ベトナムのロンタイン国際空港で、計画されている3つの鉄道およびメトロ路線において、ルートや建設スペースの重複が生じる可能性が浮上しました。ベトナム空港公社(ACV)は、この問題に対し建設省および関係地方政府に対し、総合的な計画の見直しと関係機関間の調整を強く要請しています。VnExpressが報じたところによると、この状況は大規模インフラプロジェクトにおける政府機関間の連携不足を示唆しています。
複数の鉄道路線が集中するロンタイン空港
ベトナム政府が国家の重要プロジェクトと位置付けるロンタイン国際空港は、総面積約5,000ヘクタール、総投資額は約337兆ベトナムドン(約2兆220億円)に上る大規模なインフラ整備計画です。2026年末の供用開始を目指す第一期工事では、年間約2,500万人の旅客を処理する能力が期待されています。この巨大空港へのアクセスを確保するため、道路網に加え、3つの主要な鉄道路線が計画されています。
これらの路線は、南北高速鉄道、トゥーティエム~ロンタイン間の鉄道、そして既存のベンタイン~スオイティエン間メトロの延伸線です。全ての路線が空港の主要軸に沿った約40メートル幅の空き地を通過し、空港旅客ターミナルに接続する駅が建設される予定です。
計画調整の遅れと重複の懸念
ベトナム空港公社(ACV)は、南北高速鉄道およびトゥーティエム~ロンタイン間の鉄道については、関係者間でルートや駅の位置、接続方法について既に合意が形成されていると説明しています。しかし、ベンタイン~スオイティエン間メトロの延伸線に関しては、ACVはいまだに計画書類やルート案、空港敷地内での駅設置場所に関する情報を受け取っていません。
このような計画の不統一が原因で、ACVは各事業者の提案を十分に検討し、フィードバックする体制が整っていないと表明しています。特に、建設スペースの過密化、工事中の衝突、さらには運用開始後のリスクを避けるため、建設省に対し、権限を持つ機関が総合的な計画見直しを主導するよう強く求めています。これは、ベトナムにおける大規模インフラ投資において、地方政府間の調整不足や中央政府との認識の乖離が指摘されている現状を反映していると言えるでしょう。
地方政府間の連携強化が急務
ACVは、建設省、ホーチミン市、ドンナイ省に対し、各鉄道路線の事業者が連携し、統一されたルート、駅位置、接続方法を策定するよう指示することを提案しています。これにより、計画の統一性と建設および運用における同期性を確保し、効率的なインフラ整備を進める狙いがあります。
トゥーティエム~ロンタイン間の鉄道は、ホーチミン市とロンタイン空港を結ぶ最も重要な軸の一つとされており、来る7月には着工が予定されています。また、政府は最近、ベンタイン~スオイティエン間メトロをドンナイ省の新たな行政中心地およびロンタイン空港まで緊急メカニズムで延伸することに原則同意しており、手続きの迅速化を図っています。これは、ベトナム経済の成長を支える上で、都市化に伴う交通インフラの整備が喫緊の課題であることを示しています。
今回のロンタイン空港における鉄道・メトロ計画の重複リスクは、ベトナムで頻繁に見られる構造的な課題を浮き彫りにしています。JICAの分析ペーパーでも指摘されているように、ベトナムでは地方政府における開発計画と財政管理能力が未熟であり、さらに地方政府間の調整が不足しがちです。中央政府、地方政府、そして各事業主体が複雑に絡み合う大規模プロジェクトでは、計画初期段階からの綿密な連携が不可欠ですが、縦割り行政の弊害が顕在化しやすい状況と言えるでしょう。
この計画の遅れや調整不足は、ベトナムに投資を検討している日系企業や在住日本人にも間接的な影響を及ぼす可能性があります。空港アクセス鉄道の開通遅延は、物流コストの増加やビジネス渡航の利便性低下に繋がりかねません。また、インフラ投資の非効率性は、最終的に国家全体の経済成長速度にも影響を与え、長期的な視点での投資環境評価に影響を及ぼすことも考えられます。ベトナム政府がこの調整問題をいかに迅速に解決し、質の高いインフラ整備を実現するかが注目されます。


