ベトナム政府は、ハノイとホーチミンを結ぶ主要鉄道線を含む全国18か所の道路・鉄道交差箇所を立体交差化する大規模プロジェクトを提案しました。総額約8兆3,000億ドン(約500億円)を投じ、交通安全の向上と渋滞緩和を目指す計画が、VnExpressの報道により明らかになりました。
主要鉄道の安全性向上へ大規模投資
ベトナムのプロジェクト2管理委員会は、世界銀行からの融資を活用し、道路と鉄道の立体交差化プロジェクトの事前実現可能性調査報告書を建設省に提出しました。この計画は、国内の主要幹線であるハノイ – ホーチミン線、イエンビエン – ラオカイ線、ハノイ – ドンダン線のうち、特に交通量の多い18か所の交差箇所を対象としています。
これらの地点はベトナム北部から南部にかけて9つの省・市にまたがり、すべて国道との交差地点です。ベトナムではホーチミンなどの都市圏で都市鉄道の整備が進む一方で、急速な都市化に伴う交通渋滞や交通事故が深刻な都市問題となっており、今回のプロジェクトはこれらの課題解決に向けた重要な一歩となります。
立体交差化で事故と渋滞を抑制
提案された計画では、既存の踏切を廃止し、高架橋や地下トンネルを建設することで、道路と鉄道の立体交差を実現します。これにより、鉄道の運行安全性が大幅に向上し、踏切の維持管理費用が削減されると期待されています。
また、列車が通過する際の道路交通の渋滞が緩和され、交通事故のリスクも低減される効果が見込まれます。ベトナムでは道路整備が着実に進む一方で、公共交通インフラの整備が遅れがちであり、交通渋滞や大気汚染、交通事故が依然として大きな問題となっています。
世界銀行融資と国内資金で約500億円を調達
この大規模プロジェクトの総投資額は、約8兆3,750億ドン(約502億5,000万円)と見積もられています。このうち、約4兆8,360億ドン(約290億円)は世界銀行からの融資で賄われ、建設工事、設備導入、監視コンサルティング、および予備費に充当される予定です。
残りの約3兆5,390億ドン(約212億円)は国内の対抗資金として、用地取得、プロジェクト管理、およびコンサルティング費用に充てられます。政府開発援助(ODA)資金の活用は、ベトナムのインフラ開発において重要な役割を果たしており、今回のプロジェクトもその一例となります。
2026年から2030年の実施を目指す
このプロジェクトは、2026年から2030年の期間に実施されることが提案されています。資金の手配は、融資協定が発効してから5年間で計画されており、着実な進行が期待されます。建設省はすでに、プロジェクト2管理委員会に対し、事前実現可能性調査報告書の作成を指示しており、その準備資金は2026年の予算計画に計上されています。
ベトナム政府は、この種のインフラ整備を都市開発と連携させることで、土地利用の効率化や交通システムの改善を図り、都市の持続可能な成長を目指しています。
ベトナムの鉄道網が抱える課題
ベトナムの国家鉄道網は、全長3,140km以上に及び、その経路には約5,000か所もの道路との交差箇所が存在します。そのうち、約3,000か所以上は無柵で開放された踏切であり、安全対策が不十分な状況です。さらに約700か所が自動警報システム付き、約600か所が有人踏切となっています。
これらの多数の交差箇所は、鉄道交通の安全にとって潜在的なリスク要因となっており、交通事故の頻発にも繋がっています。今回の立体交差化プロジェクトは、このような長年の課題を解決し、鉄道利用者の安全性だけでなく、道路利用者の安全性も高めることを目的としています。
ベトナムの急速な経済成長と都市化は、既存のインフラ、特に交通システムに大きな負荷をかけている構造を指摘できます。道路網の整備が進む一方で、鉄道インフラの近代化が追いついていない現状が、事故や渋滞という形で表面化しています。今回のプロジェクトは、単なる安全対策に留まらず、都市圏の持続可能な発展に向けたインフラ再構築の一環と捉えられます。
この大規模プロジェクトは、ベトナム在住者や日系企業にとって、長期的には交通の利便性向上や物流コストの削減に繋がる可能性を秘めています。特に、ハノイ~ホーチミン間の主要幹線における改善は、サプライチェーンの効率化や経済活動の活発化に寄与するでしょう。一方で、建設期間中の交通規制や一部地域の用地取得に伴う影響も考慮する必要があるでしょう。


