中国発の格安アイスクリーム・ドリンクチェーン「Mixue(ミーシュエ)」が、人気アートトイブランド「Pop Mart(ポップマート)」の成功戦略を取り入れ、自社マスコットキャラクター商品の販売を強化します。この動きは、急成長するアジア市場での新たな収益源を確立し、激化する競争環境で優位に立つことを目指すもので、タイの経済メディアであるプラチャーチャート・ネットが報じています。
タイでも人気「Mixue」が新たな成長曲線「ニューSカーブ」へ
2022年頃からタイでも手頃な価格帯(ソフトクリーム15バーツ/約75円、レモネード20バーツ/約100円)で人気を博している中国のフランチャイズアイスクリーム店「Mixue」が、売上成長を加速させるための新たな戦略を展開しています。
この戦略は、同じく中国発でキャラクター「Labubu(ラブブー)」のアートトイやブラインドボックス販売で世界的な成功を収めた「Pop Mart」のビジネスモデルを参考にしています。特にタイでは、Pop Martの1号店が開店日に2億バーツ(約10億円)を超える売上を記録するなど、若者を中心にキャラクターコンテンツへの熱狂的な支持が確認されており、Mixueもこの流れに乗じて「ニューSカーブ」と呼ばれる新たな成長軌道の構築を目指しています。
マスコット「スノーキング」を収益の柱に据える
Mixueは、2018年に登場し2023年にはアニメシリーズも放送された自社マスコットキャラクター「Snow King(スノーキング)」を、ブランドの新たな収益源として前面に押し出しています。2025年3月の香港証券取引所上場時には、調達資金の約12%にあたる3億9500万香港ドル(約75億円)をIP(知的財産)関連事業に投資する計画を発表しました。
この計画に基づき、2025年からは中国国内の大型店舗(広州、河南省鄭州、重慶など)に「スノーキング」専用の商品販売エリアを設置。例えば、2025年12月に広州の繁華街にオープンした2階建て店舗では、1階で飲食を、2階でスノーキング関連商品を販売しています。Mixueは、スノーキングがブランドイメージを構築し、消費者との感情的な絆を深める上で不可欠な存在だと説明しています。
高単価商品で顧客単価を大幅に向上
「スノーキング」は、顧客とのエンゲージメント強化だけでなく、Mixueの収益構造にも大きな変化をもたらしています。特に若年層に人気の「スノーキング」アートトイのブラインドボックスや収集品は、1個あたり20人民元(約400円)以上で販売されており、ソフトクリームやレモネードといった主力メニュー(2~8人民元/約40〜160円)の数倍の価格設定となっています。これにより、顧客一人当たりの単価を大幅に引き上げることが可能になります。
また、このキャラクターを活用したマーケティング戦略は、現在、競合他社がまだ本格的に参入していない領域であるため、Mixueにとって独自の優位性を確立するチャンスでもあります。
激化する市場競争と今後の展望
Mixueは、創業者の張紅超氏が1997年に事業を開始し、1999年に「Mixue」ブランドを立ち上げて以来、その手頃な価格設定から家族連れや学生層に支持され、中国国内に66万店以上あるドリンクスタンド市場でトップシェアを維持してきました。
しかし、その首位の座は安泰ではありません。2025年には国内外の店舗数が約30%増の59,800店に達した一方で、閉店店舗数も約60%増の2,500店に上るなど、競争の激しさが浮き彫りになっています。今後、「スノーキング」を活用したキャラクター戦略が、Mixueにどれほどの収益と競争優位性をもたらし、市場のリーダーシップを維持できるかどうかが注目されます。
中国発の「Mixue」がタイ市場でも成功を収め、さらにキャラクター戦略で成長を目指す動きは、タイの消費トレンドにおけるキャラクターコンテンツの浸透度を明確に示しています。「Pop Mart」のタイでの大成功は、単なる一過性のブームではなく、若年層を中心としたキャラクターグッズへの高い購買意欲が市場に存在することを示唆しています。Mixueのこの戦略は、F&B業界だけでなく、他の小売業やサービス業にとっても、キャラクターIPを活用した新たな顧客エンゲージメントや収益化の可能性を具体的に提示していると言えるでしょう。
一方で、Mixueが直面する閉店店舗数の増加という課題は、いくら魅力的なキャラクター戦略を打ち出しても、本業である低価格F&Bの品質維持やサービス向上、そして飽和しつつある市場での差別化が引き続き重要であることを浮き彫りにしています。キャラクターグッズ販売はあくまで付加価値であり、コアビジネスの競争力強化が伴わなければ、一時的な売上増に終わるリスクもあるでしょう。タイ市場において、顧客の心をつかみ続けるためには、多角的なアプローチが不可欠です。


