ベトナムの大手金宝飾品企業SJCが、過去10年で最低水準の売上高を記録しながらも、驚異的に過去最高の税引き後利益を達成しました。監査済み財務報告によると、同社の売上は約14兆310億ドン(約841億円)と前年比で56%以上減少したものの、コストの大幅な削減が功を奏し、利益を押し上げました。VnExpressが報じたこの結果は、市場経済化が進むベトナムにおける国営企業の経営効率化の成功事例として注目されています。
ホーチミンSJC、売上低迷を乗り越え過去最高の利益を達成
サイゴン金宝飾品株式会社(SJC)の監査済み財務報告によれば、同社の年間売上高は約14兆310億ドン(約841億円)で、これは前会計年度比で56%以上減少し、過去10年間で最低水準となりました。しかし、売上原価が58%とさらに大幅に減少したことにより、売上総利益は6%改善し約7420億ドン(約44.5億円)に達しました。売上総利益率は5.29%を記録しています。
同社は金融収益も約40億ドン(約2400万円)と前年比11%増加させており、これは主に配当金や分配利益によるものです。一方で、販売費用は36%減、企業管理費用も7%減と、経常費用の削減傾向が見られました。しかし、金融費用は前年の約270億ドン(約1.6億円)の還付があったのに対し、今年は約13億ドン(約780万円)の費用を計上しました。これは、前年に投資損失引当金の減額があったことによるものです。SJCは前年度にMB銀行から約455億ドン(約2.7億円)の融資を受け、宝飾品、銀、貴石、美術品の製造・加工・販売に充てており、約10億ドン(約600万円)以上の利息を支払っています。
最終的に、SJCの税引き後利益は前年比9%増の約4255億ドン(約25.5億円)となり、1日平均で約10億ドン(約600万円)以上の利益を上げている計算になります。これは、同社が2014年に情報公開を開始して以来の記録的な利益水準であり、ホーチミン人民委員会(SJCの100%株主である国家代表機関)に提出された税引き後利益目標約890億ドン(約5.3億円)を大きく上回る結果となりました。
ベトナム金市場の変革とSJCの将来
SJCは、長年にわたり国家予算に多額の貢献をしてきたベトナム最大の金塊市場シェアを誇る企業です。同社は、株式化後に国家が保有する株式比率が50%以下、または非保有となる国営企業グループに属しています。かつてベトナムでは、国家銀行が金塊の生産を独占し、SJCが国家ブランドの金塊として選定されていました。しかし、2025年10月に発効する政令232号により、この国家による金塊生産独占メカニズムは廃止されます。
この制度変更により、今後は規定の条件を満たせば、どの企業でも金塊を生産できるようになります。また、国家銀行は、銀行や企業に対して金原材料の輸入許可を付与する方針です。これは、1986年のドイモイ(刷新)政策以来進められてきた市場経済化の一環であり、特に国有企業改革や金融セクター改革の深化を示すものです。ベトナム経済全体の競争力強化と国際統合を促進する上で、重要な一歩となります。
資産・負債状況とベトナム経済への影響
前会計年度末時点で、SJCの総資産は約2.5兆ドン(約150億円)と約14%増加しました。そのうち、約2兆ドン(約120億円)以上が商品を中心とする棚卸資産です。特徴的なのは、前会計年度には計上されていた棚卸資産の評価減引当金が、今回は計上されていない点です。負債総額は約5760億ドン(約34.5億円)と約16%増加しており、その大半は国への税金やその他支払い(約2780億ドン、約16.7億円)、科学技術開発基金への拠出金(約1250億ドン、約7.5億円)が占めています。
SJCの今回の業績は、ベトナム経済における金市場のダイナミズムと、国営企業が市場の変化に柔軟に対応し、効率性を追求する姿勢を示しています。特に、ドイモイ政策以降の経済自由化の進展が、企業の経営改善に大きく寄与していることが伺えます。今後、金塊生産の独占が廃止されることで、市場競争が激化し、ベトナムの金市場は新たな局面を迎えるでしょう。これは在住日本人や日系企業にとっても、ベトナムの消費動向や資産運用に関わる重要な情報となり得ます。
今回のSJCの記録的利益は、売上減少という逆境下でのコスト管理と効率化が成功した結果であり、ベトナムにおける国有企業改革の進展を象徴しています。1986年のドイモイ政策以降、ベトナムは計画経済から市場経済へと移行し、多くの国有企業が再編や民営化の圧力を受けてきました。SJCの事例は、こうした改革が着実に成果を生み出していることを示しており、市場競争力を高めるベトナム経済の構造的な変化を浮き彫りにしています。
また、金塊生産の国家独占廃止は、ベトナムの金融・経済政策の透明化と自由化への強いコミットメントを反映しています。これは、ベトナムの投資環境整備の一環として捉えることができ、将来的には金市場における競争促進と消費者利益の向上に繋がる可能性があります。在住日本人や日系企業にとっては、ベトナムの金融市場の開放が進む中で、新たなビジネスチャンスや資産運用の選択肢が生まれる可能性を示唆しており、今後の動向が注目されます。


