ベトナムの主要製薬会社イメックスファームが、中国大手製薬グループ傘下に入ることが明らかになりました。リアンSGPホールディングがイメックスファームの株式の67.87%を取得し、支配権を確立した形です。この巨額買収は、ベトナムの医薬品市場における外資の存在感をさらに高めるものとVnExpressが報じています。
中国大手による巨額買収の詳細
最近の報告によると、リアンSGPホールディングは、ホーチミンに拠点を置くイメックスファームの株式1億450万株以上(IMP)を取得しました。これにより、リアンSGPホールディングはイメックスファームの定款資本の67.87%を保有し、重要な支配権を握ることになります。
以前、1月中旬には、イメックスファームはリアンSGPホールディングから約1億2,000万株(資本の約78%に相当)の公開買い付けを受け入れていました。当初の登録量と比較すると、リアンSGPホールディングが実際に購入した株式は約1,550万株少なくなっています。
買い付け価格は1株あたり57,400ドン(約344円)で、取引総額は推定で約6兆ドン(約360億円)に上ります。この価格は、買収発表日の市場終値と比較して、22.5%高い水準でした。買い付け価格に基づいて計算すると、イメックスファームの評価額は約8兆8,420億ドン(約530億円、3億3,800万ドル以上)とされています。
買収元リブゾン・ファーマシューティカル・グループとは
リアンSGPホールディングは、中国のリブゾン・ファーマシューティカル・グループの子会社です。このグループは1985年に中国で設立され、新薬、生物製剤、漢方薬、原材料、診断機器の研究開発、製造、販売を専門とする大手製薬企業です。その事業ネットワークは中国国内だけでなく、米国、欧州、日本、韓国、東南アジアなど30カ国以上に広がっています。
リブゾン・ファーマシューティカル・グループは、特に研究開発(R&D)能力が非常に高く評価されています。生産施設や製品は厳格な品質管理基準を満たしており、一部の注射薬は米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けています。これは、グローバルな医薬品市場における同社の競争力の高さを裏付けるものです。
イメックスファームの歴史と強み
イメックスファームは、約49年の歴史を持つベトナムの老舗製薬企業です。かつてはベトナム医薬品総公社(ビナファーム)傘下の国営企業でしたが、2000年代初頭から民営化が進められました。その後、ドラゴン・キャピタル、ビナキャピタル、SKグループといった大手投資家の注目を集め、国内製薬業界の「大物」へと成長しました。
現在、同社はサンドズ・グループAG、ファーマサイエンス・インク(カナダ)、サノフィSAなどの大手製薬会社の製造パートナーでもあります。イメックスファームは抗生物質の製造・流通において国内トップクラスの企業であり、2025年には国内市場シェアの10%を占めると予測されています。
買収がもたらすイメックスファームの未来
4月末に開催された年次総会で、イメックスファームのチャン・ティ・ダオCEOは、リブゾン・ファーマシューティカル・グループの強力なR&D能力を高く評価しました。同氏は、リブゾンがイメックスファームに投資するにあたり、生産・事業戦略の安定的な維持に加え、既存の生産ラインを活用したハイテク製品ポートフォリオの拡大を約束したと述べました。
ダオCEOは、「戦略的投資家としてリブゾンが参画することで、イメックスファームはR&D能力を向上させ、新しい治療分野における先進技術へのアクセスと移転が可能となり、競争力を高めることができる」と語っています。
ベトナム製薬業界の動向と外資参入
今回の取引における売却側の身元は公表されていませんが、昨年、リブゾン・ファーマシューティカル・グループは、SKインベストメント(SKグループ傘下)、ビンミン投資株式会社、KBA投資株式会社からイメックスファームの株式を買い取る計画を発表していました。
3月中旬のFPT証券(FPTS)の報告書によると、新たな株主グループは第2四半期からイメックスファームの経営を担うことになります。FPTSは、リブゾンがイメックスファームの大株主となることで、同グループの規模とブランド力を活用し、国内市場と輸出市場を拡大できると見ています。また、リブゾンがハイテク製品や原薬(API)の製造経験を持つことから、イメックスファームの生産コストを最適化し、高付加価値製品の割合を増やす支援が期待されています。
イメックスファームは今年、売上高3兆2,000億ドン(約1,920億円)を目標としており、前年比で約10%増を目指します。税引前利益は5,020億ドン(約301億円)に達すると予想されており、前年比12.5%の改善が見込まれています。この予測通りに進めば、イメックスファームは史上最高の利益水準を達成することになります。
今回のイメックスファーム買収は、ベトナムの医薬品市場における中国企業の存在感が急速に高まっていることを示唆しています。特に、抗生物質のような基幹医薬品のサプライチェーンが特定の外国企業に依存する可能性は、在住日本人を含む消費者にとって、製品ラインナップや価格、品質に将来的に影響を及ぼすかもしれません。また、ベトナム政府が外資誘致を進める中で、国内企業の競争力強化と同時に、外資による支配がどこまで許容されるかというバランスも注目されます。
ベトナム政府は、中国や韓国からの直接投資を積極的に誘致しており、特に製造業やハイテク分野において、既存のサプライチェーンを活用できる点を魅力としています。イメックスファームのような老舗企業が外資の傘下に入ることは、技術移転やR&D能力の向上というポジティブな側面がある一方で、ベトナム国内の経済的自立性や産業育成の観点からも、その動向は複雑な視点で捉える必要があります。今後、ベトナムの製薬業界が国際的な競争の中でどのように変貌していくか、重要な転換点となるでしょう。


