タイのチャンタブリー県を中心とした東部地域でドリアンの生産量が大幅に増加し、市場の供給過剰が懸念されています。これに対し、タイ商業省は国内消費拡大、輸出促進、加工品開発の3本柱で市場戦略を強化、特にTikTokとの連携によるライブコマース推進に注力しているとPrachachatが報じました。
チャンタブリー県でドリアン生産過剰に対応
タイのスパジー・スタムパン副首相兼商業大臣は、主要産地であるチャンタブリー県を訪問し、2026年のドリアン生産状況を視察しました。今年は全国のドリアン生産量が約207万トンに達し、前年比33%増と大幅な増加が見込まれています。特に東部地域が約99.8万トンと、全国の約48%を占める見通しです。この生産過剰に対応するため、大臣は「国内消費」「輸出」「加工」の3つの戦略を推進する方針を示しました。
商業省は、ドリアンの品質管理を徹底し、未熟ドリアンが市場に出回る問題の解決にも力を入れています。タイ政府は以前からアグリテック・デバイスの配布や農家向けの研修、研究開発への資金提供を通じて、農業部門の近代化と競争力強化を図っており、今回のドリアン対策もその一環と言えます。
国内消費拡大と輸出促進で市場安定化
商業省は、増加するドリアン生産量に対応するため、国内市場での消費を約45万トン、輸出量を100万トン以上に拡大する目標を設定しました。国内消費については、大手小売チェーン(モダン・トレード)やオンラインチャネルを通じた販売を強化し、郵便局の配送サービスも活用します。また、輸出に関しては、中国市場を最重要視し、国際貿易振興局の「チーム最前線」を中国に派遣して輸出手続きの円滑化を図っています。昨年、タイ産ドリアンの輸出収入は1,400億バーツ(約7,000億円)を超えており、今年はさらなる増加を目指しています。
TikTokと連携しライブコマースを推進
この機会に、商業省はTikTok Technologies Ltd.との間で、タイ産果物の販売促進に関する協力覚書(MOU)を締結しました。この連携により、TikTok Shopやライブコマース機能を活用し、若年層やタイ在住の外国人観光客を含む幅広い消費者層にドリアンをアピールします。スパジー大臣は、デジタルコンテンツやインフルエンサーの活用を通じて、農家の収入向上と消費基盤の拡大に繋がることを期待しています。タイ政府はデジタルインフラの強化とデジタル経済の推進を国家戦略としており、今回のTikTok連携はその具体例と言えるでしょう。
加工品開発で付加価値向上と品質管理を徹底
供給過剰問題への重要な解決策として、ドリアンの加工品開発が挙げられています。特に冷凍ドリアンやその他の高付加価値製品の開発を促進し、ドリアンの賞味期限を延ばし、年間を通じて安定した収入を確保することを目指します。また、市場での価格安定と国際的なブランドイメージ維持のため、品質管理の徹底が不可欠とされています。未熟なドリアンが出回る問題は、これまでタイ産ドリアンの評価に影響を与えてきたため、熟度(デンプン含有率)が32%以上であることなどの標準を厳守し、高品質なドリアンのみを市場に供給するよう厳しく管理されます。
「Thailand: The Land of Tropical Fruits」ブランド戦略
商業省は、「Thailand: The Land of Tropical Fruits(タイ:南国フルーツの国)」というコンセプトを掲げ、オンラインチャネルやデジタルコンテンツを通じて、高品質なタイ産ドリアンのブランドイメージを世界に発信しています。TikTokタイランドもこの取り組みに賛同し、農産品の売上拡大に貢献しています。同社は、クーポンや送料補助を含む合計650万バーツ(約3,250万円)のキャンペーンを展開し、農家が販売を開始してから規模を拡大するまでの3S(Start-Skill-Scale)戦略で支援しています。これにより、タイ産ドリアンの認知度を広げ、持続可能な収入源を確保することを目指しています。
タイの農業部門が抱える伝統的な課題(生産過剰、価格変動)に対し、政府がデジタル化や国際市場開拓といった現代的なアプローチを融合させているのが今回のドリアン対策から見て取れます。特にTikTokのような新興プラットフォームの活用は、若年層農家や中小企業が国内外の市場に参入する機会を広げ、経済のデジタルトランスフォーメーションを加速させる可能性を秘めています。
この動きは、タイ在住日本人にとってもドリアンの購入機会が増え、より手頃な価格で高品質なドリアンを楽しめる可能性を示唆します。また、日本の食品関連企業にとっては、タイの加工技術やデジタルマーケティングの動向を注視し、新たなビジネスチャンスを探る良い機会となるでしょう。一方で、未熟ドリアンの品質問題が改善されれば、安心して購入できる環境が整い、消費者の信頼回復にも繋がると期待されます。


