ベトナムの主要産地ハイフォンや西原高原で、早期収穫ライチの価格が記録的な高値となっています。気候変動による不作で供給が大幅に減少したことが背景にあり、ホーチミンでは小売価格が1キロ20万ドン(約1,200円)を超えることも。VnExpressが報じたところによると、この「豊作貧乏」ならぬ「高値不作」の傾向が全国的に見られます。
ハイフォン産ライチ、価格20%上昇も収穫量3割減
ハイフォン市タンハー地区でライチを30本栽培するマン氏の農園では、先日1トンのライチを1キロあたり95,000ドン(約570円)で販売しました。これは前年同期比で約20%の価格上昇ですが、総生産量は約30%減少したと述べています。同じくハイフォン市アイクオック区のヴァンさんも、ライチ価格は4月中旬より落ち着いたものの、依然として数年ぶりの高水準だと指摘。彼女の農園では1トン以上を収穫しましたが、前年の約半分にとどまっています。ヴァンさんによると、収穫初期の供給が限られているため、仲買人や常連客が早期に購入を予約することが多く、販売は比較的安定しているとのことです。
西原高原でも「高値不作」の傾向
ベトナム中部に広がる西原高原(タイグエン)地域でも、「高値不作」の傾向が顕著です。ダクラク省では、早期収穫ライチが1キロあたり60,000~80,000ドン(約360~480円)で買い取られており、これまでの40,000~50,000ドン(約240~300円)と比較して大幅な上昇を見せています。地元農家の一人は、一時的に1キロあたり80,000ドンに達したこともあり、仲買人が早期に購入予約を入れることで収益が改善されたと話しています。
ホーチミン市でのライチ小売価格は最高21万ドン超
農園での買い取り価格の上昇は、小売価格にも影響を与えています。ホーチミン市では、ダクラク産ライチが1キロあたり140,000~150,000ドン(約840~900円)で、タンハー産ウートゥンライチが150,000~180,000ドン(約900~1,080円)で販売されています。航空便で輸送された高級ライチの場合、一部店舗では1キロあたり195,000~210,000ドン(約1,170~1,260円)という価格で販売されていると報じられています。
気候変動が供給量に深刻な影響
ホーチミン市トゥーヤウモット区にあるフルーツ店の代表者は、今年のライチの収穫時期が遅れ、気候変動の影響で結実率が低く、生産量が30~50%減少したと説明しています。一度に入荷するライチの量は以前の半分にあたる50~60キロにとどまっていますが、品質の高さから急速に消費されているとのことです。ハイフォン市作物栽培・植物保護局によると、市内のライチ栽培面積は約9,350ヘクタールで、そのうち早期収穫種は約3,300ヘクタール(35%)を占め、タンハー、ニンザン、アントゥオン、クエットタンなどの地域に集中しています。早期収穫のピークは5月上旬から中旬と予想されています。
異常気象と農業対策
同局は、冬が暖かく、長期にわたる厳しい寒波が不足した不順な天候が、花の分化プロセスに影響を与えたと指摘しています。一部の地域では、花の咲き方が不均一であったり、葉が混じったりする状況が見られました。さらに、資材費の増加や一部農園での管理不足が、病害虫のリスクを高め、生産性と品質に影響を与えています。このような状況に対し、地方農業省は農家に対し、適切な湿度管理、バランスの取れた施肥、剪定、病害虫対策といった栽培管理の強化を求めています。同時に、トレーサビリティ要件を満たし、輸出に対応するための安全な生産プロセスの遵守も指導しています。専門機関は、栽培地域のコード維持、病害予測の強化、販売チャネルの拡大、そして企業と農家の早期連携を奨励し、販売の安定化を図っています。
今回のライチ不作と価格高騰の背景には、気候変動による異常気象が深く関わっています。農林水産省やADBの報告書が示すように、開発途上国における農業生産は気候変動の影響を強く受けやすく、ベトナムも例外ではありません。冬の温暖化が花の分化を阻害し、結実率の低下を招いたことは、食料安全保障の観点からも大きな課題です。生産量の減少にもかかわらず価格が高騰しているのは、品質の高さと国内外からの根強い需要があるためで、市場の構造的な脆弱性と強靭性の両面を浮き彫りにしています。
このニュースは、ベトナムに滞在する日本人や旅行者にとっても身近な影響をもたらします。ベトナムの豊かなフルーツは生活の楽しみの一つですが、ライチのような人気フルーツの価格が高騰すれば、食費に影響が出る可能性があります。特に、高級ホテルやレストランで提供されるフルーツは、さらに高値で提供されることが予想されます。一方で、高値であっても品質が良いものは消費が早いという現状は、消費者の「良いものには対価を払う」という意識と、ベトナム農業が品質向上に力を入れている証とも言えるでしょう。今後の気候変動への適応策と、持続可能な農業の確立が、ベトナムの食文化を守る上で非常に重要な課題となります。


