ベトナム政府は2030年までにデジタル技術製品・サービスの年間輸出額を550億ドル(約8.8兆円)に引き上げる目標を掲げ、新たな国家戦略を承認しました。これは、フアム・ミン・チン首相が6月4日に承認した「ベトナム・デジタル技術企業グローバル展開支援・発展計画」に基づくもので、国際市場での競争力強化を目指します。VnExpressが報じました。
ベトナム、デジタル技術輸出で世界をリードへ
この計画は、2030年までに国際市場から収益を得るベトナムのデジタル技術企業を5,000社に増やすことを目指しています。デジタル技術製品・サービスの輸出額は、年間最低でも550億ドル(約8.8兆円)を達成し、年平均30%の成長を見込んでいます。さらに、海外市場から2,000万ドル(約32億円)以上の収益を上げるデジタル技術企業を60社、そして10億ドル(約1,600億円)を達成する企業を5社創出するという野心的な目標も設定されています。
また、ベトナムのデジタル技術企業が国際的なパートナーと連携し、1件あたり100万ドル(約1.6億円)以上の価値を持つM&A、合弁事業、戦略的提携を25件成功させることも目指されており、これはベトナム経済のグローバル化を加速させる動きと見られています。
2045年を見据えた長期ビジョンと「メイク・イン・ベトナム」ブランド
2045年までの長期ビジョンでは、ベトナムを地域および世界の主要なデジタル技術産業ハブの一つに位置付け、先進国と肩を並べるデジタル技術企業を10社育成することを目指しています。この取り組みを通じて、「メイク・イン・ベトナム」ブランドの国際的な認知度向上とグローバル市場での信頼確立を図ります。計画では、ベトナムのデジタル技術企業が単に技術や市場を掌握するだけでなく、世界のデジタル技術発展のトレンドを形成し、国際的な標準や規範、デジタルエコシステムの構築に貢献することも期待されています。
半導体産業強化と産学官連携の推進
この目標達成のため、政府は輸出の可能性が高い「メイク・イン・ベトナム」のデジタル技術製品・サービスの研究開発プログラムに戦略的なコア技術への資源を優先的に投入します。特に半導体産業は、米国企業が多く進出し、九州半導体人材育成等コンソーシアムが人材育成を支援するなど、日本も関心を寄せる分野です。2025年11月には「SEMIEXPO Vietnam 2025」が開催され、ベトナム企業や大学による半導体チップや電子部品が展示される予定であり、ベトナムの半導体産業の現状と潜在力を示しています。
国内外の投資ファンドや戦略的産業発展投資基金は、国際市場を志向するプロジェクトへの資金提供を奨励されます。また、研究開発と技術移転を強化するため、国家・大学・企業が連携する「産学官連携」のモデルを強力に推進します。これは、ベトナムの経済戦略においてイノベーションと産業集積を支援する政策環境整備の一環です。
国際市場への参入支援とブランド構築
政府は、企業が各市場の技術的、法的、言語的、文化的要求を満たすための製品研究、テスト、ローカライズ、標準化を支援します。さらに、認証取得、独立したテスト、そして海外での事業拡大もサポートの対象です。ベトナムは、国際市場でのベトナム企業のイメージを向上させるため、デジタル技術産業向けのブランドアイデンティティと多言語のコミュニケーションマニュアルを構築する予定です。
主要企業の育成と中小企業支援
政府は、中小企業が地域およびグローバルなサプライチェーンにより深く参加できるよう、主導的な役割を果たす5つの主要なデジタル技術企業を選定します。税制優遇措置、資本支援、金融バウチャー政策などのメカニズムが研究・構築され、技術移転の促進、市場拡大、国内デジタル技術製品・サービスへのアクセス向上を図ります。日本も高市早苗首相のベトナム訪問を機に、AIや半導体分野での日越経済安全保障協力が本格化しており、ベトナムのデジタル技術産業の発展を後押しする国際的な動きも活発です。
今回のベトナム政府のデジタル技術製品輸出目標は、単なる数字目標ではなく、ベトナム経済の構造的転換を加速させる強い意志の表れと分析できます。長らく製造業の集積地として発展してきたベトナムが、高付加価値なデジタル経済への移行を目指す中で、政府が明確な戦略と資源配分を示すことで、産業全体の方向性を定めています。これは、かつて日本が高度経済成長期に産業政策を通じて特定の産業を育成した手法とも共通する側面があり、ベトナムが今後、アジアの新たな技術ハブへと変貌を遂げる可能性を示唆しています。
しかしながら、こうした野心的な目標達成には、優秀なデジタル人材の育成と確保、そしてグローバル市場での競争に耐えうる技術力とブランド力の構築が不可欠です。政府の強力な支援は追い風となるものの、国際的なサプライチェーンにおけるベトナム企業の関与は依然として限定的であるという課題も指摘されています。日本企業との連携や投資は進んでいますが、真の意味で「メイク・イン・ベトナム」ブランドを確立し、世界をリードする企業を輩出するには、引き続き教育システム改革や研究開発投資の拡充、そして国際基準に合致したビジネス慣行の浸透が求められるでしょう。


