タイ政府は、エルニーニョ現象による深刻な干ばつリスクに備え、バンコクを含む全国で2027年までの水資源管理強化を指示しました。農業・協同組合大臣は、水状況の監視からインフラ整備まで7つの重点対策を各機関に徹底するよう指示。この動きはKhaosodが報じており、持続可能な水資源の確保に向けた政府の強い姿勢を示しています。
エルニーニョ現象による干ばつリスクと過去の教訓
タイの農業・協同組合大臣スリヤ・ジュンルンルアンキット氏は、灌漑局(SWOC)での会議後、現在のエンソ(ENSO)現象が中立期にあるものの、2026年半ばから2027年初頭にかけてエルニーニョ現象が形成される可能性が高いと述べました。この予測は、少雨、雨季の中断、そしてその後の干ばつリスクを高めると警告されています。
タイでは、2011年の大規模な洪水など、過去に気候変動による極端な気象現象で甚大な被害を経験してきました。これらの経験から、水資源管理は国家の安全保障と国民生活に直結する重要な課題として認識されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告でも、気候変動が水インフラと管理慣行に影響を及ぼし、水文変化の不確実性が増大することが指摘されており、タイの今回の対策は、これらの国際的な知見と過去の教訓を踏まえたものと言えるでしょう。
水資源管理強化のための7つの重点対策
スリヤ大臣は、来るべき干ばつに備え、以下の7つの重点対策を指示しました。
- 1. 水状況の継続的な監視と予測:気象局、SSN、STNからのデータに基づき、エルニーニョの状況に応じたシナリオを作成し、月ごとの水管理計画を調整します。
- 2. 貯水量の確保と備蓄:貯水池の安全性を確保しつつ、雨季の終わりに最大限の水を貯水。生活用水と生態系維持のための水を確保します。
- 3. 水源開発と灌漑システムの効率化:水源開発プロジェクトを加速し、貯水容量の増加、遊水地や調整池(ケムリン)の開発、灌漑システムにおける配水効率の向上を図ります。
- 4. 洪水対策と排水機能の強化:水路の障害物除去、運河の浚渫、排水効率の向上を実施。機械やポンプ、人員を迅速に動員できるよう準備します。
- 5. 公平かつ効率的な水配分:生活用水、生態系維持、農業、産業の順で優先順位をつけ、各地域の需要に応じた水を配分。農家との作付け計画を策定し、水消費量の少ない作物の導入を推奨します。
- 6. 気候変動への適応と長期計画:水グリッドの接続や流域間の水融通(ウォーターグリッド)を重視し、気候変動の変動に対応する長期的な水資源安定計画を策定。極端な気象に耐えうる灌漑インフラの設計を進めます。
- 7. 国民との連携と情報共有:防災局、地方自治体、地域機関と連携し、水状況や災害警報を農家や国民に継続的に発信し、早期の準備を促します。
現在の水資源状況と今後の展望
2026年6月5日現在、全国の主要貯水池および中規模貯水池の総貯水量は合計430億9,300万立方メートルで、これは総容量の56%に相当します。特にチャオプラヤ川流域の主要4ダム(プミポンダム、シリキットダム、クウェーノイバムルンデンダム、パーサックチョンラシットダム)では、合計131億7,500万立方メートル(総容量の53%)が貯水されており、まだ約116億9,600万立方メートルの貯水余力があります。
現在の水資源状況は全体的に良好であり、計画通りに進んでいます。しかし、政府は将来のリスクを考慮し、国民の安全と持続可能な水資源確保のため、包括的かつ継続的な水管理計画を推進する姿勢を改めて強調しました。この取り組みは、タイの農業と経済の安定、そして国民の生活の質向上に不可欠です。
タイは世界有数の米輸出国であり、農業はGDPの大きな部分を占めています。そのため、水資源の安定供給は国家の経済安全保障に直結する極めて重要な課題です。過去の大規模な洪水や干ばつの経験から、気候変動による極端な気象現象への適応策は、もはや待ったなしの状況と言えるでしょう。今回の政府の指示は、単なる短期的な対策ではなく、2027年までを見据えた長期的な視点での包括的な戦略であり、その実行力が今後のタイの持続可能性を左右すると言っても過言ではありません。
在タイ日本人にとっても、水資源管理は無関係ではありません。水不足は農業生産に影響を与え、ひいては食料価格の上昇につながる可能性があります。また、水力発電への依存度が高い地域では、電力供給に影響が出ることも考えられます。さらに、地方への旅行を計画する際には、一部地域で水の使用制限などが発生する可能性も考慮に入れる必要があるかもしれません。政府が情報公開と国民との連携を重視しているため、今後の発表には注目していくべきでしょう。


