ベトナムの国有宝くじ会社が巨額を投じた不動産資産が、ホーチミン市などで効率的に活用されず空室となっていることが明らかになりました。ヴィンロン省監察局の報告によると、複数の国有宝くじ会社が所有する高層ビルや住宅が長期間にわたり放置され、資産の損失リスクが懸念されています。この状況は、ベトナム経済の成長を支える公共投資の効率性に対する疑問を投げかけており、VnExpressが報じました。
ベトナム国有宝くじ会社の不動産投資状況
ヴィンロン省監察局は、2019年初頭から2025年7月1日までの期間における、国有企業であるチャービン省、ベンチェー省、ヴィンロン省の各宝くじ会社における不動産管理・使用に関する浪費防止専門調査の結果を公表しました。この調査は、ベトナム政府が公的債務残高のGDP比65%という上限に近接しつつある中で、公共投資資金の効率的管理が喫緊の課題となっている背景で行われました。報告書は、これらの企業が所有する多数の価値ある資産が効果的に活用されていない現状を浮き彫りにしています。
ベンチェー省宝くじ会社の高層ビル、6フロアが空室
特にベンチェー省宝くじ会社では、ホーチミン市7区アウコー通り508番地にある10階建てのビルが注目されています。このビルは2003年に6,560両の金(当時の価格で487億ドン、現在のレートで約292億円相当)で購入された土地に、1,100億ドン(約6億6,000万円)以上を投じて建設され、2023年9月から使用が開始されました。しかし、承認された賃貸計画があるにもかかわらず、10階のうち6フロア(面積4,758平方メートル)が空室のまま放置されています。ホーチミン市は人口約780万人を抱えるベトナム最大の経済都市であり、不動産需要が高いにもかかわらず、このような状況は資産の非効率な活用を示しています。
また、同社が1995年に340両の金に相当する金額で購入したホーチミン市グエンティエウラ通り270番地の取引所は、手続き上の問題により現在も土地使用権証明書が発行されていません。これはベトナムにおける土地使用権の複雑さと、それに伴う資産管理の課題を浮き彫りにしています。
ヴィンロン省宝くじ会社とチャービン省宝くじ会社の事例
ヴィンロン省宝くじ会社も同様の問題を抱えています。管理する13施設のうち6施設がホーチミン市内にあり、特に2020年に416億ドン(約2億5,000万円)で購入されたアンラック区7B通りの隣接する4軒の家屋は、投資計画通りの目的で使用されず、空室のままです。さらには、個人的な目的で不法に使用されているケースも報告されており、国有資産の適切な管理がなされていない実態が露呈しています。
チャービン省宝くじ会社でも同様の状況が見られます。ホーチミン市ベンタン区ブイティースアン通りにある273平方メートルの家屋は、2024年末から空室となっており、老朽化のリスクに直面しています。
監察局の指摘と勧告:資産活用の改善を求める
監察局は、これらの企業における節約と浪費防止の取り組みが「不十分」であると結論付けました。多くの不動産が活用されず、資産損失の潜在的なリスクがあると指摘しています。ベトナムでは汚職防止法(2005年)など、腐敗防止のための法的枠組みが存在しますが、今回の事例はその実効性に課題があることを示唆しています。
監察局は、ヴィンロン省人民委員会委員長に対し、2019年から2025年までの期間における各宝くじ会社の幹部の責任を検証し、早期に不動産施設の再編・処理計画を承認して、資産を効果的に活用するよう勧告しました。これにより、国有企業改革の一環として、非効率な資産を市場原理に基づいて活用する動きが加速する可能性があります。
ベトナム宝くじ事業の現状と背景
宝くじ事業は、特にベトナム南部地域で大きな収益を上げている分野です。南部地域の21の宝くじ会社は、2025年に年間155兆5,000億ドン(約9兆3,300億円)以上の収益を達成し、国家予算に約52兆ドン(約3兆1,200億円)を納め、税引前利益は20兆ドン(約1兆2,000億円)以上(前年比11%増)に達すると予測されています。このような高い収益性を背景に、国有企業である宝くじ会社が不動産投資に積極的であることは理解できますが、今回の問題は、投資の効率性とガバナンスの欠如という課題を浮き彫りにしています。
今回のニュースは、ベトナム経済が力強い成長を続ける一方で、国有企業が抱える構造的な非効率性とガバナンスの課題を浮き彫りにしています。ベトナム政府は、公的債務残高の管理や公共投資の効率化を重要視しており、国有企業改革は経済再建計画の柱の一つです。しかし、宝くじ会社のような高収益部門でさえ、巨額の資産が適切に活用されず、損失リスクに晒されている現状は、改革の遅れや監督体制の不備を示唆していると言えるでしょう。
このような国有企業の非効率性は、ベトナムでビジネスを展開する日系企業にとっても無視できない要素です。公共事業やインフラ関連プロジェクトにおいて、国有企業との連携は避けられない場面が多く、その意思決定の遅延や資産管理の不透明さは、事業展開のリスクとなり得ます。また、不動産市場においても、国有資産の適切な活用がなされないことは、市場全体の透明性や健全な発展を阻害する要因ともなりかねません。ベトナム政府が今後どのように国有企業改革を推進し、資産の効率的な活用を実現していくか、その動向は日系企業の投資戦略にも影響を与えるでしょう。


