ベトナム南部ドンナイ省ビエンホア市の中心部に、急速な都市化と工業化が進む中で「緑の肺」と呼ばれる210ヘクタールの広大な保護林が存在しています。この森林は30年以上前に植えられた貴重な樹木が豊かな生態系を育み、地域住民の憩いの場となっているとVnExpressが報じました。
工業都市に息づく緑のオアシス
ベトナムの工業地帯として知られるドンナイ省ビエンホア市。その中心部、トランダイ、ロンビン、ホーナイの3区にまたがる形で、広さ210ヘクタールの広大な保護林が広がっています。急速な都市化と無数の工業団地の出現により、この地域は大きく変貌を遂げましたが、この森林はまるで都市の「緑のオアシス」として、その役割を果たし続けています。
30年以上の歴史と貴重な樹木
このビエンホア保護林は、30年以上前にビエンホア市人民委員会によって計画・植林されました。サオ、リム、ダウ、バンランといった多くの貴重な木材が植えられ、都市景観の形成に貢献してきました。今日、上空から見下ろすと、都市の喧騒の中に鮮やかな緑が広がる光景は、まさに圧巻です。
ドンナイ市農業サービスセンター森林局長のグエン・コン・ドゥック氏は、「真夏の暑い時期でも、ビエンホアの森の中を歩くと非常に涼しく快適です」と語ります。中には2人がかりでも抱えきれないほどの太さを持つ巨木も存在し、その歴史の深さを物語っています。
多様な生態系と歴史的価値
数十年にわたる自然な成長を経て、この森林は多層的な生態系を形成し、鳥類、リス、ハクビシン、ヘビ、野鶏などの野生生物の生息地となっています。また、森の奥には61番丘の頂上に「特攻部隊113戦没者慰霊碑」がひっそりと佇んでいます。この部隊は、アメリカとの戦争においてロンビン総合倉庫やビエンホア空港への攻撃、ゲン橋の防衛など、数々の戦功を挙げた「人民武装英雄部隊」として知られています。
ホーナイ区に住む17歳のドゥックさんは、「森の近くに住んでいるので、週末にはいつも友達と遊びに来て涼んでいます」と話し、地域住民にとって身近な憩いの場となっています。
厳重な管理と未来の展望
現在、保護林の大部分は厳重なフェンスで囲まれ、外部からの侵入を防いでいます。森林警備隊は、森林火災の防止、違法伐採、動物の密猟を阻止するため、森への入り口に標識やバリケードを設置し、厳格な管理体制を敷いています。管理部門は、この保護林を「特別用途林」に指定するための書類作成を進めており、その地位をさらに強化しようとしています。
一方で、トランダイ区では、緑豊かな森林の一方で、密集した住宅地が広がっています。管理部門によると、現在300世帯以上が森林内に居住しており、省はこれらの住民を森林から移転させ、エコ観光プロジェクトを推進する計画を進めているとのことです。
このニュースは、ベトナムが直面する経済発展と環境保護の間の複雑なバランスを浮き彫りにしています。急速な工業化と都市化が進む中で、ビエンホアのような都市部において210ヘクタールもの広大な緑地を維持し、さらにエコ観光の対象としようとする動きは、持続可能な発展への意識の高まりを示唆しています。これは、かつて「都市化は発展を意味する」という一辺倒な考え方から、環境との共存を模索する段階へと社会が転換しつつある証拠と言えるでしょう。
在住日本人にとって、このような都市の「緑の肺」の存在は、生活の質の向上に直結します。特にベトナムの暑い気候の中、気軽に自然に触れられる場所があることは、ストレス軽減やリフレッシュに欠かせません。将来的にはエコ観光地として整備される計画があるため、新たな週末のレジャースポットとして、また子供たちの自然学習の場としても大きな期待が寄せられます。ただし、現状では立ち入りが制限されている区域も多いため、今後の開発状況に注目が必要です。


