合致する技術やノウハウを持つ企業にとっては、現地スタートアップとの協業や投資を通じて、ベトナム市場での足がかりを築くチャンスとなります。在住日本人にとっても、新たな雇用創出や生活インフラのスマート化など、間接的な恩恵が期待されるでしょう。


