タイ全土で国家福祉カード(バット・サワディカーン・ヘン・ラット)の再登録受付が本日より開始されました。既存のカード保持者も新たな資格基準に基づいて再登録が必要で、真の低所得者層への支援強化が図られます。Prachachatの報道によると、登録期間は2026年6月4日から21日までとなっています。
タイの国家福祉カード、再登録で支援対象を最適化
タイ財務省は、国家福祉カードの新たな登録受付を2026年6月4日から21日まで実施しています。これは2025年3月時点のデータに基づくと、既存のカード保持者を含むすべての対象者が、更新された資格基準に沿って再登録を行う必要があることを意味します。旧来の2022年のデータベースは最新の情報に更新されておらず、今回の見直しは、より適切な低所得者層に支援を届けることを目的としています。
再登録の目的と新たな資格基準
今回の再登録は、タイの社会保障制度の透明性と効率性を高めるための重要なステップです。資格基準が変更・追加され、真に経済的支援を必要とする人々が恩恵を受けられるよう調整されました。タイ政府は、国民IDデータベースと連携した社会保障制度のデジタル化を進めており、これにより、福祉サービスの利用者の負担能力を考慮しつつ、低所得層への所得移転を最適化する狙いがあります。
登録方法とスケジュール
国家福祉カードの再登録は、以下の5つの方法で可能です。これにより、デジタルリソースへのアクセスが困難な地域も含め、幅広い層が手続きできるよう配慮されています。
- アプリケーション「パオタン」
- アプリケーション「ターンラット」
- プロジェクトウェブサイト:https://welfare.mof.go.th
- クルンタイ銀行のATM
- 5つの登録受付機関:クルンタイ銀行、タイ農業・農業協同組合銀行、政府貯蓄銀行、住宅金融銀行、タイイスラム銀行
登録結果は2026年7月17日に上記5つのチャネルで発表されます。資格要件を満たし、これまでカードを所有していなかった新規申請者は、発表日(7月17日)からパオタンアプリまたは5つの登録受付機関で本人確認を行うことができます。そして、2026年8月1日からは福祉サービスの利用が可能となります。
厳しい新基準:所得・資産制限の詳細
新しい国家福祉カードの資格基準は、これまでよりも厳格化されています。主な変更点は以下の通りです。
- タイ国籍を持ち、18歳以上であること。
- 僧侶、受刑者、公務員、学生、年収10万バーツ(約50万円)以上の政府機関職員、株式保有者、債券保有者、年間保険料1万2,000バーツ(約6万円)以上の生命保険契約者、扶養家族として所得税控除を受けている者などは対象外。
- 年間所得が10万バーツ(約50万円)を超えないこと。
- クレジットカードを所有していないこと。
- あらゆる種類のローン総額が10万バーツ(約50万円)を超えないこと。
- 預金や宝くじの合計が年間10万バーツ(約50万円)を超えないこと。
- 不動産を所有していない、または以下の条件を満たすこと:
- コンドミニアムの総面積が35平方メートル以下。
- 一戸建て、タウンハウス、長屋、店舗兼住宅の総面積が25タランワー(約100平方メートル)以下。
- 農家の場合、土地と住居の合計が10ライ(約1.6ヘクタール)以下。
- 非農家の場合、土地と住居の合計が1ライ(約0.16ヘクタール)以下。
- 自動車やその他の車両を所有していないこと。ただし、排気量300cc以下のオートバイ、三輪車、小型四輪タクシー、農業用車両は各1台まで許容されます。
これらの基準は、財源の効率的な活用と、真に支援を必要とする層への重点的な配分を目指すタイ政府の姿勢を示しています。特に、所得や資産に関する制限が強化されており、過去の制度で「貧しくないのに受給している」という批判に対応する形です。
デジタル化と支援の拡大
今回の再登録プロセスでは、アプリケーション「パオタン」や「ターンラット」といったデジタルチャネルが積極的に活用されています。これは、タイが経済のデジタル化を進める中で、行政サービスもデジタルへと移行している潮流を反映しています。しかし、デジタルリソースへのアクセスが難しい低所得層も存在するため、クルンタイ銀行のATMや複数の銀行窓口での登録も引き続き提供されており、幅広い国民が支援を受けられるような配慮がなされています。
内務省、バンコク都庁、パタヤ市は、コミュニティ開発局の基礎的ニーズデータベース(Jor Por Tor)や社会開発・人間安全保障省の電子家族手帳システムに基づき、登録漏れの低所得者を特定し、直接現地での登録支援を実施する予定です。これにより、本当に支援が必要な人々が制度から漏れることがないよう、きめ細やかな対応が図られます。
今回のタイ国家福祉カードの再登録と資格基準の厳格化は、タイ政府が社会保障制度の財源をより効率的に配分し、真に困窮している低所得層へ支援を集中させようとする構造的な動きと捉えられます。過去の制度では不適切な受給者がいた可能性が指摘されており、経済発展が進む中で「中所得国の罠」を回避しつつ、限られたリソースを最適化する意図が見て取れます。これは、タイが抱える所得格差問題への政府の具体的な取り組みの一環と言えるでしょう。
この動きは、在住日本人や日系企業には直接的な影響は少ないものの、タイの社会経済状況を理解する上で重要です。政府が国民の所得格差是正に注力する姿勢は、将来的な税制や労働政策にも影響を与える可能性があり、タイ市場の動向を把握する上で注目すべき点となります。また、デジタルチャネルを通じた登録促進は、タイのデジタル化推進の一環とも言え、行政サービスの効率化と利便性向上への取り組みが伺えます。


