ベトナムはインドとの間で、サイバーセキュリティ分野における協力関係を大幅に拡大する意向を示しました。ト・ラム国家主席はニューデリー訪問中、インド国家安全保障顧問アジット・ドバルと会談し、デジタルインフラ保護やハイテク犯罪対策での連携強化を呼びかけたと、VnExpressが報じています。
ニューデリーでの会談とサイバー安全保障の強化
5月5日午後、インドの首都ニューデリーにて、ベトナムのト・ラム国家主席は、インド国家安全保障顧問アジット・ドバルと会談しました。両者は、二国間関係において安全保障協力がますます重要な役割を担っていることを評価し、安全保障機関、法執行機関、政策立案機関間の連携をさらに深める必要性を強調しました。
会談において、ト・ラム国家主席は、ベトナムとインドが戦略的情報共有を強化し、サイバーセキュリティ、デジタルインフラ保護、ハイテク犯罪対策における協力を拡大するよう提案。また、越境組織犯罪やオンライン詐欺といった非伝統的な安全保障上の課題への対応能力向上を呼びかけました。これは、インド太平洋地域における平和の維持と戦争の防止、抑止力強化にも繋がる重要な取り組みです。
テロ対策と越境犯罪への共同対処
両国は、テロ対策、越境犯罪、オンライン詐欺、および新たな脅威との闘いにおける連携の必要性を強調し、それぞれの国家安全保障と社会秩序の確保に貢献することで合意しました。インド国家安全保障顧問のアジット・ドバル氏は、世界の現状を語る上で「不安定性と不確実性」が主要なキーワードであると述べつつも、そのような環境下で状況を安定させる主要因は信頼と共通の発展への願望であると強調しました。
戦略的技術協力と人材育成
両国は、安全保障と発展の連携を促進し、人工知能(AI)、デジタルトランスフォーメーション、イノベーション、エネルギー、そして質の高い人材育成といった戦略的技術分野での協力を拡大することでも一致しました。これは、グローバルな技術競争が激化する中で、各国の戦略的自律性を高めるための重要な基盤と位置付けられています。特に、ベトナムのIT・テクノロジー分野の発展を加速させ、経済成長を支える上で不可欠な要素となります。
海洋安全保障と国際法遵守
ベトナムとインドは、海洋および航空における平和、安定、安全保障、安全、自由を維持し、国際法、特に1982年の国連海洋法条約(UNCLOS 1982)に基づき、平和的手段による紛争解決を行うことで合意しました。これは、インド太平洋地域における「法の支配」を実体化し、地域の安定と繁栄に不可欠な原則です。
地域・国際フォーラムでの連携強化
両国はまた、戦略的協議を継続的に強化し、地域および国際フォーラムで緊密に連携していくことでも一致しました。これにより、急速に変化し、多くのリスクを抱える地域安全保障環境において、安定した、包括的で、法に基づいた地域構造の形成に積極的に貢献していく方針です。ASEANを中心とした多国間協力の枠組みが重要視される中、ベトナムとインドの協力は地域の安全保障ネットワークを強化する一助となります。
ベトナム・インド関係の深化と経済連携
ト・ラム国家主席は、インドのナレンドラ・モディ首相の招待を受け、5月5日から7日までインドを国賓訪問中です。ベトナムとインドは1972年に外交関係を樹立し、2016年には包括的戦略的パートナーシップに格上げされました。両国間の貿易額は2025年に164.6億ドルに達し、2024年比で10.5%増加する見込みです。また、2026年3月現在、インドの投資家はベトナムで503件の有効なプロジェクトを有し、総登録資本は11.17億ドル(約1675億円)に上り、ベトナムへの投資国・地域の中で26位に位置しています。両国は、2030年までに双方向貿易額および投資額を300億ドルに増やすことで合意しており、経済協力の拡大が期待されています。
ベトナムがインドとのサイバーセキュリティ協力を強化する背景には、インド太平洋地域における多極化する安全保障環境と、中国への過度な依存を避ける戦略的な意図があると考えられます。ベトナムは伝統的に大国間のバランス外交を重視しており、米国、日本、韓国、そしてインドといった国々との関係を強化することで、特定の国からの圧力を分散し、自国の独立性と主権を確保しようとしているのです。特にサイバー空間における脅威は国家安全保障に直結するため、信頼できるパートナーとの連携は不可欠です。
この動きは、ベトナムに進出する日系企業や在住日本人にとっても間接的な影響をもたらす可能性があります。サイバーセキュリティ協力の強化は、ベトナムのデジタルインフラの安全性向上に繋がり、企業活動におけるデータ保護や取引の信頼性向上に寄与することが期待されます。一方で、新たなセキュリティ基準や規制が導入される可能性もあり、企業は常に最新のサイバーセキュリティ動向に注意を払い、適応していく必要があるでしょう。


