ベトナムの首都ハノイでは、急速な都市開発に伴い建設廃棄物が急増しており、その処理が大きな課題となっています。2030年までの処理計画は大幅に遅延し、処理施設の不足とリサイクル推進の障壁が重なり、不法投棄が横行しているとVnExpressが報じました。
ハノイの廃棄物処理計画、大幅な遅延
ハノイ市は、2030年までの固形廃棄物処理計画において、都市の北部、南部、西部に合計26か所、約108ヘクタールの建設廃棄物処理場を配置する予定でした。しかし、計画発表から10年以上が経過したにもかかわらず、ほとんどの施設が未着手のままです。
具体的な状況としては、バンノイ(旧ドンアイン県)の埋立地は2021年から受け入れを停止しています。ホアイドゥック、ダンフオン、トゥオンティンで承認された5か所の処理場は、洪水対策規制や大規模な土地収用費用がネックとなり、建設が進んでいません。また、ドンアインとメーリンでの2つのプロジェクトも、土地紛争や投資家選定の遅れにより長年手続きが滞っています。残りの16か所の処理場については、用地確保の困難さ、巨額の投資費用、そして埋立技術の魅力の低さから、投資方針すら承認されていない状況です。
急増する建設廃棄物と処理能力の限界
ハノイ市では、通常時で1日あたり約2,100トンの建設廃棄物が発生しており、これは生活廃棄物の約3分の1に相当します。しかし、現在進行中の1,428件もの大規模プロジェクト(紅河に架かる4つの橋、環状道路の整備、国道1号線・6号線の拡幅など)により、その量は1日あたり約1万トンと4〜5倍に急増しています。今年に入ってからの総量はすでに150万トンに達しており、このペースは今後も続くと見られています。
一方で、グエンケー、イエンソー、フックロイ、トゥーラムの4か所の既存処理施設では、埋立と粉砕リサイクルを合わせても1日あたり約1,670トンしか処理できません。特に、ファップバン-カウジェー交差点近くにある広さ6.5ヘクタールのイエンソーの粉砕処理場はすでに過負荷状態にあり、すべての敷地が廃棄物と粉砕後の骨材で埋め尽くされています。数十台の車両と掘削機が動員され、滞留した骨材の撤去作業が行われています。
さらに、約20キロメートル離れた旧ドンアイン県グエンケーの建設廃棄物埋立地も満杯に近づいています。この埋立地は空き地を利用しており、多くの工場が点在する地域に位置していますが、収容能力は残りわずかとなっています。
リサイクル推進の障壁:法制度と技術の課題
建設廃棄物のリサイクルを阻む大きな要因の一つは、法制度の不備です。2014年の環境保護法および関連政令、建設省の通達08/2017では、建設現場での分別が義務付けられていました。しかし、2022年に施行された2020年の環境保護法により通達08が失効し、新しい法律の施行細則である政令08/2022では、現場での分別責任が具体的に規定されていません。
建設省は、建設業者に対し、現場での建設廃棄物の分別や粉砕設備の設置を指導していますが、都市部の建設現場では敷地が限られており、分別スペースの確保が困難なのが実情です。このため、ほとんどの廃棄物はコンクリート、レンガ、土砂、金属、汚泥などが混ざった状態で排出されます。処理施設に運ばれた後、企業は追加の人件費と費用をかけて再分別しなければならず、結果的に再生品の価格が高騰し、市場での競争力を失っています。
ベトナム建設資材研究所の専門家グエン・バン・ホアン氏によると、品質が不均一なため、粉砕後の材料のほとんどは埋め立て材や路盤材としてしか利用されず、付加価値が非常に低いとのことです。また、技術標準の未整備も課題です。再生材に関する約8つの標準は存在するものの、建設廃棄物から再生された砂、浚渫汚泥からの埋め立て材、再生骨材を使用したアスファルトコンクリートなど、重要な標準がまだ不足しています。
投資意欲を阻む手続きの複雑さと市場の課題
建設廃棄物処理におけるもう一つの課題は、環境関連の手続きだけでなく、土地利用計画にもあります。現在、ハノイを含む多くの地方自治体では、建設廃棄物に関する独自の土地利用計画がなく、生活廃棄物や産業廃棄物の計画に統合されているか、河川堤防外の収集・処理場所の計画にとどまっています。このため、企業がプロジェクトを実施することが困難になっています。
さらに、1日あたり500トン以上の固形廃棄物を処理する施設では、環境影響評価の実施、報告書の承認、環境許可証の取得、自動監視システムの設置などが義務付けられており、これも企業にとって大きな負担となっています。一部の企業は、投資方針の承認に2〜3年かかり、その後も土地、建設、環境に関する手続きで数年間待たされると語っています。
再生品の市場も限定的です。再生材は天然素材に比べて20〜50%安価であるにもかかわらず、消費が伸び悩んでいます。ファップバン-カウジェー近くの処理場を運営するトアンカウ生産サービス株式会社のプロジェクト責任者グエン・ハイ・ソン氏によると、同社の処理ラインではコンクリートを粉砕して無焼成レンガや再生コンクリートを製造できるものの、投入されるコンクリートの品質が低く、製造コストが高いため、販売が難しい状況です。
多くの建設業者も再生品の利用に躊躇しており、特に高い品質が求められる製品ではその傾向が顕著です。このため、再生品の多くは価値の低い埋め立て材として使われがちです。多くの投資家や請負業者は、再生材の耐久性に関する実績が少ないため、依然として天然素材を優先する傾向があります。
不法投棄の横行と環境への影響
処理施設の不足と数々の障壁は、不法投棄の横行という深刻な問題を引き起こしています。2026年初頭には、旧ホアイドゥック県アンカインの一部空き地で、多数の建設廃棄物の不法集積場が出現しました。レンガの破片、砕かれたコンクリート、土砂、汚泥などが大量に投棄され、道路にあふれ、粉塵をまき散らし、住民の通行や生活に影響を与えています。
住民は、トラックが継続的に廃棄物を投棄するのを阻止するため、自ら禁止看板を設置し、警告バナーを掲げ、自治体と協力して出入り口を封鎖するなどの対策を講じています。同様に、紅河の河川敷でも数トン規模の建設廃棄物の不法投棄が確認されています。自治体は長年対策を講じてきましたが、不法投棄が夜間や監視の目が届かない時間帯に行われることが多いため、根絶には至っていません。
グエン・バン・ホアン氏によると、建設廃棄物には土砂、石、コンクリート、破損したレンガ、汚泥などが含まれており、無作為に投棄されると粉塵をまき散らし、交通を妨げ、住民の生活に悪影響を及ぼします。さらに深刻なのは、多くの場所で池や湖、運河に投棄され、水流を妨げ、雨季の洪水リスクを高めていることです。ホアン氏は「不法投棄は景観を損なうだけでなく、都市インフラに大きな圧力をかける」と述べています。
ハノイ市人民委員会は、建設廃棄物が適切な場所に投棄されず、道路や歩道、公共の土地、空き地、農地などに不法投棄されている現状は、管理システムの多くの不備によるものであると認めています。建設活動における環境保護法規の普及が不十分であり、多くの建設業者や運搬業者が廃棄物処理の責任を遵守していないことが指摘されています。
加えて、収集・運搬に関する規定や、違反行為の検査・処理における各部門間の責任分担が不明確であるため、管理が困難になっています。そして何よりも、廃棄物を受け入れるインフラが需要に応えられていないことが問題です。中継施設や処理場の数が不足しているため、多くの運搬業者が運搬費や処理費を削減するために不法投棄を選択している状況です。
急速な経済成長と都市化が進むハノイでは、建設ラッシュが続く一方で、廃棄物処理インフラの整備が追いつかないという構造的な問題が浮き彫りになっています。JICAの報告書にもあるように、ベトナムでは都市開発に伴う環境汚染が顕著であり、特に産業廃棄物や都市廃棄物の管理は長年の課題です。法整備の遅れや複雑な許認可プロセスが企業の投資意欲を削ぎ、結果として環境負荷を高めるという負の連鎖が起きています。
この建設廃棄物問題は、ハノイ在住の日本人にとっても無関係ではありません。不法投棄による粉塵は空気の質を悪化させ、景観を損ねるだけでなく、交通渋滞を引き起こす原因にもなり得ます。また、水路への投棄は雨季の洪水リスクを高める可能性もあります。JICAがベトナムの環境事業に携わっているように、持続可能な都市開発のためには、政府、企業、住民が一体となって、廃棄物管理システム全体の改善に取り組むことが不可欠と言えるでしょう。


