ベトナム政府は、地域手当の支給制度に関する通達の改定案を発表しました。国営機関職員や軍人などを対象に、地域手当の支給係数は7段階を維持しつつ、基本給の引き上げに伴い手当額も増額される見込みです。VnExpressが報じたところによると、この改定は特に遠隔地や離島で働く職員の生活を支援する目的があります。
ベトナム、地域手当制度の背景と対象者
内務省は現在、地域手当制度を規定する合同通達11号(2005年発行)の改正案について意見を募集しています。この通達は21年前に制定されたもので、当時の共通最低賃金は29万ドン(約1,740円)でした。新たな改定案では、「共通最低賃金」が「基本給」に置き換えられます。これは、ドイモイ政策による市場経済の導入後も、社会主義国家としての公務員制度改革が進められてきたベトナムの行政改革の一環と言えるでしょう。
この制度は、国家機関、事業体で働く幹部、公務員、職員、契約労働者(給与表に基づいて給与が決定されている者)、および軍、公安に属する将校、専門軍人、下士官、兵士、戦闘員、公務員、正規雇用の労働者に適用されます。特に、国境や離島などの地理的に困難な地域で任務に就く人々が主な対象となります。
最大253万ドン!地域手当の支給額詳細
地域手当の基本的な7段階の係数(0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1)は維持されます。最も高い係数1.0は、チュオンサ(スプラトリー)諸島やホアンサ(パラセル)諸島のような特別地域、およびベトナム海域で直接任務にあたる国防省所属部隊に適用されることが提案されています。これらの地域は、ベトナムにとって戦略的に重要な位置を占めており、そこで働く職員への待遇改善が急務とされています。
地域手当は毎月の給与や手当と同時に支給され、「地域手当の金額 = 地域手当係数 × 基本給」の計算式で算出されます。2024年7月1日からは、基本給が月額253万ドン(約15,180円)に引き上げられる予定であり、これに伴い地域手当の金額も以下のように変更されます。
- 係数0.1:25万3,000ドン(約1,518円)
- 係数0.2:50万6,000ドン(約3,036円)
- 係数0.3:75万9,000ドン(約4,554円)
- 係数0.4:101万2,000ドン(約6,072円)
- 係数0.5:126万5,000ドン(約7,590円)
- 係数0.7:177万1,000ドン(約10,626円)
- 係数1.0:253万0,000ドン(約15,180円)
地域手当の決定要因と個別調整
地域手当は、気候、標高、経済・政治の中心地からの地理的距離など、人々の物質的および精神的生活に影響を与える自然要因に基づいて決定されます。さらに、国境地域や離島といった特に困難な要素も考慮されます。この手当は主に行政区画に基づいて支給され、機関が所在するコミューン(Xã)の地域手当が適用され、地域が変更された場合にはそれに合わせて調整されます。
内務省は、既存の地域手当が適用されていた旧コミューンの再編によって新設されたコミューンには、新たな手当を追加せず、既存の手当を維持する方針を示しています。しかし、地方自治体や関係機関からの意見を受け、一部の地域の手当を調整する方針です。例えば、タイグエン(Thái Nguyên)省タンキー(Tân Kỳ)コミューンでは係数が0.4から0.5に引き上げられ、ダナン(Đà Nẵng)市ホアバン(Hòa Vang)コミューンには係数0.1が、カマウ(Cà Mau)省ダットムイ(Đất Mũi)コミューンには係数0.3が新たに追加されるなど、具体的な変更が盛り込まれています。
地方行政改革と今後の影響
この通達は2026年1月1日に発効する予定です。これは、2025年7月1日から2025年12月31日までの6ヶ月間の手当の据え置き期間に合わせるためです。ベトナムでは地方行政の効率化を目指し、県やコミューンレベルでの行政区画再編が進められており、これにより全国の省・市は34、コミューン・区・特別区は3,321となる見込みです。
政府の試算によると、2025年半ばに省やコミューンの合併、県レベルの廃止が行われた後、全国で約91,784人の省レベルの幹部・公務員・職員、および約199,000人のコミューンレベルの正規職員が2段階地方行政モデルで勤務することになります。このような大規模な行政改革の中で、地域手当の見直しは公務員の待遇改善とモチベーション維持に不可欠な要素と言えるでしょう。
今回のベトナムにおける地域手当の改定案は、1986年のドイモイ政策導入以降、継続的に進められてきた国家機構の再編・整備、および公務員制度改革の延長線上にあると分析できます。社会主義国家としての公平性を保ちつつ、市場経済への移行と経済発展に伴う物価変動に対応するため、特に困難な地域で働く公務員の生活水準を維持・向上させる目的が明確です。これは、中央集権的な統制と地方の実情への配慮という、ベトナム政府が常に直面するバランスの課題を反映していると言えるでしょう。
在住日本人や日系企業にとっては、この地域手当の改定が直接的に給与体系に影響を与えるものではありませんが、ベトナム社会全体の物価上昇や生活費の変化を示す一つの指標として捉えることができます。公務員や軍関係者の待遇改善は、ベトナム人従業員の給与期待値にも間接的に影響を与える可能性があり、今後の人材採用や人件費計画を考える上で、ベトナム政府のこうした社会政策の動向を理解しておくことは重要です。


