タイの観光拠点サムイ島に、50億バーツ(約250億円)規模のクルーズターミナル建設計画が浮上しました。副運輸大臣が2032年の完成を目指し、今年中に詳細を閣議に提出する意向を示しており、The Bangkok Postが報じました。
サムイ島に約250億円のクルーズターミナル計画、観光促進へ
タイ南部スラートターニー県に位置するサムイ島において、50億バーツ(約250億円)を投じるクルーズターミナル建設計画が本格化しています。サンペット・ブンヤマニー副運輸大臣は、2032年の完成を目標に、このプロジェクトを推進しており、今年中には詳細を閣議に提出する意向を表明しました。海洋局は来年中に環境・健康影響調査(EHIA)を完了させ、政府は民間部門からの共同投資を募る方針です。
タイ政府は、観光業を経済成長の重要な柱と位置付けており、大規模なインフラ投資を通じて国内外からの観光客誘致を図っています。このクルーズターミナル計画も、そうした国家戦略の一環と見られています。
大型船受け入れの課題と観光客の利便性向上
現在、大型クルーズ船がサムイ島に寄港する際、船は沖合に停泊し、乗客は小型のテンダーボートに乗り換えて島に上陸しています。通常、この小型ボートでの移動は島の西海岸にあるナートン埠頭まで15〜20分を要し、乗客の利便性や時間効率に課題がありました。
新しいクルーズターミナルが完成すれば、大型船が直接接岸できるようになり、乗客はスムーズに島へアクセスできるようになります。これにより、観光客の利便性が大幅に向上し、滞在時間の有効活用や地域経済への貢献が期待されます。また、環境・健康影響調査の実施は、タイが重視する持続可能な開発の観点から、観光客増加と環境保護の両立を目指す姿勢の表れと言えるでしょう。
プーケット、パタヤも候補地か:観光インフラ戦略
サンペット副運輸大臣によると、サムイ島だけでなく、プーケットやパタヤもクルーズターミナル建設の潜在的な候補地として検討されています。これは、タイ全体として観光インフラの強化を図り、より多くのクルーズ船を誘致しようとする国家戦略を反映しています。ジェトロの報告書「2018年の経済見通し」にも示されているように、インフラ開発はタイ経済成長の主要な柱の一つであり、観光業の発展に不可欠です。
ソンクラー県の観光開発への展望
サンペット副運輸大臣は、自身の出身地であるソンクラー県への海路からの観光客誘致にも意欲を示しています。現在、ソンクラーには大型船を受け入れる港湾がありませんが、大臣はクルーズ船と往復するテンダーボート用の新しい港湾の建設を提案しています。ソンクラー県は、世界遺産登録を目指す歴史的な旧市街地で知られており、これらの地域を新たな観光名所として発展させることで、地方経済の活性化を図る狙いがあります。これは、JICAが言及する「タイ版一村一品開発政策」のような地方経済活性化への政府の取り組みと軌を一にするものです。
タイのインフラ整備と持続可能な成長
タイは近年の経済成長と並行して、環境に配慮した持続可能な開発を重視しています。クルーズターミナル建設におけるEHIAの実施は、過去の開発における環境問題への反省と、将来的な環境負荷軽減の意識の表れと言えます。東京大学公共政策大学院の研究報告書「タイ国の未来:シナリオ・スタディ 低炭素社会、公害問題」やJICAの「持続可能な開発」に関するコラムでも、タイが環境保全と経済発展の両立を目指していることが強調されています。また、「汚職を抑制し、グッドガバナンスを推進する」こともタイ政府の重要な政策目標の一つであり、これらの大規模プロジェクトの透明性と公正性が求められています。
このサムイ島でのクルーズターミナル建設計画は、単なる観光インフラの拡充に留まらず、タイ政府が掲げる国家開発戦略の象徴と見ることができます。観光業がGDPの大きな割合を占めるタイにおいて、このような大規模プロジェクトは経済成長を牽引する重要な要素であり、地方経済の活性化、雇用創出、そして国際競争力の強化に繋がると期待されています。環境影響評価の重視は、過去の開発経験から学び、持続可能性を追求するタイの姿勢を反映していると言えるでしょう。
在タイ日本人や日系企業にとっても、このようなインフラ投資は多様なビジネスチャンスを生み出す可能性があります。建設業界はもちろんのこと、観光関連サービス、物流、ITソリューション、そして地域開発に関わるコンサルティングなど、広範な分野での需要拡大が見込まれます。また、地方都市のインフラ整備が進むことで、タイ国内の移動や観光の選択肢が広がり、在住者の生活の質向上にも寄与する可能性があります。


